95.俺の部屋が……無い!?
我が家は田舎町にそびえたつ由緒正しき……というわけではないが、祖父の代から残る和風建築の二階建て一軒家だ。
周りが全部田んぼだったころから建っているらしく、今では珍しいくらい広い土地と大きな庭があるけれど、その代償として夏は多くの蚊が湧く。
まぁここで育ったからというものもあるかもしれないけれど、そういうデメリットを圧倒的に上回って古い家特有の木の匂いと今はほとんど見かけない畳が好きだ。後ついでに言うと新しい家特有の薬剤のような匂いは苦手だ。
「ただいまー……で、良いんだよな?」
「たっだいまー! 誰もいないけどー!」
「一人暮らしをしてると言ってもまだ保護者は私たちなんだからただいまで良いんじゃないかしら? 私としては早めにお嫁さんを見つけて自立しても一向にかまわないわよ?」
「そうだね。でも、家が一つじゃないといけないなんてことも無いからこれからもずっとただいまで良いと思う」
母さんの後半の戯言は無視して父さんの言葉の意味を考える。
……そうだな。確かに某立方体世界での三等身クラフトゲームでも第一拠点とか第二拠点とか作るし、金持ちなら別荘だって持っている。
ここは長期休みとか節目ごとに帰ってくる実家という家なんだから細かいことは気にしなくていいか。それに、俺もここが好きだし。
「んじゃちょっと荷物置いてくる」
「あ! お兄ちゃん待って! お兄ちゃんの部屋はーー」
美咲が何か言っていたが、まさか俺がこの家で迷うとでも思っているのだろうか。生まれてから十五年、高校に入るまで住んでいたこの場所で迷うはずがない。
俺の部屋は階段を上がって二階の突き当りにあるここだ。懐かしの障子を開けると見慣れた机とベッドが……ない!? あるのは大量の段ボールとペットボトルとかお菓子が大量に入った箱のみ。
うっそだろ、まさか部屋を間違えたのか? いや、そんなはずはない。見覚えのある天井の染みに小さいころ俺が穴をあけた障子も残っている。俺の部屋は確かにここのはずだ。
しかしそれなら俺の部屋は? 「ここはお前の実家なんだからいつでも帰ってきて良いのよ」みたいな感動的な会話をしたのは何だったんだ? え? もしかしてーーー。
「———無駄に愕然としてるところ悪いんだけど、お兄ちゃんの部屋は今無いから、荷物は私の部屋に置くようにしてくれる?」
「……俺の部屋無くなったの? え、俺要らない?」
「いやいやいや! 悲観的すぎるでしょ! 夏休み直前に電話線? みたいな工事することなって、お兄ちゃんの部屋にある受験勉強用のノートとかを丸ごと私の部屋に持ってきて要らないものとかみられたくない物を詰め込んだだけだから!」
……そういえば前回帰省した時にもうすぐ工事するとか、夏休み前に工事してるってメッセージが来ていたような気がするような無いような。
とりあえずただ移動しただけだということは理解した。しかし、一つだけ疑問が残っている。
「そういえば、俺のベッドは? 机は理解したけどベッドって持っていくところなくない?」
「うっ、そ、それは私が使ってるの! 私は今までずっと布団で寝てたから色々整理するついでに私の部屋に置いてもらったの! お兄ちゃんはほとんど家にいないんだからいいでしょ!?」
「いや、まぁお前にベッドをあげることは別にいいんだが……俺今日からどこでというか、何で寝ればいいんだ? 茶の間の座椅子?」
「わ、私が使ってた布団があるからそれ使って寝ればいいよ。場所は……勉強を教えてもらいたいし、わ、私の部屋でいいよ!」
さすがに寝る場所がないというのはかわいそうだとか思ってくれたのだろう。
実際問題としては、寝る場所がないということはーー流石にありえないがーー困ったことになるだろうし、同じ部屋で寝ることくらい昨日まで俺のマンションで寝てたのだから何の問題もない。
それか、断りもせずにベッドを奪ったことに罪悪感でも持ってるのかと思ったけど、美咲が俺に罪悪感……無いな。
「そういうことなら荷物置かせてもらおうか」
「わ、分かった! 私は先に下に行ってるけど……変なことはしないでよね!」
「……俺を何だと思ってるんだ」
まるで変態のような扱いをしやがってと思いながらも美咲の部屋へと向かう。……といっても美咲の部屋は隣にあるわけで、利便とかはほとんど変わらない。
襖を開けてみると、確かに俺の物らしき机とベッドがある。美咲の部屋に俺の物が……というかベッドが大きすぎて俺の部屋に美咲の物があるように見えなくもない。
部屋に一歩入ると、女子特有の甘い香りがして————俺は妹相手に何を考えているのだろう。なるべく無心を意識して荷物を置いて茶の間へと向かう。
茶の間にテレビを見ている美咲と母さんの姿があり、台所から良い匂いがする。父さんが料理を作っているところなのだろう。
揚げ物とか火傷する可能性がある料理は父さんが担当しており、母さんは和食を作るのが得意だ。ちなみに、俺が料理をできるのも父さんがしていたのを見て教えてもらったからだ。
「静哉、お盆なんだしご飯ができる前に墓参りに行ってきたらどうかしら? ほら、美咲も一緒にね」
「まだできるまで一時間位かかるし行ってきて大丈夫だぞ。ついでに言うと、今日は静哉が好きな唐揚げだ」
「あー。そうだな。行ってくるか」
「私もー」
唐揚げは一人暮らしでは油的問題で中々作れないから正直なところ凄く楽しみだ。何となく、その事を悟られないようにしながら俺は玄関へと向かった。
書き上げた時刻は18時00分。つまり投稿の一時間前ですね。
こんなギリギリになった原因が何かと聞かれれば、決して言い訳するつもりはないのですがゲームでコラボだのバレンタインキャラだのが始まったせいです。
いや、決して言い訳するつもりはないのですが、白猫プロジェクトで私が愛してやまないティナがバレンタイン衣装で新登場したのです。狂喜乱舞。
いや、本当に決して言い訳するつもりではないんですけど、それと同時にモンストで鬼滅の刃コラボが始まったんですよね。炭治郎以外出ました。しかし欲しいスタンプが出ていません。ピンチ。
まぁ、結論二千文字書いて投稿も間に合ったんだから良くね? って感じでティナください。
あ、今日の話のポイントは結構ブラコンな美咲です。次の投稿は2月22日だと思います。猫の日ですね。にゃーにゃー。




