行動しようそうしよう
新しい朝が来た、希望の朝…希望ねぇ?
目が覚めると、身体のそこかしこが軋む気がした
そりゃ床で寝ればそうもなるというか
いくらメリアを起こしたくなかったとは言え、ベットまで行けば良かったんじゃなかろうか?と思わないでもないが
なんとなく傍に居たかった…のかもしれない
中学生でもあるまいに、なんなんだこの気持ち
今頃初恋もなにもあったもんじゃないだろう
そもそも、俺は女を好きになったことなんて無い
三次元の女に興味が無いのだ…風俗は好きだったが、それすらここ数年は飽きてしまって行ってない
まぁ良い、他人の女に懸想したってロクなことが無いのは解りきってるし
たまたま知らない土地に来たせいで、心細くなってるだけだろう
そうだ、気の迷いだ
昨晩綺麗だと思った細面も、朝日の下で見れば妙にふやけたヨダレたらした唯の女だ
ありゃ月明りの魔法に化かされていたんだろう
ピンポイントで俺の股間にヨダレ垂らしてるしな!そういうプレイも無くはなくってよ!
その後、寝ぼけたメリアが抱きついてきて、引き剥がすのに苦労したり
窓から恐怖新聞が投げ込まれたり(こちらの世界では普通の朝刊扱いだそうな)
メリアが花つみ中のトイレに間違って入ったり(大では無かった)
理法テレビとやらの存在に気付いた俺が、開け!ポンビッキーズとか言う番組を見て
風俗街で客引きをする、緑と赤の怪物を甚く気に行ったりして、騒がしく過ごした
簡単な朝食を済ました後、お茶を飲みながら俺は話を切り出した
「さて、腹も膨れたし、今日からの予定を発表しようかと思う」
「予定でござるか?珍しいこともあったものでござるな」
「珍しいとは?」
「ゴトウ殿ほど”予定”という言葉と縁遠い人は居ないでござるよ」
「なんだその人物評は…そんなにいい加減な人だったのか?」
「いい加減が服を着て歩いているような人がゴトウ殿でござる。理法の第一人者であることは確かなのでござるが、普段はほとんど研究も実験も行わず、その割には気が向くと国がひっくりかえるような技術を発表するのが常でござった」
なんだそりゃ?国の宝というか、手に負えないマッドサイエンティストの間違いじゃないのか?
「ついでに女癖も悪い…これは少し語弊があるでござるかな、生粋の女誑しというか、本人にその気は無いようなのではござるが、年中どこぞの女子を誑かしてござる」
俺とは正反対じゃねーか!似てるの見た目だけかよ!
「というわけで、理法の代名詞がゴトウ殿なのでござるが、この国では、いい加減で好色な男も”ゴトウのようだ”と呼ばれるのでござる」
おめー俺の名字に何してくれちゃってんの!?
「話は分かったが、ゴトウはゴトウで俺じゃない。俺は予定をしっかりたてられる男であり、尚且つ女に興味も無い、そこんとこヨロシク」
「男色家にござるか?」
「ちげーよ!生身の女に興味無いだけ!俺が愛するのはフィクションの女性なの!砂糖菓子でできてるような女の子なの!ていうか何言わせてんの恐ろしい子!」
「色々と拗らせてるでござるな…」
「とにかく!俺は元の世界に戻る方法を探すことにする、というかした」
「…ど、どういうことでござるか!吾輩が何か粗相をしたでござるか?謝罪をさせてほしいでござる!思い直して欲しいでござるよ!」
あ、まずい
泣かせてしまった
泣かせたくなかったから、こんな話したんだけどな…
さすがに涙もろすぎだろう
幼子のように泣きじゃくるメリアの頬に触れ、顔を上げる
「まぁ、落ち着いて聞いてくれ。キミは何も悪くない、それどころか、こっちの世界に来て、キミが居なかったら今頃俺はあの草原で野たれ死んでただろうし、感謝してる。」
「ただ、やっぱりキミが帰ってきて欲しいと願ったのは、俺とは違うゴトウさんで、そこは何があっても変わらない部分なんだと思うんだ。」
「俺には理法なんてもんはチンプンカンプンだし、キミが警護する対象では無いだろう?」
「だから、俺はあっちの世界に戻って、キミが望んでるゴトウを連れ戻すよ」
そうして、メリアの涙を指で拭った
「ちがっ!違うでござる!そうじゃないんでござ…ッ!?」
聞き分けの無い女は抱きしめてしまうに限る
漫画ではこれで黙るはず
キスだったような気もするが、さすがにそれは駄目だろう
したいのは山々だが
メリアは俺の腕の中でもがいていたが
しばらくすると、静かになった
でも、もう少しだけこのままでいよう
せめて彼女の涙が乾くまで




