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ジュリアの兄からの手紙 28

 朝の風が少し涼しく感じられるようになってきた。

 真夏も終わりかな。


 ミルクティーを持ってシャインさんを起こしにいく。

 部屋に入ると、彼はいつものように椅子に座ってボンヤリしてた。


「おはようございます」

「おはよう」


 お茶をセットしてシャインさんに渡す。

 彼は私を上目遣いに見て、小さく微笑んだ。


 こういう仕草が、最近は増えてる気がする。

 無言のままで私に微笑んでくれるの。


 ——ちょっと、ドキッとするから止めて欲しいんだけどね。


 カーテンを開けて、窓を開く。

 部屋の籠った空気が流れ出て、少しヒンヤリした風が入ってくる。


「朝が涼しくなって来ましたね。真夏も過ぎたのかな」

「ああ、日も短くなって来たしね」


 そうは言っても日中は暑いのよね。

 服装に気をつけないとな。


「あ、シャインさん」

「ん?」

「朝からで申し訳ないんですが」


 私はポケットから兄の手紙を出した。

 たぶん、読んでもらった方が早いから。


「僕が読んでいいの?」

「はい」


 洋服ダンスを開いて、シャツと靴下と夏物の制服を出す。

 真夏はベストを省いてたけど、どうしよう。


 んん。

 でも、まだ暑いよね。


 シャインさんの側に戻ると、彼は小さく頷いた。


「外で食事か。いいよ、付き合う」

「いいんですか? レストランになっちゃいますけど」

「婚約者に紹介したいんだろ? これでも一応、ツリッチャキの友人だしね」


 ——そう。


 兄の手紙は、私とシャインさんを招いて外で食事をしたいってものだった。あの兄が、いつの間に婚約なんかしたんだろ。好きな女性が居るのは知ってたけどね。


 本当なら、ナイン家に招きたいんだけど親父がいるから外でって。

 私に気を使ってくれてるんだよね。


 それはいいんだけど、シャインさんまで一緒にって——巻き込むんだから。


 少し身を乗り出して手元を覗き込む私に、彼は子供のような笑みを浮かべた。


「それに、出かけるなら、お洒落したジュリアが見られるだろ?」

「お洒落なんかしませんよ。相手は兄なんですから」

「僕がエスコートするのに?」


 ……ぐっ。

 そう言われちゃうと。


「それに、未来の義姉に会うんでしょ?」

「まぁ。そうなんですけど。はい」


 シャインさんが、少し揶揄うみたいに声を潜めた。


「楽しみにしてるよ」

「……う、はい」


 ——プレッシャーなんですけど。


 私は彼から手紙を返してもらって、ふうって息を吐く。


「着替えを手伝いますか?」

「投げやりだなぁ」

「手伝いますか?」


 彼は甘えるような目で私を見上げる。


「じゃあ、上だけ」

「え?」

「えっ、じゃなくて、手伝ってくれるんだろ?」


 シャインさんは固まってる私を見て、吹き出して笑った。


「冗談だよ。自分でやる」

「……意地悪ですね」

「ああ。意地悪もしたくなるさ。ジュリアの膨れた顔は可愛いからね」


 ——もう。よく平然と、こういう言葉が出てくるよね。


「朝食の支度をして来ます」

「あ、そうだ」


 彼はミルクティーを啜りながら首を傾げた。


「今日はフレンチトーストで」

「分かりました」


 私はシャインさんの部屋を出て、ちょっと息を吸い込む。


 さすがに飽きるだろうと思って、フレンチトーストを出したら気に入ってくれたみたい。ルーランも美味しいって言ってたし。


 それは……いいんだけど。

 お洒落かぁ。


 どうしよう。

 余所行きはナイン家に置きっ放し。

 着てく服がないよ。


 ☆


 シャインさんが出張で買って来てくれたお土産は帽子だった。

 私が夏向きの帽子を一つしか持ってないって言ったからなんだろうな。


 覚えてて、買って来てくれたんだなって思うと、すごく嬉しい。


 しかも、デザインが少し変わっててお洒落なの。

 前に向かって鍔が広くて、後ろは狭いデザイン。


 ベージュの涼しそうな布で作ってあって、少し大人っぽい。

 薄い黄色のリボンが回してあるんだけど、結び方が変わってて蝶々みたい。


 この帽子に合うようなワンピースは、ナイン家に戻ってもない。

 私の持ってる服は、少し子供っぽいんだもの。


 ——これはもう。

 買うしかないよね。


 靴やバッグも合わせたら、すごい散財になっちゃいそうだけど。


「いいよね。すっごく欲しい物に入るもの」


 私は鍵付きの箱の底に貯めた貯金を思う。

 すっごく欲しい物と必要な物以外には使わないって決めてるヤツ。


 ワンピースや靴やバッグなら、この先も使う物なんだし。

 うん。アンジュさんに半日のお休みを貰って買いに行こう。


 私はミルク液に浸したパンを突っつく。


 頑張ったって、シャインさんの横に立ったら霞むんだろうけどね。






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