堕ちる条件
次の日の魔術修行はペリドットの指導だった。
「攻撃系の術は相手の魔力を相殺する、もしくは相手の魔力核にダメージを与える術だ。つまり、相手の体を傷つけない…」
「えっ?!傷つけないって?!」
海斗が驚いてペリドットの話を遮った。勇太も違和感を感じていた。
「仲間がやられていれも傷つけないって何かおかしくないか?」
海斗が言った。勇太も感じていてた違和感がこれだと分かった。
「魔術界の規則なんだよ。金属中毒には関係ないけどな。確かに、海斗の言う通りだ。仲間が重症を負わされたり殺されたりしてるのに敵を傷つけてはいけないなんておかしいかもな。このことは魔術界でももめているんだが。でもな、敵の半分以上はお前たちみたいに魔術修行してたヤツらでもあるんだ。リチウムもそうだっただろ?」
ペリドットが言った。勇太も海斗も黙って聞いていた。
「俺たちと一緒に修行してたヤツも金属中毒に堕ちてしまってるんだ。人間界で友達だったから正直、殺し合いはしたくないしな。だから、生きたまま拘束してヤツらの情報を引き出して、闇魔力核を取り出してやるのが目的なんだよ。」
オパールも言った。
「何で金属中毒に堕ちてしまったの?」
勇太が聞いた。
「向こうのボスが強制的に闇魔力核を入れて仲間にしてるんだ。ただ、闇魔力核を入れられているヤツの共通点が解ってきたからこっちも対策が取りやすくなってきたな。」
オパールが言った。
「中級魔術師以上、属性魔術を習得できていない、身近な人間を亡くしたっていうのが条件のようだな。」
『そっか、雅子さんは中級魔術師なった後でしかも好きな人を亡くしてる…』
勇太は雅子のことを思い出しながら納得していた。
「人を亡くすというのは悲しいことだからな。心に隙ができて、負の感情が生まれやすい。少し前は国内の情勢も不安定で戦争とかもあったから家族や恋人を亡くしたヤツが多かったから金属中毒に堕ちてしまったんだよな。最近はいない…んじゃないかな?」
勇太と海斗は真面目な顔で聞いていた。ふと、勇太はあることに気づいた。
「あの…jewelsで堕ちた人とかはいないってことかな?それだったらjewelsがいるこちらの方が有利なんじゃ…?」
勇太が聞いた。
「よく気づいたな!jewelsに入る条件の1つが属性魔術習得だからいないんだよ。だが向こうの闇属性魔術と金属魔術が厄介でな。」
ペリドットが言った。
「あなたたち!ちゃんと修行しなさい!」
突然ルビーが現れて言った。
「そう怒るなよ。いずれ話すことでもあったんだし。」
ペリドットがルビーに言った。
「まっ、今日は何もしてないが終わりにするか。」
オパールはそう言って勇太と海斗を講義室に帰した。
「喋りすぎよ。」
勇太と海斗がいなくなったあと、ルビーがペリドットとオパールに言った。
「少なくとも今回のメンバーではうちのバカ弟子をjewelsに入れるつもりなんだろ?尚更知っとかなきゃいけない話だぜ。何も修行だけじゃヤツらには勝てないぞ。」
オパールはルビーを睨んで言った。
「うちの勇太も侮られては困るな。」
ペリドットも得意気な顔で言った。
「アイツ面白いな。着眼点が他とは違うのが良いな。勇太もかなり伸びるんじゃないか!?」
オパールはペリドットに笑いながら言った。
「今回のメンバーは頭が良いヤツらなんだろ?変な誤魔化しはやめた方がいい。それに疑問を持たれたままだと修行もはかどらないからな。」
ペリドットの言葉にルビーはしばらく黙って、
「…明日から別々でやって。」
と言って消えてしまった。
「ルビーのヤツ、何か焦ってるな。あきを巻き込んだだけじゃ足りないのか?」
オパールが呟いた。
その日の晩、勇太はベッドに寝転がって考えていた。
『もし、友達が敵にまわって戦わなくちゃいけなくなったら…海斗、雅樹、研究室仲間、地元の友達…俺には無理だな…ペリドットやオパールは辛いんだろな…』
そう思っているうちにいつの間にか寝てしまった。
魔術界のある場所でルビー、サファイア、エメラルド、アメジスト、クォーツが集まっていた。
「今日で全員、中級魔術師になったわ。」
ルビーが言った。
「時間がない。属性判定するか。」
クォーツが言った。
「さぁ、今回で当たりがでるかしら?」
アメジストがニヤリと笑って言った。