安倍晴明の復活
「魔術界も2つに割れてるってことかしら?」
走りながら樹理奈が言った。
「そうみたいね。」
あきが答えた。
「もともとオパールはクォーツのこと気に入らないみたいだったから不思議ではないけど。」
海斗も言った。貴司は悩んでいるような難しい顔をしていた。
「…さっきオパールとペリドットと一緒にいた人なんだけど、どっかで見たことあるような気がする…」
「ターコイズだろ?twelvesだから扉が開いたときにいたからじゃないか?アクアと仲良いから修行の時にもあったことあるけど。」
海斗が貴司に言ったが、
「それ以前に会ってるような気がするんだけど思い出せないんだ…」
と1人でうなっていた。
トンネルの出口が見えてきた。
「このまま走って。近いわ! 」
あきが言った。
「何か…押しつぶされそうな力を感じるわ…」
樹理奈か言った。
「これが安倍晴明の力?じゃあ中島君は…?」
貴司は不安そうに言った。
「ターコイズが儀式はとっくに始まってるって言ってたから、憑依されてしまったのかも。」
あきの言葉に海斗は憤りを隠せないでいた。
「だから私たちを先に行かせたのよ。中島君の憑依を解くのに1番仲の良い松下君が鍵になるから。冷静になって。」
あきが海斗に言った。海斗は拳を固く握った。
「出口だ!」
土のトンネルを抜けると真っ白い部屋に立っていた。
「ここは…属性判定した部屋…?」
貴司が言った。後ろを振り向くと土のトンネルはなく、白い壁があるだけだった。
「クォーツたちの足止めは失敗だったのね。」
ルビーが4人の前に立っていた。
ルビーの後ろにサファイアとエメラルドもいた。
「勇太はどうした?!」
海斗が怒鳴り声を上げた。
「残念だけど、儀式は成功よ。晴明様は復活されたわ!」
ルビーたちの後ろからとてもうれしそうにジルコンも現れた。
よく見るとジルコンの後ろに五芒星が描かれた魔法陣の上に勇太がうつ向いて立っていた。
「勇太…」
海斗が駆け寄ろうとしたが、
「ダメ、もう中島君じゃない。」
とあきが制止した。
勇太はゆっくり顔を上げた。
「お目覚めですか。晴明様。」
ルビーたちは腰を下ろしたり、頭を下げた。
ジルコンは顔を両手で覆って、うれし泣きをしていた。
「…そなたたちはまだ存命であったか。」
勇太が言った。
海斗たちはショックで体が凍りついたように動けなかった。
「お久しゅうございます。」
サファイアが頭を下げたまま言った。
「晴明様…」
ジルコンは肩を震わせて泣いていた。
「そなたもいたか。」
勇太はジルコンの方を見た。
「片割れとはまた喧嘩したか。」
「妹は私たちを裏切りましたわ!晴明様の恩を忘れて!」
泣いていたジルコンが突然怒り出した。
そんな様子を勇太は冷静に見ていた。
「相変わらず、生前は仲良くしろとあれほど申したのに。」
勇太がニヤリと笑った。
「勇太…」
海斗が呟いた。
「本当に中島君じゃないみたいだ…」
貴司も言った。
「中島君の魔力を媒介にして安倍晴明の魂を憑依している。でも、中島君の魔力を削っても憑依が解けるかどうか…」
「どういうこと?」
あきの言葉に樹理奈が聞いた。
「安倍晴明自身の魔力が厄介になるの。正直、未知数だからどう攻めるかまだ決めかねてるの。」
あきが言った。
「勇太!」
海斗が叫んだ。勇太はゆっくりと振り向いた。
いつもの勇太の表情とは違い、海斗たちに向けて笑顔はなかった。
海斗は一瞬、ショックを受けたが、
「勇太を返してくれ!敵を倒すまでお前らに協力する!だから、勇太をもとに戻してくれ!」
と叫んだ。
「ほぅ…この体の少年のことか…」
勇太は冷静に言った。
「黙っとれ!石ころのガキが!」
ジルコンが海斗に向けて攻撃しようと手を広げた。
「待て。」
勇太がジルコンを制止して、ニヤリと笑った。