上級魔術師(ファセット)
1月末から2月初めまで試験があり、3回生最後の試験が終了した。
「やっと終わった!」
勇太は今回は自信があった。
『『不可』はないだろうな。今回は半分以上『優 』がつく自信あるぞ!やっぱり海斗に教えてもらって良かった!』
成績は2月末に結果が自宅に郵送される。成績の評価は『優』が1番良く、続いて『良』、『可』があり、『不可』はいわゆる欠点で再試験を受けなければならない。
勇太は海斗と一緒に昼ご飯を食べようと海斗の席に向かおうとした。
「ん?!」
視線を感じて振り向いたが誰も勇太のことを見ていなかった。
『気のせいか…』
気にせず歩き出そうとするとあきが勇太の方に歩いてきた。
あきは勇太の前で止まらずすれ違い様に、
「誰かが見ていたわ。恐らく敵…」
と小声で言った。
勇太は立ち止まってしまった。
『そうだ…また修行が始まるんだ…』
勇太が立ち尽くしていると、
「どうした?」
海斗が勇太のところへやって来た。
「あっ、なんでもない。お疲れ、海斗。飯行こう。」
海斗と学食で昼ご飯を食べて、研究室へ向かった。
今日から春休みだが、3月まで毎日研究室で研究して、12月の卒論発表に備えなければならない。
「3月までに研究終わらせないとな。」
海斗とそんな話をしながら研究室のドアを開けた。
すると、研究室の中は真っ白で何もなく、
「あれ、まるで…『扉の空間』みたいだ…」
と勇太が呟いた。
「正解よ。全員そろったわね。」
勇太と海斗は声のする方へ振り向いた。
勇太たちが入ってきた研究室のドアが消えていて、代わりにルビーが立っていた。ルビーの後ろにはあき、貴司、樹理奈も立っていた。
「『扉の空間』に来たのは久しぶりね。まずは、上級魔術師に昇進おめでとう。」
ルビーはニッコリ笑って言った。
「4人全員が上級魔術師になれるなんてスゴいわ。今回はみんな優秀ね。今日からまた修行を再開するけど属性判定もしたし、何人か師匠を変えてるわ。」
すると、4人の魔術師が現れた。
「樹理奈と貴司はエメラルドとパールのままね。でも、貴司にはもう1人ついてもらうわ。海斗はアクアマリン、勇太はクォーツね。」
「よろしくー!」
アクアマリンは海斗に軽く手を振った。ショートカットでボーイッシュな雰囲気のあるアクアマリンは、
『海斗と気が合いそうだな。』
と勇太は思っていた。
勇太はクォーツをチラリと見た。クォーツは勇太をギロっと睨んでいた。
勇太はビックリしたが、
『一応、師匠だもんな…』
そう思ってクォーツに向かってお辞儀した。
「あの…もう1人って?」
貴司がルビーに聞いた。
「モリオンっていうんだけど、また明日以降に会えると思うわ。」
「今日はこれで終わりだ。また明日のいつもの時間にここに来てもらう。」
クォーツがそう言うと勇太たちは研究室のドアの前に戻ってきた。
「あら、みんなおそろいで。」
ちょうど、ドアが開いて助手が出てきた。
「今日からみっちり研究がんばってね。」
助手がニッコリ笑って言った。
『今日から研究がんばらないと。でも明日からクォーツか…』
勇太はため息をついた。