書いてみた4 (レオ×アイリ)
BL、Rあり。
書いてみた4
目の前で起きていることが理解できていなかった。茂みの隙間から見える光景に、ただ、呆然と、していた。
あの事件が終結した後、俺はアイリに好きだと言った。べつに吊り橋効果とかそういうのじゃない。ただ、前から……もっと言えば入学当初からだと思う。最初は、守ってやりたい小動物的な存在だった。だけど、それから密に付き合うようになって、それが独占欲に変わっていったのだ。
誰かに奪われる前に。
常にそばにいて、周りを牽制して。ようやっとここまで辿り着いたのだが、受けた答えというのが。
『えっと、レオ?怒んないでね。』
そっと、アイリの手が俺の手に重なり持ち上がる。それが胸元まで上がっていき、心拍数が上昇する。何を、と言葉を紡ぐ前に、アイリがぺたりと胸に俺の手を当てた。
心臓が大きく音を立てた。それを最後に、本当に止まってしまったかのような静寂が体を包んだ。そして、違和感に、気がつく。
『“ぼく“、男なの』
そっと紡がれたその言葉の意味を理解するのに時間がかかった。
確かに、平たくて固かった。思考が停止する。目は、アイリの腰元を確認する。スカートから伸びる足が白かった。すり、と太ももを擦らせているの見れば、女そのものだったが、固い肉付きの胸がそれを否定した。
『ごめん』
アイリが少し湿った声を出して去っていったのに、俺は追えなかった。
その後ろ姿を見送った。
それから考えてみた。考えて考えて考えて。
アイリを男として見てみた。
その、ある日のことだった。
なんだろ、この状況。
俺が身動ぎをすると、アイリがしっ、と鋭く制してくる。暗い棺兼掃除用具入れの中で。
外から制裁会のやつらの声がするので大体の察しはつく。多分、追われているのだろう。
仕方ないなぁ、と苦笑いしてから、はたと気がついた。
今、俺はどういう体勢だ?
廊下で会って話しかけようとしたら、そのまま険しい表情をしたアイリにここに押し込まれた。向かい合って、暗い中、ほんの少しの隙間からもれる光でなんとか目が慣れてきた。うわ、と心の中の声が漏れそうになった。アイリは入り口の方の、気配を探っている。声が聞こえてくるといっそう体をこちらに寄せてくる。そこはもう俺の体しかなくて。つまり、アイリは体をぐいぐいと押し付けてきているのだ。
胸が擦りあっている。男だとわかっていても、自分よりは断然柔らかさのある胸。
足元にあるバケツにのせた片方の足にアイリが乗っている。俺の足は、今アイリの太ももにはさまれているのだ。そして、その付け根にあるそのものの存在。改めて男なんだと実感していた。だけど、そんな部分を押し付けられているのに全く不愉快に感じなかった。むしろ、太ももにくるその暖かさが興奮を誘ってくる。
アイリは外に気をとられていてその事に気がついていない。いたずらをしてみたくなって、 自然を装って大きく身動ぎしてみた。シャツが擦れるように、足を少し持上げてその部分を刺激するように。
「ちょっと、レオ静かにして」
鈍感なのか、必死さ故なのかアイリは俺の意図に気がついていない。それをわかってか、体を支えながらもう一度同じように身動ぎする。ごそ、と物音が聞こえるか聞こえないかくらい。
「いい加減に、」
「だってさ、アイリ。わかってる?」
俺は言葉を遮るように耳元にまで唇をおとす。ふ、と息を少し吹き込んでやると、肩をすくませた。は、と息を飲む声がしたのは、この状況に気付いたからなのだろう。遅いよ、と心でその無防備さに苦笑しながらアイリの身体に与える刺激を止めはしない。
「たまんないんだけど」
「うそ、い、ひゃぁ?!」
ごり、と音がするんじゃないかってくらい太ももの揺れを力強いものにしていく。びくびく、と身体を弾ませて、漏れ出てくる声を手で塞いでいた。
「ん、んっぁ、やめ、あゃ、やめっ」
手を俺の身体に当てて押し退けて逃げようとするから背中に手をやり、逃げられないように引き寄せた。片方の手を、アイリの顔に沿わせこちらに向かせた。手で口を塞いだままされるがままに俺を見てくる。明るくないのが惜しいくらいだった。制服のスカートが捲れて、白い太ももがさらに露出する。抱き締めるように身体をくっつかせているから触りづらいが、ブラがないので直接くる平らな胸の突起が主張をはじめていた。
俺の肩に滑っていった力のない手をさらい、指を絡ませる。もう立てないのだろうか。身体をすっかり此方に預けていた。
「大丈夫?」
「あ、んんん!」
「立てないんだ?」
「はなし、て、」
「だってもうすっかり俺に乗ってるもんね?」
「うそ、も、だめ」
「あ、だまって………来たみたい」
ざわざわと再び外が騒がしくなった。アイリの身体がそれに反応して強ばる。俺はにやりと笑い、黙ってなくちゃねと囁きかけるとアイリの腰をつかんだ。
「や、ぁっあ」
腰を浮かせて少し後ろに滑らせる。それだけでも敏感な裏筋が擦れるのだろう、びくびくと面白いくらいに感じていた。膝の固いところに、乗せて我ながら意地の悪い笑みを浮かべてしまう。口元の手を噛みながら上目遣いで見上げてくるアイリに今まで身体を繋げていたどの女の子よりもぞくぞくを感じながら今すぐここで繋がりたい気持ちを抑える。
声が去るまで動かないでいたら、もじりと小さくアイリが動く気配がした。彼は今、つま先立ちで俺の足に跨がっている状態だ。すこしでも身体を休めると、その場所に俺の膝が当たってしまう。それをわかっていながら意地悪な質問をしてしまう。
「どうしたの?足りない?」
「んんっ」
「なら動かないで。バラしたいの?。俺をこんなとこに連れ込んでこーんなことして。」
膝を少し持ち上げてみる。こり、とした感触。びくんと大きく跳ねる。
「あっんんん!」
「感じちゃってんだ。ふふ、今の声、聞こえたかもしれないな?ほら、ここだってこんなに主張して。アイリってちょっと変態なんじゃない?」
シャツの上から指で胸の飾りをくに、と圧される。
「ば、かぁ、そんな、とこ………っ」
外の声が俄に大きくなった。ここのそばに近付いて来ているのだろう。はっ、と口を覆って外に目をやる。こんな状況、見られたヤバイだろうなぁ。
一見女のアイリが男の膝に乗って、明らかに情事の顔をしている。スカートは捲れてしまっているし、俺は何時のまにやらシャツをはだけさせて直接そこを刺激している。腰に添えられた手に、重なったアイリの手はまるでもっととねだるようだし、妖しくくねらせた背筋もそれだけでイヤらしい。漏れる息は喘ぎを含んでいるし、熱い。細い光の中垣間見える噛み締めた唇は唾液で艶やかだ。
こんなの、絶対見せたくない。誰にも。
押し寄せてきた独占欲。
なんだ、俺もうアイリしか見えてない。男だっていい。だからなんだ。こんなに俺の愛撫に感じて耐えている彼がとてつもなくかわいくて。男だからとか、そんなのもうどうだっていい。今すぐ俺のものにしたい。
次第に外の声が聞こえなくなって、今度は完全に気配がなくなった。諦めたのだろう。
アイリが、ふっと息をついたのを見て、刺激を再開させる。
「……っひゃ!も、だめっ、れお、やめてあ、あんっ」
腰を抱えて、俺の足に押さえつけてくねらせる。敏感な場所が足と自分の腹に押されている。胸の飾りを潰すように押しながら爪をたてたり、やさしく撫でてみたりする。両方からの愛撫で絶頂が近いのだろう、声の遠慮がなくなってきて、惜しげもなく甘い喘ぎを俺の耳に撒き散らす。それを聞いてまた自分も興奮が高まってくる。
喉を反らして、空気を求めるように息をする。その首に噛みついた。歯形を残すように、強く、やさしく。俺のものだと。
と、同時にすっかり感じすぎて濡れそぼったスカートの中の存在を求め、手のひらに包み込んだ。そして、形を確かめるように上から下までゆっくりと撫でてみた。
「あぁあぁぁっ、うそ、っあん!だめ、やめて、きちゃ、イっちゃぅ」
「好きだ、アイリ」
そうささやくと、手の愛撫を一層速めた。濡れたおとが確実に二人の耳に響く。こんなに、感じて。
「ぁあああっ!」
びくんと、ひときわ激しく跳ねたあと、アイリはくったりと俺にもたれ掛かってきた。時折余韻が残っているのか甘い吐息を漏らしながら大きく肩で息をしている。俺はアイリを抱えると、外にでた。思った以上に興奮してしまっていたらしい、外の空気が、新鮮で涼しかった。
まぁ、あんなことをしてたんだから当たり前か。
ずっとアイリと触れ合っていた場所が、アイリのスカートの中がぐじゅりと濡れた音を発する。
「………ばか、ばかレオ………こんなことして本当、ばかなんじゃない」
「お前がさせたんだよ」
「だから、アイリは男、……」
ずっと無理な体勢で事を致していたのだ。流石に疲労と緊張が相まってしまったのだろうアイリは寝息を立てていた。
「あ、ばか。これからなのに」
これからちゃんと告白してちゃんと愛してやろうと思ったのに。
寝息をたてるアイリをみて胸元のシャツをきちんと戻す。あぁ、今からアイリを部屋に戻してやらないと。それから、はやくこの昂りをなんとか発散させてやんないと。
「まず、ちゃんと拭ってやってから、服を着替えさせて………俺、我慢出来んのかな」
ぶつぶつ呟きながら部屋に向かう。ぐっしょりと濡れたズボンをいとおしく感じながら。明日は朝イチに会いに行こう。どうせ、早くは起きられないだろうから起こしに。それと、アイリがいいんだと伝えにいこう。心が軽くなる。ここ数日悩んでいたのが馬鹿みたいだ。こんな簡単なことに早く気付けばよかった。
そして、一緒に朝ごはんを食べよう。
「なぁ、レオ」
廊下で、声をかけられた。次は野外演習だから早く森へ向かわないといけないのだが、仕方ない振り返った。どうせまた私闘の申し込みだろうと思っていたのだが。
「アイリと付き合ってるんだって?」
「……だから、なんだ」
思ってもいない方向からの問いだったので、反応が遅れた。声をかけてきたのはT級のイトマ。女と見れば大体の子には手を出していると専らの噂の男だ。顔は男の俺からみてもとてもいい。少しワイルド系とでも言うのだろうか。細身の体は無駄なくバランスよく肉付きがよく、さぞ脱いだらスゴいんだろうな、と下世話なことを日頃見かけたときは思っていたのだが、今は少し悪い予感がした。
「野外演習だろ、早くいくぞ」
「お前もアイツともうヤったの?」
耳をすり抜けていこうとした言葉を無理矢理捕まえて、反芻する。
「アイツ、イイだろ?俺が仕込んだんだ」
ごくりと、のどがなった。隣にならんで森までの距離を共にしてしまう。何て言ったんだ、こいつ?アイリがこんなやつと、
「すっげぇ、だろ?」
唇に親指の腹を当てて少し噛むしぐさ。女の子が抱かれたがるのも分かる気がする、なんて頭のどこがが別の事を考える。
「レオって男でもイケたんだな!最初はさすがの俺でも男だって気が付かなかったよ。お前だってそのクチだろ?だって、アイツ普通に可愛いし。脱がしてびっくりしたよ、本当。でも、アイツの顔ならイケてさ。思わずおもっきり仕込んじまったよ。まぁ、あとにも先にも男はアイツだけでいいんだけどね。たまに女飽きたらヤってたんだけど、すっかりインランになっちゃってさー。」
くすくす、と爽やかな笑顔で笑い飛ばすように言う。
「餞別に教えてやろうか?アイツが一番スキナトコロ。」
耳打ちをするように、口元に手をやる。
「アイツはさ………」
「それ以上しゃべったら、俺、あんたのこと吹っ飛ばしちゃうかもだからさ、黙ってくんない」
その時俺はいったいどんな顔をしていたのだろうか。青い顔をして黙りこんだイトマを無視して先に森に向かう。
この先に待ち受ける事を何も知らないままに。
To be continued