声
「おい、どうなってる?!」
オパールたちも『光と闇の空間』に駆けつけた。
「見ての通りだ。俺たちは加勢するなだと。魔力の補充すらもダメだそうだ。」
モリオンが言った。
「見ての通りって安倍晴明1人に苦戦中ってことかよ。」
ターコイズが言った。
「かなりまずいかも。予想以上の強さよ。あきが攻撃を受けてしまったわ。」
アクアマリンが言った。
「勇太…」
ペリドットは心配そうに晴明を見た。
「松下君、奥の方から大きな力を感じる…」
「大きな力?」
海斗と貴司は目をつぶりながら話していた。
「うん。もしかしたら中島君はそこにいるかも。行ってみよう。」
貴司は深呼吸した。
「大林、もしかして魔力…」
「まだ大丈夫だから。僕もモリオンから魔力量の底上げの修行を受けたんだ。まだ大丈夫…」
貴司は少し疲れている声だった。
「…ありがとう。」
海斗が言った。
立ち上がったあきは晴明をにらんだ。
晴明の足元から氷の槍が10本程生えて、晴明の体の前後左右を鋭く刺した。
「晴明様!」
ジルコンは悲鳴を上げた。
「ほぉ…やればできるではないか。」
晴明はニヤリと笑った。氷は消えてボロボロになった体も瞬く間に元に戻った。
「野上さん…」
樹理奈は心配そうにあきを見た。
あきは樹理奈の方に振り返って微笑した。
「大丈夫。原田さんは魔力を温存しておいて。大林君、無理してるから。」
樹理奈は頷いた。
「あの女、わしが思った以上に攻撃が効いているな。もしや…」
精神の中の晴明が独り言を言っていた。
「野上さん…俺は…どうしたら…いつも助けてもらってばっかりなのに…」
勇太はうなだれていた。
みんなを助けたい、力になりたい、何とかしたい、そんな気持ちがあるのに自分は精神の中で何もできないことに勇太は歯がゆい思いをしていた時だった。
「勇太ー!」
海斗の声が聞こえた。
「海斗…?やっぱりさっきのも海斗の声だったんだ!海斗ー!」
勇太も叫んだ。
「でも何で?俺の精神の中に海斗もいるんだ?」
「そなたを外と中から救出する作戦だからだ。」
「外と中?」
晴明が説明した。
「わしの憑依を解くためにそなたの魔力を減らし、精神にもぐり込んでそなたの意識を戻す。各々ができうる方法でそなたを救出しようとしているのだ。」
「大林!」
「聞こえた!中島君だ!あの大きな球体の中だ!」
海斗の目の前には大きな球体が浮かんでいた。
「魔力の塊みたいだ。ここに中島君は閉じ込められている。でも、意識はあるんだ…松下君の声は届いていたんだ!」
貴司は喜んだ。
「貴司、ここから省エネモードでいけ。いざ、目標のヤツを引き上げるときに魔力切れになったら元も子もないぞ。」
モリオンは貴司に言った。
「…分かった。ありがとう、モリオン。」
貴司たちの会話を聞き、
「晴明様、俺たちに何かお手伝いできることは…?」
とクォーツが言った。さすがにクォーツたちも少し焦っているようだった。
「ない。」
晴明は余裕の表情で答えた。