第一話
私は勉強が嫌いだ。
決して学ぶのが嫌いと言う訳ではない。
ただ自分の興味がない知識を押し付けられるのが我慢ならないのだ。
私は食べるのが嫌いだ。
決して好き嫌いが多いと言う訳ではない。
ただ食べるという行為自体に億劫さを感じるのだ。
私は会話が嫌いだ。
決して無口と言う訳ではない。
ただ人と話す事がめんどくさいのだ。
私は遊ぶのが嫌いだ。
決して楽しくないわけでは無い。
ただそれらが全て無意味に感じるのだ。
私は寝るのが嫌いだ。
決して眠れないと言う訳ではない。
ただ時間がもったいないと思うのだ。
私は異性が嫌いだ。
決して性欲がないわけでは無い。
ただ相手に対してどうしても嫌悪感を抱くのだ。
私は家族が嫌いだ。
決して両親が嫌いと言う訳ではない。
ただその枠組みが好きになれないのだ。
私はそもそも人間が嫌いだ。
決してうぬぼれているわけでは無い。
ただ出会うもの全てが敵に見えるのだ。
だから私はーーーー。
だから。
「三好、三好静音さん!」
「あ・・・はい」
教室の窓側の隅に位置する席で景色を眺めていた三好と呼ばれた少女はいつの間にか傍らに立っていた教師に
呼びかけられハッとした。
気づけばクラスメイト全員から注目の眼差しを受けている。
「最近、なんか疲れてる?良くぼーっとして」
「あ、すみません。以後気を付けます」
「・・・・・・放課後、少し残れる?」
「・・・わかりました」
「はい、じゃあ次、向山さん。次ページからね」
長身のきりっとした目つきの女教師は軽い溜息をついて教壇へと戻ってゆく。
クラスメイトはくすくすと笑いながら再び目線を黒板へと戻した。
六限目の今日最後の授業は数学だ。
机の上に広げられたびっしり書き詰められた数字の羅列に視線を落とし、三好は呟く。
「・・・・・・吐きそう」




