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交換しようそうしよう

「後藤さん!客先からまた変更指示の電話です!もう無理ッス!」


不健康そうな顔を歪ませて、今にも泣きそうな声で業務連絡を伝える後輩

これで何回目の変更指示だろう

今では客先からの電話をとること自体苦痛になってきたので、専ら電話をとるのは後輩の仕事だ


「口頭じゃよくわからんからメールで入れてって言っといてよ…」

連日の徹夜で俺の声にも半分泣きが入っている


「電話でもメールでも一緒ッスよ…どうせケツはズレないし、また変更されるし…」

まぁそりゃそうなんだけどな


PCに表示された時計を見ればとっくに日付が変わっていた

終電には間に合わないだろう…そもそもこの状況じゃ今夜も徹夜だ


(どうしてこうなっちゃったのかな…)


将来設計なんて一つも考えたことが無かった俺が

周りに流されるまま設計の仕事なんてしてるのも皮肉と言えば皮肉なもんだけど

こんな仕事漬けの毎日が送りたかったわけじゃないんだけどなぁ…


昔はこう、もっとそれっぽい夢もいっぱいあったはずなんだよ

エルフと結婚してハーフエルフの娘ができて幸せな老後は大草原の小さな家でとか

可愛い天狗の娘さんと結婚して「ほうら俺の股間が天狗さんだ!」とか

雪女と炬燵で鍋を囲みながら「今夜は君ときり○んぽ鍋!」とか

座敷童子といけない御遊戯とかグラスランナーと足毛プレイとか龍の化身と逆鱗ックスとか巨人の娘と体内回帰プレイとか悪魔の娘と聖水ぶっかけプレイとか

天使とか獣娘とかロボ娘とか人妻とか幼馴染とか義妹とか義姉とか熟女とかOLとか宿屋の娘とか村長の娘とか王女とか女王とか女神とかッ!!!!


あらゆる女にモテまくって毎日楽しく過ごしたいなって

物心ついてからずっと思ってた


でも現実は厳しかったよね

とりあえずエルフとか居ないし

未成年になんて手出したら警察の御世話になっちゃうしね


生きてても楽しくないけど

死ぬのは怖いし

ご飯食べないと死ぬから、働かないとね…


刹那の妄想から覚めてPCのディスプレイを注視するとメールの着信が…

客先からかな…

嫌だな…

見たくないな…

帰って寝たいな…

でも、見なくちゃな…


意思に反して動こうとしない右手を叱咤激励しつつ左クリック


差出人:後藤義信

…俺から?

件名:交換しないか?

…新しいスパムか?

本文:そっちの世界の俺へ

   俺、こっちの世界で生きるの疲れちゃった

   なぁ、もしもお前がそっちの世界に飽きてるとか

   どっか違う世界で生きてみたいとか

   そんな風に考えてたら

   交換しないか?

   

   俺はこっちの世界で生きるのが嫌になったけど

   お前だったらもしかして気に入るかもしれない

   物は試しって言うだろ?

   とか色々書いてみたけど

   このメールを読んだ時点で交換は成立しちゃってるんだよな

   サンキューそっちの世界の俺

   この世界、俺は馴染めなかったけど

   お前は気に入ってくれると嬉しいな

   がんばれよ俺



スパムにしても全然意味がわからない

立太子ボタンよりわからない


わからないけど…このメールは事実を書いているらしい


だって、俺が今座ってるのは会社のデスクではなく

強い風が吹きすさぶ草原の中にポツンと鎮座した岩の上だったから


夜空には満天の星と静謐な色を湛えた月が7つ


遠くに見えるは天に突き刺さらんばかりに屹立する淡い輝きに包まれた大樹


「ナニココ」

俺は途方に暮れた








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