助っ人
「お前ら、無謀すぎるぞ!」
オパールが海斗たちの方を振り向いて言った。
「向こうにはSクラス以上の魔術師がうじゃうじゃいるんだぞ!ダイヤ、ジルコン、ルビー、サファイア、エメラルド…お前らが束になっても敵う相手ではない!」
「もっと俺たちを頼ってくれてよかったんだぞ。」
ペリドットも言った。
「連絡先知らないのにどうやって?」
あきが冷静に聞いた。
「…それはそうとモリオンの話だと、どの道勇太を起こすのにお前らが必要だって話だ。」
「勇太を起こす?」
海斗がオパールに聞いた。
「安倍晴明に憑依されている間、勇太の意識は眠った状態にされる。だから、身近な人間の声や存在がいると憑依を解きやすくできるって。」
「モリオンも味方なの?!」
貴司が聞いた。
「あぁ。お前に新型の『罠発見器』を渡したって言ってたけど。」
貴司はオパールに黒い箱を見せた。
「それだ。『軽量化とより少ない魔力で発動できるようにした』って。モリオンとアクアマリンは勇太のいる『光と闇の空間』に向かってる。他のjewelsにも声かけたから急いで勇太の所に行け。」
オパールはクォーツとアメジストの方に手を向けた。
クォーツたちめがけて大きな土のトンネルが伸びていった。
「ちっ。」
クォーツたちは土のトンネルを避けた。
「ここを通っていけ。」
「ありがとう。」
海斗たちが土のトンネルの中に入っていこうとした。
「おい、元バカ弟子!」
オパールが海斗を呼んだ。
「俺との修行でお前が言ったこと覚えているか?」
オパールが海斗を真剣な顔で見ていた。
「…もちろんだ。そうでなくても助けに行く。ありがとな。」
そう言って海斗は走り出した。
あき、貴司、樹理奈も走って海斗についていった。
「あいつ、俺が『お前にとって守りたいものって何だ?』て聞いたとき、何て答えたと思う?」
海斗たちが見えなくなってオパールが言った。
「『例え、魔術修行で生活をひっかき回されたとしても、勇太との友達関係は壊されたくない』ってさ。普通、家族とか恋人って答えるところなのにな。」
「顔以上に男前じゃん。」
ターコイズが言った。
「だから海斗は特に上達が早かったのかもな。」
ペリドットも言った。
「さて、お前ら兄妹たち、もう隠し事なしだぜ。」
オパールが言った。
「ちゃんと今回のことを説明しろ!それとも2対3で戦うか?」
「ってか、クォーツとアメジストって兄妹だったのか?!何で隠してた?」
ターコイズがオパールに聞いた。
「あぁ、それはまたじっくり聞くとして…」
オパールはクォーツをにらんだ。
その頃、星空を眺めていた勇太は月が大きくなっているのに気がついた。
「違う…月が大きくなっているんじゃない…落ちてきてる!」
勇太は慌てて逃げようと走り出したが、月はどんどん勇太に近づいて来た。
「うわっ!」
振り向くともう手の届く近さまで月が迫っていた。
勇太は走りながらふと星空を見た。
『勇太。お前はわしにとってほら、あの小さい星なんだよ。小さくてもキレイに光っている星なんだよ。勇太ならいつか月や太陽みたいにでっかくてもっともっと光る存在になれるよ。』
走りながらなぜか祖父の言葉を思い出していた。
『じいちゃん、俺、月や太陽になる前に月に押しつぶされそうだよ…』
月は強い光を放った。
勇太は走りながら光に飲まれていった。