補助系
それから毎日、勇太はペリドットと略式術式と魔法陣の修行をしていた。
「攻撃と防御は出来るようになってきたな。」
ペリドットが言った。
「次は補助系の『呪い』と『治癒』でもやってみるか。」
「呪い?!」
勇太が聞いた。
「相手を麻痺させたり、記憶を消したり、脳にかける術が多いな。上手い魔術師だとマインドコントロールしたりするのが『呪い』だ。味方の攻撃や防御を一時的に高めるのも呪いに入ってるな。『治癒』は魔力核の修復と回復、傷の治癒だな。この2つは攻撃と防御とは違って努力よりもセンスが問われる術になるんだ。」
ペリドットは続けて言った。
「攻撃系が得意だが補助系が苦手だったり、その逆の魔術師も多いから苦手でも気にするな。むしろオールマイティーなヤツは本当に少ないな…俺の知っている限りでは…ダイヤ、クォーツ、サファイア、ジルコン…後、あきぐらいかな。」
「野上さんってスゴいんだ。」
勇太は感心しながら言った。
「魔術界ができて以来の逸材の1人とも言われているからな。よし、やってみるか。」
ペリドットに言われ、ペリドットが用意したうさぎの人形に向かって勇太も色々な呪いを試してみた。
「お前はそこそこいけるようだな。」
勇太のかけた呪いがうさぎの人形に効いているようだった。うさぎは床にゴロンと寝転がって動かないでいた。
「よし、休憩するか。」
ペリドットは座って勇太にチョコレートを差し出した。
勇太も座ってチョコレートを受け取った。
「ペリドットは何系が得意なの?」
チョコレートを食べながら勇太が聞いた。
「防御と補助系の治癒だな。俺は木属性魔術が得意だから治癒は自信があるな。」
ペリドットもチョコレートをほおばりながら言った。
「属性魔術によって得意の系統があるってこと?」
勇太が聞いた。
「そういうことだな。全員ではないけど、火属性は攻撃、土属性は防御が得意なヤツが多いな。水と木は治癒、光は攻撃と補助、無も補助全般ってとこだな。」
「へぇ…」
勇太はペリドットの話を真剣に聞いていた。
「俺は何になるんだろ?」
勇太が言った。
「さぁな。上級魔術師になったら属性判定して、属性魔術を本格的に修行していくんじゃないかな?それまで判らないからな。」
ペリドットが言った。
「あの…もう1つ聞いても良いかな?」
勇太が言った。
「いいぞ。休憩中だしな。」
ペリドットが頷いた。
「仲間が敵に堕ちたって言ってたよね?やっぱり、仲間と戦うのって辛い?」
ペリドットはしばらく黙っていた。
「俺と一緒に修行してたヤツはマグネシウムと名乗っていたな…オパールと戦って拘束して対闇魔術研究所にまだいるんじゃないかな…そら、辛かったさ。でも、仲間を闇魔術から助けたいって思いが強かったな。」
「そっか…」
勇太もしばらく黙ってしまった。
「俺、もし仲間が敵になったらって考えたけど、戦うの自信なかったんだ…でも、原田さんは雅子さんを助けようとしていた…」
「お前たちを誰1人とも闇魔術に堕ちさせやしないさ。だからこの前、お前と海斗に話したんだ。もし、誰かが闇魔術に堕ちたとしても、そいつを救ってやるのが仲間だろ?」
勇太は頷いた。
「じゃあ、修行再開するぞ。」
ペリドットが立ち上がって言った。