一、村人の少女、アリシア
「やめろ…! やめてくれ!!!!」
すべての光を呑み込む闇が、『光の壁』へと何度も叩きつけられていた。
血に染まった大地すら呑み込み、ただあの『光』だけが、轟音と震動の中で孤独に立ち続けている。
まるで終焉の世界に残された最後の火種みたいに。
──それは、一人の少女の背中だった。
──小さく、か弱く。
──それでも、杖を高く掲げ、たった一人で闇に抗い続ける神官少女だ。
全身を締めつけるような激痛が、まるで枷みたいに俺の身体を縛りつけ、手を伸ばすことすらできない。
俺はただ、呆然と見つめるしかなかった。
動けよ……俺の身体……!
「ごめんね……どうやら、ちょっと……眠く、なってきちゃって……」
その声が落ちた瞬間、『光の壁』が轟音とともに砕け散った。
「やだあああ!!!!」
無情な闇が、少女の身体を容赦なく貫く。
「う…っ!」
「あああああ──────────!!!!!!」
俺は必死で彼女の身体を抱きとめた。
──指の隙間から、止めどなく鮮血が流れ落ちる。
──胸を満たすのは、果てしない後悔だけ。
「へぇ……」
──空から、冷たい嘲笑が響いた。
あの忌々しい元凶──!
虚無を纏った悪魔は、攻撃を悉く弾き返しながら──同時に容赦なく魔法を撃ち込んでくる。
「うあああああ!!!!!! よくも……!!」
空では、背に竜翼をもつ少女が悲鳴のような怒号を上げ、黒き悪魔へと狂ったように突撃する。
炎、雷光、剣閃──魔法の輝きと剣技の閃光が途切れなく放たれる。
──だが、全力を叩き込んでも、奴をかすめることすらできない。
屍が積み上がる戦場で、千年の戦いが終わろうとしている、その直前。
今の俺は、ただ膝を地につき、空で繰り広げられる激戦を呆然と見上げることしかできなかった。
…
…
…
「ふんっ……!」
俺は両手剣を全力で振り下ろし、最後の魔物である“ブラックウルフ”を倒した。はあ……これで今日のギルド討伐依頼も無事に完了だ。
「や、ふぅ……」
『東の森』の迷宮浅層では、よく『ブラックウルフ』を見かける。奴らは決して単独で行動せず、常に群れを組んで獲物を待ち伏せしている。
さっきの戦闘でも、茂みの中から五匹の狼が飛び出してきて、俺を囲んだ。必死に剣を振るって応戦したものの……複数戦は怪我がつきものだ。戦いの緊張が解け、麻痺していた痛覚が戻ると、全身を貫く痛みが俺を縛りつけ、動けなくなった。
「『ロウ・ヒール』」
木の根元に寄りかかりながら、掌に淡い緑色の光が灯り、それが傷口にゆっくりと染み込んでいく。温かな癒しの力が体内を巡り、チクリとした痛みが少しずつ消えていくのを感じた。
何度も『ロウ・ヒール』を重ねがけし、細かな傷を順番に癒していく。数こそ多いが、幸いどれも致命傷ではない。やがて全身の痛みが薄らいでいった。
『ロウ・ヒール』──それが俺の唯一使える魔法だ。
剣士としては珍しいかもしれないが、この初級治癒魔法を覚えられたのは幸運だった。おかげで回復薬代を節約できるし、単独任務もこなせる。
しばらくして治療を終える頃には、魔物の死体も灰へと変わり果てていた。
討伐された魔物は数分で灰になり、『魔晶石』や素材だけを残すのだ。
今日のギルド依頼は『ブラックウルフ』の討伐。魔晶石は換金できるし、『ブラックウルフの角』を集めれば追加報酬も出る。
今日は半日かけて目標数をこなし、角も二本入手。上出来だ。
「……帰ろう。『フローラ』に。」
『フローラ』──大陸南東に位置する冒険者都市。城外に設置された『転移魔法陣』により、各地の『迷宮』へ容易に行けるため、多くの冒険者が集う。宿屋、酒場、武具屋、道具屋、魔導具店、書物店……あらゆる冒険者向けの施設が揃っている。
俺の冒険者としての生活も、ちょうど一ヶ月前、この街から始まった。
疲労困憊の身体を引きずりながらフローラの城門をくぐる。
一日中の探索と戦闘で体力は底を突き、『ロウ・ヒール』の多用で魔力と精神もすっからかんだった。
「はぁ……はぁ……」
息を荒げながら、足を引きずるように東の農地へ。そこは『東の森』へ向かう途中の道でもある。
──そのとき。
夕陽を背にした少女の影が、ふいに俺の前に現れた。
長い髪が風に揺れ、金色の光を帯びて輝く。
――え? 俺、疲れてるのか?
足音も気配もなかった。まるで天から舞い降りた天使みたいに、彼女はそこにいた。
「冒険者さんですか? お疲れさまです。 このトマト、さっき収穫したばかりなんです。甘味と酸味のバランスが絶妙な一級品ですよ。一つ、いかがですか?」
目の前の少女は、まるで陽光の化身のようだった。整った顔立ち、紅玉のような瞳、ふんわりとした笑顔。
農作業で少し汚れた質素な服さえ、彼女の美しさを隠しきれない。ふと、ふんわりと甘い香りが鼻をくすぐる――彼女が抱える籠いっぱいのトマトからだろうか。
「……」
なぜ俺にくれるんだ? 面識もないのに。
……まあ、気のいい農家の娘なのかもしれない。だが、見ず知らずの人から物をもらうのはどうにも慣れない。
よし、丁寧に断ろう。
「いや、大丈夫。俺、トマトはあんまり好きじゃなくて……」
「何ですって!?今、何を言いました!?」
「いや、だからトマトはあまり…」
しまった。本当に疲れていたのか、彼女が怒り出していることに気づかなかった。でも、なぜ?彼女の親切を断っただけで、そんなに怒る理由はないはずだ。反応が大きすぎるのでは?
「トマトがあまり好きじゃないですって!?理解できない!受け入れられない!許せないわ!」
赤い瞳がぱちんと見開かれ、少女は信じられないといった表情を浮かべた。
どうやら本当にぼーっとしていたらしい。反応する間もなく、彼女はトマトをそのまま俺の口に押し込んでいた!?
「んぐっ!? ……な、なにこれ!? う、うまい!? これ……これ本当にトマトなのか!?」
「ふふんっ! わかりましたか!? このトマトたちに謝りなさいっ!失礼で愚かな人!」
俺は少し狼狽しながら残りのトマトを食べた。
驚くほどの甘味と、爽やかな酸味。それが調和して、まるで音楽のように舌の上で響く──うますぎる!! 旅の宿で食べたトマトなんて、まるで別物だ!
「申し訳ありません!どうかお許しください!」
新人ではあるが、毎日命がけで冒険している、ギルド公認の冒険者だぞ!?でも、この農村の女の子の気迫とトマトの味には、跪かざるを得なかった…実際には膝をついていないけど、つまり、感服したということだ。
「ふふん♪、分かればいいのよ。今日のところは許してあげますっ! いい? これがトマトの真の姿なんだからね!さあ、教えてやる、このトマトの…」
そのまま彼女は得意げに胸を張り、トマト学(?)の熱弁を始めた。『温度管理がどうとか、土壌の酸度がこうで……』
ごめん……あなたの熱意は伝わるけど、全然頭に入ってこない……。
彼女の声が子守唄のように心地よく響き、さっきの美味しさの余韻とともに、頭の中がふわっと霞んでいく。
――結局、たっぷり説教(講義?)を受けたあと、俺は新鮮なトマトをもう一つ渡された。
「新鮮なうちに食べるのよ。今すぐ食べなさい!じゃあね。」
「はい!」
彼女は軽く手を振り、お礼を言う暇もなく、彼女はくるりと振り向き城の方へと歩き出し、一瞬のうちに姿を消した。
俺も再び歩き出す。
新しくもらったトマトをかじりながら、通りを抜け、ギルドの扉を押し開けた。……不思議だ。身体の疲れが少し軽くなった気がする。あのトマトのおかげだろうか。
ギルドホールに足を踏み入れると、いつも通り周囲からの異様な視線を感じる──俺の悪評のせいだ。もっとも、特に気にする必要もない。
任務報告を済ませ、魔晶石を銅貨に換金する。
今日の稼ぎはまあまあ、夕飯と宿代でちょうど消えるくらいだ。装備の手入れ費を引けば……残りゼロ。
「え?」
カウンターの裏手で、1人の少女がギルド職員と楽しそうに話しながら出てきた。その少女は空のバスケットを持っていて、新鮮な農作物をギルドに届けに来たようだった。
「?」
少女は俺に一瞬視線を向けたが、それだけだった。
その後も、農地近辺や市場でこの強気なトマト娘に何度か出会った。ただ、特に交流があったわけではない。村人たちの話から彼女の名前が『アリシア』だと知った。
……
……
……
毎日ひとりでギルドの魔物討伐クエストを受け、初心者にも比較的優しいとされる『東の森』の迷宮で採集や討伐を行う――それが、今のわたしの日常になっていた。
故郷を離れ、冒険者の温床と呼ばれる『フローラの街』へやって来て、もうすぐ三ヶ月になる。
平民の身で異国へとやってきたわたしが、宿代や生活費を賄うには、毎日ひたすらクエストをこなして報酬を得るしかない。
もちろん、それはどの新人冒険者も同じだ。ギルドの最低条件をなんとか満たして試験を通ったとしても、冒険者として生き残るのは容易なことではない。
生活のためだけじゃない。――俺には「必死に強くならなければならない理由」がある。だから結論を言えば、今のやり方を変えるつもりはなかったし、ギルドの他の冒険者たちが何を噂していようと気にしている暇もない。
「休みの日を決めなさい。一ヶ月に最低でも二回。でなければ、ギルドの権限であなたの冒険者資格を一時停止しますよ。」
受付嬢さんはきっぱりと言い放った。
「そ、そんなに大げさな話ですか?」
「この顔を見なさいよ。毎日ボロボロの傷だらけで帰ってきて……そのうち迷宮の中で倒れて、誰にも気づかれないまま終わるわよ?」
「……。」
ギルド――冒険者ギルドは、俺たち冒険者に多くの恩恵を与えてくれている。登録資格を失えば、クエストで報酬を得ることもできないし、個人で魔物を狩っても、戦利品をギルド外で売るとなれば買い取り価格は大幅に下がる。
「はあ……少しは人生を楽しむことも覚えなさい?」
彼女はため息をつき、少し柔らかい口調になった。
「……分かりました。」
これ以上反論しても意味はない。こうして、わたしは“強制休暇”を取ることになったのだった。
……
……
……
そして今日、その休みの日。はちゃんと受付嬢さんの言葉に従い、一日ゆっくり休むことにした。
…
クエストを受けられない以上、街の中をぶらぶらしてみよう。
思えばここに来てから、仕事ばかりで街のことなんてほとんど知らなかった。だから今日は、城下をのんびり散策することにした。
普段通り過ぎるだけの通りも、心持ちを変えて歩くだけでまるで違って見える。街には冒険者向けの店だけでなく、飲食や娯楽、さらには玩具店や子供服の店まで立ち並び、老若男女、家族連れや恋人たちが楽しげに行き交っていた。
――この時代に、こんなにも平和で賑やかな空気があるなんて。
『フローラの街』は、冒険者の中心地であると同時に、安らぎのある街でもあったのだ。
俺は本当に無知だった。
自分のことばかり考えて、目の前の景色を見ていなかった。けれど……もし『あの件』が起きたら、この光景はどう変わってしまうのだろう。
街の店々を一通り見終え、気づけば東門の方へと歩いていた。農地を抜けると、休みの日でも働く農民の姿がぽつぽつと見える。俺は無意識にその農地を見渡し……そのまま南へ進むと、噂に聞いた『フローリア湖』へと辿り着いた。
受付嬢さんの話では、この湖の景色は素晴らしいという。せっかくだから確かめてみよう。道を歩くことしばし、ようやく視界に現れた湖は、本当に美しかった。
鏡のように静かな水面が陽光を映し、そよ風が頬をなでる。それだけで、心が癒されるような心地よさがあった。
――少しの間だけでも、何もかも忘れていられる。ここはそんな場所だった。
俺は湖畔を歩くことにした。どこまで行けるか試してみよう。
やがて、小さな林を抜けた先の浅瀬にたどり着く。
「ふう……ふふっ……」
誰かの笑い声?休暇で観光に来た冒険者だろうか、それとも家族連れの市民だろうか。好奇心に駆られ、そっと歩みを進めてみる。
「えっ!?」
湖のほとり――そこにいたのは、たったひとりの少女だった。
浅瀬に立つその少女の赤い瞳が水面に映え、無邪気な笑顔を浮かべている。腰まで届く茶金色の髪が夕陽を受けて淡い光を放ち、濡れたスカートが脚に張りついて、動くたびにしなやかに揺れる。
――『アリシア』。
清らかで、美しく、この湖の景色と溶け合うような少女。
特に気配を消したわけでもないが、彼女はまるでわたしの存在に気づいていない様子だった。いや、むしろこの距離で止まって正解だろう。美少女を眺めるにも、節度は大事だ。
「ええっ?どうしたの?冒険者さん?この湖の水、冷たくて気持ちいいですよ?一緒に休憩しませんか?」
え、この子は、突然現れた見知らぬ人に対して、驚きも警戒もしていない。ここは城から少し離れた場所で、人も少ないはずだ。……君みたいな可愛い子は、もう少し警戒心を持とうよ!?
「いや、その……少しは気をつけた方がいいんじゃない? この辺り、人も少ないし、何が起こるか分からないよ?」
ここには俺たち以外誰もいないんだし、少なくとも見知らぬ男には警戒してもいいんじゃないか……迷い込む魔物だっているかもしれない。
「ふふ、大丈夫ですよ。あなた、あたしに何もできないでしょう?」
……舐められたな、これ。
「ほら、こっち来て〜」
彼女は軽やかに手を振って、まるでお茶会にでも誘うような口調で言う。
その仕草があまりにも自然で――思わず逆らえなくなる。
なんだろう、この感覚……。言う通りにしないと、何か大切なものを逃す気がして。
靴を脱いで足を浸してみると、湖の水は本当に冷たくて心地よかった。
「気持ちいいでしょ?」
「うん。」
「休憩って大事だよ!ちゃんと心の疲れも癒さないと、もっと頑張れなくなるんだからね。分かった?」
「……まあ、確かに。」
なんでまたこの子に説教されてるんだろう?彼女にはどこか不思議な雰囲気があって、まるで俺のことを全部見透かしているような気がする……まあ、俺が分かりやすいだけだろうけど。
「それで、君も農作業を抜け出してきたのか?」
俺は話題を振ってみた。
「……ふふっ。」
少女は笑って答えない。うん、分かった。女の子って本当に難しい。
俺は静かにその時間を楽しんだ。柔らかな風、冷たい水、そして――隣にいる美しい少女。
こんな時間、俺には似合わないと分かっていても、この一瞬だけは、夢のように心地よかった。
ただ、彼女の濡れたワンピース越しに透ける姿を直視できなくて、視線の置き場には困ったけど……。
やがて日が傾き、少女は岸を離れようとした。沈みゆく空を見上げながら、俺は思わず声をかけた。
「もう帰るの? 送っていこうか? 君みたいな女の子、気をつけないと危ないよ?」
「え? そうなの? ふふっ、いいかもね。あはは……」
驚いたように笑った彼女は、やはり『安全』という概念に無頓着なようだった。
――そうか。俺は外から来た旅人。けれど彼女は、この街の住民。だからこそ、怖いものなんて何ひとつないのかもしれない。
……
道の途中、俺は無言のまま、ただ彼女の隣を歩いていた……。
それは単に──彼女の安全のため、というだけの理由だった。話しかけるなんて……やめておこう。
「ねぇ、冒険者さん。お仕事のほうは順調?」
話しかけてきた……。
そういえば、彼女はいつも俺のことを『冒険者さん』と呼んでいたな。やっぱり、覚えていたのか。
「……あ、あぁ。まあ、それなりに。どうかしたのか?」
「ふふっ、別に。ただ、いつもひとりで依頼を受けて、ボロボロになって帰ってくるのを見てるからさ。」
「そ、そうなのか?まあ……慣れてるから、大丈夫だ。」
たぶん、あの農地で見かけてたんだろうな。毎日のようにあそこを通って帰ってたから、見られててもおかしくはない。
「うーん……あなた、この街に友達いないでしょ?」
なっ!?まるで、細い針が心の奥に突き刺さるような感覚だった。
「そ、それは……まあ、いないけど!そんなストレートに言われると傷つくだろ!俺は友達を作るために『フローラ』へ来たわけじゃない!」
「えぇ〜?じゃあ、友達ができないからパーティー組めないってこと?」
「ち、違う!むしろ逆だ!」
「逆?」
「パーティーを組んだからこそ、友達ができなかったんだよ……!」
「ぷっ……ははははっ! 何それ? パーティー組んだら友達できなくなるとか、あなた性格悪すぎない?」
彼女は笑いながら言う。きっと冗談だと思ってるんだろう。でも──お前は俺の事情を知らないだけだ。
「かもな。」
「少なくとも、あたしはそう思わないけど?」
「それは、お前が何も知らないからだ。」
「ふふっ、そうかもね。でも今のところ、あたしの目には“悪い人”には見えないけど?」
……この子、遠慮がないというか、無自覚に人の痛いところ突いてくるな。まあ、でもこうして誰かと普通に話すのは、ギルドの受付嬢や装備屋のオヤジ以外じゃ久しぶりかもしれない。可愛い子に少しからかわれるくらい、別に悪くない。
「ところで、今どこに住んでるの?城東の宿とか?」
「うん……ああ。よくわかったな?」
「なんとなく? だって一番安い宿でしょ?」
「貧乏くさいって顔に書いてあるんだろうな、俺……。」
……まったく、どうしてそこまで当てられるんだ?でも、真面目にやってる中級冒険者たちと比べれば、確かに俺はみすぼらしい見た目だ。
「ち、違うの! そういう意味じゃないの! ご、ごめんなさい!」
謝るのかよ……。いや、悪気はなさそうだな。たぶん、ちょっと天然なんだ。
「……許して、もらえる?」
彼女は小さく腰をかがめ、上目づかいで俺を見上げた。……やばい、可愛すぎる。
「別に怒ってないよ。」
「よかったぁ……。あのね、ギルドには新人支援制度があるでしょ? もうちょっといい宿に泊まれると思うけど?」
「あるけど、俺は武器と装備しかもらってない。」
「どうして?」
「んー……タダで世話になりたくなかったんだ。」
──自分を追い詰める理由が欲しかった。誰かの施しを受け続けていたら、きっと“必死に戦う理由”が薄れてしまう。そうなれば“強くなる”道は遠のくだろう。
「ふーん? そっか。」
……この子、本当に勘が鋭いな。
そのあとも彼女はいろいろと話しかけてくれて、俺の街での生活のこととか、慣れてるかとか、いろいろ聞いてきた。
そして、街外れの農地のあたりで別れた。
アリシア──本当に、優しくて可愛い、いい子だった。




