1-36 悪巧み3
アルムスの計画の全貌を聞いた二人はそれぞれに行動を開始していた。作戦決行は2週間後。アッシュは一度アゴルへと戻る事になり、ルーカスはギルド執務室で忙しく雑務に追われていた。今回の計画の主犯であるアルムスは他の有力な貴族への根回しや大手の商人に情報を流したりと忙しく動いていた。アルムスに不審な動きがあれば目を光らせているパウルも動かざるを得ない。屋敷を見張らせていた部下の話によれば、ギルド支部長とその関係者と思われる人物が屋敷を訪れていたと報告があった。この報告で何より気がかりなのがアルムスとギルド支部長の失われていた左腕が、翌日には元通りになっていた事だ。教会関係者にも話を聞いたが神官長は神の御使いが現れたなどと意味不明な話をしている始末で、シスターにも話を聞いてみたがアルムスと一緒に食事をした話しか出てこない。
「貴族の坊ちゃんにはのんびりしてろって言われたが、こりゃあのんびりし過ぎたか。どう考えても3人目はアッシュって奴じゃないのか?お前も見張ってたんなら声掛けしても良かったんじゃないかな?」
報告してきた衛士にパウルが詰め寄ると慌てた衛士はしどろもどろになりながらも報告をする。
「で、出てきたところで話を聞こうと思ったんですが屋敷からはギルド支部長しか出てきませんでした。アッシュと思われる男はまだ屋敷に潜伏しているものと思われます。」
「ほぅ、それは確実なのか?貴族の家に捜索に入って何もありませんでした、じゃあ俺たち全員の首が飛ぶぞ。その話は阿保に持って行っても大丈夫なのか?まぁ念の為に俺が1人で一度確認してくる。一応屋敷の外を衛士で固めておけ。」
パウルがアルムスの屋敷に向かう準備をしている時にアルトリウスの使者が訪れ招集がかけられた。嫌な予感に気分が沈むが放置する事も出来ずアルトリウスの待つ部屋へと急いだ。使者が扉を開けるなりパウルに向かってアルトリウスが投げたグラスが飛んでくる。パウルが首を捻って投げつけられたグラスを躱すとアルトリウスの顔がみるみる赤く染まった。躱したことで怒りの炎に油を注いでしまったようだが黙って酒まみれにされる謂れもない。
「この度はどういったご用件でしょうか?」
パウルがしれっと一礼をしてアルトリウスに問いかける。アルトリウスは怒りに震えているが、それでも文句だけは淀みなく口から出てくるようだ。
「お前らは無能か?ローギッド子爵、ギルド長とアッシュの3人が仲良く酒場で酒を飲んでいたらしいが何か申し開きはあるか?」
「そのような話を一体何処からお聞きになったのですか?報奨金目当ての密告でございましょうが真偽を確かめませんとアルトリウス様に報告できません。その件につきましては現在調査中でございます。」
「ええいっ温いわ!疑わしきものはすべて引っ捕らえろ!そして俺の前に連れて来い!ローギッド家が庇い立てしようものなら奴も同罪だ。さっさと動け無能集団め!!」
「仰せのままに。」
パウルは何を言っても聞き入れそうにないアルトリウスに嫌気を覚えながら踵を返して部屋を後にした。アルムスにしてもアッシュとの関係を疑われているのを知りつつ軽率な行動をとっているのなら馬鹿か罠のどちらかしかない。パウルから見たアルムスの印象は確実に後者であると警鐘を鳴らしているが、罠と知りつつも相手の策に乗る事しかできない自分の立場を呪いたくなっていた。




