アイドルと魔術師
その日も事務所にいたのは『こすもおーら』の4人とマネージャーと社長の6人だった。
「何故、こちらに…?」
驚いた顔の社長は男が誰か知っているようだった。
「突然、失礼します。こちらのアイドルの子について妙な話を聞いたもので。」
男はマネージャーの前に歩いていき、名刺を差し出した。
「えっ?!いちっ…?!なっ、何故…?」
渡された名刺を見たマネージャーも驚いて男の顔を見た。
『誰だろう?』
大人たちの驚いている様子を樹理奈たちは呆然と眺めていた。
「で、その不可解なストーカー被害にあっているという子は?」
男は樹理奈たちの方を見た。
「わ、私…です。」
留美は恐る恐る小さく手を挙げた。
「このことを知っているのは?」
男が社長に聞いた。
「ここにいる…6人と関係者数人ですが。」
「そうですか。では、しばらくこのまま待機していて下さい。」
男はそう言って事務所を出ていってしまった。
「あの人、誰なんですか?」
樹理奈が社長とマネージャーに聞いた。
「あぁ、あの人は…」
マネージャーがそう言いかけたとき、事務所に今度は赤いポロシャツにデニム姿の女と制服を着た女子高生が入ってきた。
「それが、ルビーと野上さんだったの。」
樹理奈が勇太たちに言った。
勇太と海斗と貴司は驚いた。
「そのメールは金属中毒の仕業だったってこと?」
貴司が聞いた。
「黒幕はそうだったんだけど、実際は元 魔術修行をしていた人が犯人だったの。」
あきが言った。
「えっ?!どういうこと?」
勇太が聞いた。
「前に言ったことあるけど、」
修行は半年から1年くらいで、その期間 までに上級魔術師入りしなきゃいけない。もし、なれなかったら魔術修行中に得た魔力が奪われて記憶も消される、扉が開いた直後にあきに教えてもらったことだった。
「つまり、上級魔術師になれなかった人の犯行だったということか?でも魔力を奪われているのに?」
海斗が聞いた。
「魔力も魔力核も記憶も消されてるけど、金属中毒のニッケルが擬似・魔力核を開発して、元 魔術修行をしていた人に埋め込んで魔力がどのくらい復活するかとか実験していたらしいの。」
ニッケルは金属中毒の中でもマッドサイエンティストで、擬似・魔力核に負の感情を増強させる術を施していたため、たまたま『こすもおーら』のRumiのファンだった人間がストーキングと化したということだった。
「それで、結局どう解決させたの?」
貴司が聞いた。
留美の携帯電話にストーカーの精神がとりついていて、ルビーが引き剥がし、ストーカーを突き止めて、クォーツとアメジストがストーカーの擬似・魔力核を取り出して、魔力と記憶を消した。
「ルビーが原田さんたちに忘却術をかけて、魔術に関する記憶を消したはずなんだけど…」
あきが樹理奈を見た。
「原田さんには忘却術が効いていなかった。私もはじめ、大学で原田さんを見たときは驚いたけど、リチウムだった雅子さんの忘却術も原田さんには効いてなかったからこれが原田さんの特殊能力ね。」