略式術式
「あっ、ペリドット…」
勇太は1限目の授業が終わっていつものように『扉の空間』に召喚された。ペリドットだけしかいないところを見ると、今日は海斗と一緒の修行ではないようだ。
「昨日、ルビーに怒られたから。あのくらい別に構わないのにな。」
「そっか、ゴメン…」
勇太は申し訳なさそうな顔をした。
「おいおい、俺もオパールも何とも思ってないぞ。それに、いずれは話すつもりだったしな。」
ペリドットは勇太の肩に手をポンと置いて言った。
「そういえば、『略式』について教えてなかったな。」
ペリドットは『基本的な魔法陣集』を開いた。
「この魔法陣の中に描かれている△とか▽とかのことだけど、教えてなかったのによくこの魔法陣を発動できたよな。昨日、オパールにそのこと言ったらビックリしてたぞ。」
『略式』とは『略式術式』のことで、文字ではなく、簡単な記号を用いた術式だとペリドットは勇太に説明した。
「威力はそのままでより早く簡単に術を発動できるようになった。ちなみに、考案者はオパールだ。」
「えぇ?!えぇー!」
勇太はかなり驚いた。指導してもらったことがあるとはいえ、勇太にとってオパールは以前に海斗から聞いた、樹理奈をナンパしたりとチャラいイメージがあったからだ。
「おいおい、驚きすぎだ。まぁ、オパールはあんな感じだから仕方ないか。ああ見えてオパールはかなり賢いし、魔術師としてもかなりの実力の持ち主なんだぞ。」
ペリドットが言った。
「海斗の才能をいち早く気づいたから、『自分よりもエメラルドが指導した方がアイツは伸びる 』って言ってエメラルドの弟子とはじめ合同で修行してたらしい。『かわいい女子と絡めて一石二鳥!』とか言ってたけどな。」
勇太はさらに驚いていた。
「確かに海斗はかなり有望だな。噂以上だった。」
ペリドットはそう言って勇太をチラッと見た。
「海斗に対して思った程、劣等感を感じていないようだな。」
そう言ってペリドットはニヤッと笑ったが、勇太は戸惑っていた。
「海斗は友達だし、褒められてうれしいというか…」
勇太は口ごもってしまったが、
「ほんと、俺なんかの友達なのが不思議だよ。」
と言った。
「それは、海斗も同じ気持ちなんじゃないか?」
ペリドットの言葉に勇太は驚いた。
「お前が海斗に勝てないところがあるって思っているのと同じで、海斗もお前に勝てないところがあるって思ってるはずだ。お前たちはお互いの良さをちゃんと認め合った友達だと俺は思うぜ。」
勇太はペリドットの言葉が心にジーンと染み込んでいくのを感じていた。
「海斗が…まさか…」
勇太は今までそんなこと思ったことがなかった。
「お前は今まで通りで良いんだよ。よし、『略式』の続きやろうぜ。オパールが書いたヤツも持ってきたからな。早く始めないとまたルビーに怒られるぞ。」
ペリドットは勇太の背中を軽く叩いて、ニヤリと笑った。
『…ありがとう、ペリドット。』
勇太は心の中でペリドットに感謝した。




