書いてみた5 (ミックスジュース ジャスラとユーリ)
書いてみた5
食堂は程よく混んでいた。授業が終わったので、部屋に戻る前に食事を、と思っていたのだが皆考えることは一緒なようだ。ジャスラは中を一周見て席の空きを探す。
そして、よく知る顔を見つける。そういえば同じ授業をとっていたんだったと思いながらその席の向かいに座る。
「よ、ユーリ。お疲れ様ー」
「ん"あ?……ジャスラか」
ずぞぞぞ、とパスタを啜り、飲み込んでからやっと言葉を紡いだ。
「一緒に昼いーかな」
「どーぞー」
プレートをテーブルにおいて、頂きます、と呟く。そういえば、あんまりこいつと二人で話したことないな、なんて思いながら上目遣いで盗み見しつつカレーを口に運ぶ。見た目だけなら確かにかわいい。身体のサイズがあの二人よりも小さいからか、小動物のような雰囲気がある。特にそんな風に必死にレタスをちびちび食べているのをみたらウサギかなんかだと勘違いしてしまう。そういうところがかわいいって言われる由縁なんだろうな。
「なんだよー」
「いや、何でもないんだけど」
あわてて視線を反らしカレーに集中する。あらま、なんて目付きの悪い小動物なんかしら。
「まてまてお前。ソースがシャツに付いてんぞ」
「あ、やべ」
「それ、すぐシミ抜きしないとダメなやつじゃね」
「染み抜きってどうすんの」
「俺が知るわけねーだろ」
「なんだよ、役立たずー」
ちょいちょい、と布巾で汚れを拭う。どうやら汚れは拭えたようだ。
「それでいいのか」
「これでよいのだ」
ユーリは再び皿に向かう。ざわめきが大きくなるところをみると本格的に食堂に人が集まり始めているようだ。じっと入り口の大扉を眺めてから、気になっていたことを訊ねる。
「えっと、キサラとかは?」
「ん?アイツなら風邪引いたときに休んでたところのノートを取らせてもらってるみたいだぜ。アイリの方はお前も行ってきたんじゃないの?今日は男子の魔力測定の日だろ?」
ふぅん、と相槌を打ってこの前のキサラ風邪引き事件(別称:壁ドン事件)を思い出していたのだが、何か引っ掛かるところを感じたのか、はたりと動きを止めてユーリをまじまじと見た。
「魔力測定?」
「そ。あんたもやって来たんだろうが」
「いや、男子だけだろ!あれ。上だけとはいえ、服脱ぐんだぜ」
「うん、知ってるよ」
「アイリは、」
「知らなかった?アイツ、男だよ」
とんとんとん。頭のなかで脳ミソが叩かれる音がする。ア・イ・リ・が・お・と・ こ。染み込んだ辺りで再び動き出した。
「ええええ?!」
「見た目、完全女だもんな」
「だって、アイツ、レオと付き合ってんじゃ」
「そらもう、愛し合ってますなぁ」
ずぞぞぞ、と音を立ててパスタをすする。ソバじゃないんだからと言いたいところだけどまぁいまはそれはどうでもいい。あの見た目で、男!その衝撃が去らない。っていうよりいつも完全に女だと思って接していたのだ。
「ラディオはしってんのか」
「あいつ、ノアの事件最初辺りであたしに聞いてきたよ」
そらもう、気づいてないのは俺だけ、ということだろうか。はぁ……と呆けたようになって、思い出したかのようにカレーを食べ始めた。ふと、下世話な想像が頭をよぎりつい口に出してしまう。
「んじゃ………レオとアイリは男同士でヤってんのか………」
「まぁそういうことになるな」
少しの知識はあるから分かるのだけどまぁ体的にみて
「この場合、女はアイリか…」
ふぅん………と納得したのかしてないのか分からない曖昧な言葉を発してしまう。
「アイツ、ほんとは普通に女の子が好きなんだぜ?ってか、その前は付き合ってる子とかいたかんな」
「そうなのか!あのなりで」
「付き合ってた子の話だと、カッコいいらしいぜ?ヤってるとき。ギャップ萌えがまたいいんだと。」
「え、ちょっとまて、アイツ童貞もきってんの?!」
「うん。大好きだからな、やんの。今でこそ女役だけどレオのバック狙ってるからなぁ」
「うわ、やめろ想像力が発達してしまう」
「どんなかんじなのか一回見てみたいもんだよなー。お前もアイリに童貞もバックもきってもらえ………」
「冗談でもそんなこと言わない!!」
ジャスラが耳を塞いであーあー、と声を上げる。その時勢いが過ぎてスプーンが宙を飛びジャスラのシャツにシミをこぼす。
「あー、お前バカだなぁ」
「げ!………………あぁ!もーとれねぇじゃねぇかー!」
「それじゃ汚れを伸ばしてるだけだろ。ばか貸してみろ」
ユーリがわざわざ席をたち、ジャスラの前に膝をついた。そして、ジャスラのシャツを引っ張り布巾でシミをとっていく。とんとん、とんとん。
えーと、この状況はなんでしょうか。あ、ユーリってわりと睫毛長いんだなー。キサラもよく影になってるときあるけど、そういえば、こいつら同郷だっけか。こいつらの国のやつらはみんなこうなのか。黒髪に黒目。魔力に左右されないタイプのやつら。そういうやつらは精神力が強いんだっけか。まぁこの3人見てれば、それも頷ける。
ジャスラはびしっと背筋を伸ばしながら、ユーリにされるがままになっている。その様子を回りの人たちがにやにやしながら通り過ぎているのだが、ピュアなジャスラ、その体勢が端からみたらどんな風に見えているかなんて気が付かない。
「何やってんの、こんな人前で」
二人の後ろにたっていたのは氷の王子ラディオ。心なしか、体感温度が少し下がった気がするのは、やはり彼が氷の力の持ち主だからだろうか。それとも、
「あぁ、ラディオ。お前も飯か?」
「そうだ。お前がいるのは知ってたからな、一緒に食べようと思って来てみたらこんなものを見せられるとは思ってなかった。」
「あれ、あたしラディオに今日の昼のこと話たったけ」
「お前のことなら対外分かる」
「ふぅん」
ユーリはとんとん、とんとん、を繰り返しながらラディオの方をみやずに答えた。ジャスラはラディオの表情が非常によく見えた。それがだんだんと冷たくなってきているところが。
「ユ、ユーリ、もういい、もういい!大丈夫。あとは自分でもなんとか出来る!!!」
「あぁん?でもまだ汚れが、」
「ラディオ!ここ座れ!!俺は他のとこ行くから!よし、じゃあな二人とも!!あでゅー!」
「あ、こらおい!…………ったく、なんなんだアイツ」
ユーリは膝を払うと立ち上がった。そしてジャスラのいたところに座るラディオをじとっと見つめる。もくもくと食べ始めたラディオに決まり悪げに頭を掻いてから唇を尖らせていった。
「……そんなんじゃねぇよ」
「何が?」
「っつ、本当にお前って性格わりぃな!」
「あんまり言われないな」
ユーリは席に勢いよく座るとお昼の続きを始めた。このあと、勢いがよすぎて再びシャツにシミを飛ばし、ラディオにとんとんされる下りがあるのだが、今は二人向かい合ったまま食事をしていた。
昼下がりの事である。
END




