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就活

「よし、これでいいかな…」

勇太は鏡の前でネクタイを整えながら呟いた。

今朝はリクルートスーツを来て大学に向かった。

午後から企業説明会に行くためだった。

「おはよう、海斗。」

研究室のある校舎の前で海斗に会った。

「おはよう。勇太、スーツ似合うじゃん。」

「そうでもないよ。ネクタイ、おかしくない?」

「形悪くないけど、行く前に結び直した方が楽だぞ。ネクタイ絞めたままじゃ研究しづらくないか?」

「そうだな。じゃあ外しとこ。」

そんな会話をしながら研究室について白衣を着て研究し始めた。

「おはよう。」

樹理奈も研究室に入ってきた。

「おはよう。原田も就活か?」

海斗が聞いた。

「『アイ薬局』の説明会行こうと思って。」

樹理奈はスーツ姿も似合っていた。

「あっ、俺も今日行くつもり。」

勇太が言った。

「じゃあ、一緒に行かない?」

「うん。」

勇太は樹理奈と企業説明会に行くことになった。

魔術修行の時、スーツ姿の勇太を見ても何も言わなかった。

「光の精度が上がったな。」

とだけ誉めた。

昼ご飯を食べて1時間ほど研究した後、樹理奈と一緒に電車に乗って企業説明会の会場に入った。

「ねぇ…あの子、もしかして…」

「Juriじゃない?!」

一薬(いちやく)(一條学園大学薬学部)に行ったんだよね?!」

『そうだった…原田さん、元アイドルだ…』

樹理奈の横の席に座っていた勇太は自分のことを言われているわけではなかったが恥ずかしい気持ちになった。

「あの…Juri…さんですよね?」

女学生が樹理奈の周りに集まってきた。

「うん。」

樹理奈は笑顔で答えた。

「うわー!『こすもおーら』のファンです!握手して下さい!」

騒ぎを聞いた他の学生たちも集まってきた。

「私、もう『こすもおーら』じゃないし、普通の大学生だから。」

そう言って樹理奈は笑顔で手を振って握手を断っていた。

勇太は各席に配られていた資料を見ながら気にしていないふりをした。

「あの…隣の人と一緒に来てましたよね?彼氏ですか?」

「えっ?!」

勇太はいつ自分にふられるかヒヤヒヤしていたが、思わず赤面しそうになった。

「ううん。研究室一緒で、たまたま今日の説明会行くの被ったから一緒に来ただけなの。」

樹理奈は正直に否定した。樹理奈の周りはどんどん学生が増えてきた。

『ふぅ…やっぱり原田さん人気あったんだな…兄貴もファンだったみたいだもんな…』

間もなく説明会が始まった。勇太は真剣に担当者の話を聞いていた。

説明会が終わって樹理奈と大学に戻るために電車に乗っている時だった。

「さっきはゴメンね。」

樹理奈が謝ってきた。

「中島君に迷惑かけちゃったね。」

「えっ?!…あぁ、気にしてないよ。」

「中島君は『アイ薬局』の面接受けるの?」

樹理奈が聞いてきた。

「うん。本命ではないんだけど内定だけはもらっとこうかなって思って。」

「本命は?」

「まだ決めてないけど、調剤併設ドラッグストアとか病院とかにも興味あるからとりあえず色々行ってみようと思ってる。」

「そっか。私もまだ本命決めてないのよね。私も面接受けようと思ってるの。」

また樹理奈と面接も一緒に行くことになった。

『今度は堂々としてよう。原田さんに悪いもんな。』

勇太はそう思った。

「履歴書の『自分の長所』の欄、何て書こうか…」

勇太はふとそんなことを呟いた。

「中島君はみんなと仲良くなれるところがスゴいと思うわ。」

樹理奈が言った。意外なことを言われて勇太は驚いた。

「赤星君みたいな派手な人から大林君みたいな大人しい人まで仲良いのって中島君の長所じゃない?」

勇太はそんなこと思っても見なかった。

「変な先入観を持って人と接していないんだと思う。私は中島君に『元芸能人』扱いされたことないし、むしろうれしかった。中島君は基本、松下君と一緒にいるけど、中島君の周りに赤星君とかが集まっているイメージはあるかも。」

勇太は素直にうれしかった。

「長所って自分じゃ分からないもんね。私は週刊誌にあることないこと…ほとんどないことだったけどいっぱい書かれたわ。」

樹理奈は笑いながら言った。樹理奈はでっち上げの熱愛報道で売名に利用されたことがあった。

『…色々大変だったんだろうな。だから、こんな冷静に分析できるんだろうな。俺とは経験値が違うな。 』

「松下君にも聞いてみたら?松下君なら的確に答えてくれるかも。」

「それはちょっと…」

さすがに、海斗に『俺の長所って何?』なんて聞くのは恥ずかしかった。

『お前に一番足りないのは自信だ。今のお前は決して他のヤツらよりも劣ってはいないぞ。』

『自信持てよ』

勇太はペリドットが言ってくれた言葉を思い出した。


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