未知の敵、未知の武装
妹の墓碑を前に、立ち上がり、動き始めようとした時、信じられない事が起こった。
「――な、んだ?」
頭部に強烈な衝撃を感じ、跳ね飛ばされた頭を中心に宙で回転する。
「ヒイッヤッハアッ!! 見事、命中! クリティカルヒィィィットッ!!」
「お、おい! 大丈夫かクソチビ!?」
「――人間はやっぱ脆い! 脆すぎて眠くなる! 一撃で死んでんじゃ――」
唐突な衝撃に驚いたが、頭部に当たった何かも、外皮を貫く事は出来なかったようだ。叩きつけられた身体を素早く起こす。
「ああ、痛かったけど、問題ない」
「ハアァッ!? な・んで! なんで生きてるんだァァァッ!? し・かも! 血の一滴も流してねぇぇぇッ!?」
「心配させんなよ、クソチビ」
声の聞こえた方向を睨みつけ、その姿を探す。
「あいつだ!」
距離はおよそ二百メートル。墓地の前の廃墟の屋根から見た事もない武器を持った、何者かが悔しそうに顔を歪めて叫んでいた。
「青い肌……? 人に類似した外見、ダークエルフかッ!?」
どういう事だ? エルフたちは、争いに関与しない、中立的な勢力だと聞いた。それが何故?
「地面に何か転がってる」
摘まみ上げたそれは、小さな金属の球の先端が潰れた、奇妙な形をしていた。
「何だ……? これ? これが、頭に当たったのか?」
「おい、クソチビ。アイツ、消えたぞ!?」
「何ッ――」
「おせぇよ」
背後から――!? 一瞬でここまで動いたのか!?
「遠距離じゃあ威力不足だったか? だが、今度はゼロ距離だ、これなら助からねぇよなァッ!」
後ろから突き出された、左に持った筒状の何かの先端が、後頭部に突き付けられる。
「この状態で散弾フルヒットだ! 脳天、弾け飛ぶぜ!」
鼓膜を破りそうな爆発音と共に、頭部に先ほどとは比べ物にならない衝撃を受け、吹き飛び、前方にあった大木にぶつかる。
「妙だな。今の当たりで、死なねえ訳が……。だが、また出血が」
「クソ! 今度のは激痛だ! まだ、頭がくらくらする……!」
幹にもたれかかりながら、起き上がると、罵声が飛んでくる。
「な・んで、死なねえんだァァァッ!? 何食ってりゃ、そんなふざけた頭になる!? アアッ!? ドラゴンの頭部でも吹き飛ぶ威力だぞ!?」
何故かなんて知るかよ……。一発で死にはしないが、今のを何度も頭部に受けたら、不味いかもしれない!
「おい! また消えやがった!」
「もういい、こうなりゃ、死体になるまで頭に撃ち込んでやる」
また、すぐ隣に――!?
「死ね――」
反射的に幹の陰に回り込み、回避を試みる。
「バカがッ! こんな薄っぺらな木が、盾になると思ってんのか!?」
爆発音と共に、木が張り裂ける衝撃を感じたが、それは途中で止まった。
「――バカな!? 弾が途中で弾かれやがった!?」
鎧の防御力を、木に付与した! 一か八かの賭けだったが、上手く行ったみたいだ。次は――。
「――ッ!? 幹を両断しただとッ!?」
二本分の剣の威力の合わせ技だ!
すぐさま右足に鎧の質量を加算し、斬りはらった幹を蹴りつける。破裂音と共に、内側から弾けた木片が雨の様に飛び出した。
「当たんねぇよ。お前には、こっちの動きは捉えられねえ。三度目でも、まだ分からねえか!?」
また、後ろに一瞬で回り込まれ、こちらへ向けられた左の筒が、動く前に、自分の身体から切り離した鎧の概念を、今度は折りたたんだ金属の塊として、その重さを筒の先端に付与する。
「――ッ!? 銃口が、突然おもく!?」
「支えられねえ!」
狙いが逸れて、地面に向けて何かが射出され、土と草の切れ端が飛び散った。
攻撃に失敗した隙を狙い、すぐさま左手に剣を出し、首を狙って振り抜くが、気付いた時には、既に相手の姿は消え失せていた。
「クソ! また消えた!」
「後ろだ! クソチビ!」
「驚いたぜ。物質を自由に作り出せるのかよ? そんな芸当が出来るんなら、剣の間合いは外さねえとな」
相手の武器は、見た事もない遠距離武器だ! だけど、その筒の向いた方に攻撃できるのは分かった!
左に持つ筒の重さが増したのを、右の筒を脇に挟み、両手で持ち上げた所で、縫い付けていた鎧の重さを取り払った。
「――ッ!? 突然かるく!?」
力を入れ過ぎたせいか、筒は斜め上に逸れ、何もない空中へ攻撃が行われる。
「一体なにが、飛び出してるんだ!?」
「クソが! リロードの隙を晒す事になるとは――」
リロード? 何のことか分からないが、多分、今はあの武器は使えない!
「一気に肉迫して――」
「ハ! 甘いぜ!」
右手に戻った形状の違う筒の先端が、こちらを向いた。
「させるか!」
瞬間的に前方へ甲冑そのものを側面を向けて撃ちだし、攻撃の進路を妨害する。
「貫通させるには、威力が足りねえ!」
今だ! 腕を通す隙間を縫って、剣を飛ばす!
「――ッ!? 鎧の中から何か――」
「クソ! リロードする時間がねえ」
撃ちだした剣を避けて、動いた先に先回りして、回避の隙を狙う。
「――ッ!? 何故、こっちへ躱すと読めた!?」
「撃ちだした鎧の角度だ! 僅かに右に向けて、真っすぐ飛ばさなかった!」
「なるほどな。その僅かな傾きに、無意識に反対へ躱すよう誘導された、か!」
振りかぶった左拳を、顔面へ向けて振り抜く。
「ハ! もう、手品は終わりかァ!? 素手で何ができ――」
「グアア!?」
さっき、剣を見せたのは、このための布石だ。こっちの能力の全容が掴めないうちに、一気に決める!
「す、素手なのに、刃みてえに食い込んで! このままだと――」
左の筒は、リロードって使えない状態で、右はさっき外して、今すぐ使えるのかは分からない。だけど、こっちも一発じゃ致命傷にはならないんだ! このまま切断する!
「バア。奥の手だ」
口を開いて、何をするつもりだ!?
「狙われたのが、顎の関節だったら、やばかったぜ」
「口の中にも、筒がッ!?」
角度が――調整できるのか!?
「近づけば、俺だけが不利になると思ったかよ? てめえの皮膚は、銃弾すら通さねえ。だがよぉ、こんだけ近けりゃ――」
「目を狙って!?」
「そっちの弱点も丸見えなんだよ!」
唾液でぬめった筒から何かが射出され、右目に強烈な衝撃を感じ、それが頭蓋骨を抜け、脳にまで達した。
「ぐあああ!」
右目を狙った想定外の攻撃は、今まで感じた事のない激痛を伴い、死を予感させる――。
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