雅子として
「闇魔力核を取り出したら大学に戻って来るの?」
樹理奈が雅子に聞いた。雅子は首を横に振って、
「また1から魔術修行しようと思うわ。jewelsを目指すつもりよ。」
と言った。
「それと、私は“紅玲夢”じゃなくて“吉村雅子”よ。雅子って呼んでよ。」
雅子はニッコリ笑って勇太と貴司の方を見た。そして、海斗をまっすぐ見た。
「海斗、私はあなたのこと本当に好きだった。でも今は諦めるわ。魔術修行に専念して海斗よりも先にjewels入りしてみせるわよ。」
海斗はやっと笑って見せた。
「おう。」
海斗の顔が緩んだので勇太も安心した。
「雅子としてとして…もう一度、みんなと付き合いたいの…もう大学の同級生ではないけど。」
雅子が言った。
「僕でいいなら…」
貴司が遠慮がちに言った。
「ありがとう…」
雅子は目を潤ませていた。雅子は勇太の方も見た。
「俺も…お願い…します…」
勇太は緊張しながら言った。
雅子は涙をこぼしていた。
「じゃあ、ロード。次の担当のムーンが来るまで頼んだわ。開店準備してこなきゃいけないのよ。」
ラリマーが言った。
「いいわよ。」
ロードクロサイトがそう言うとラリマーは消えてしまった。
「開店準備って? 」
貴司が聞いた。
「Jewelsの中には私みたいに人間界で働いている魔術師もいるのよ。」
ロードクロサイトが答えた。
「昼休憩、後10分で終わるな。」
時計を見ながら海斗が言った。
「じゃあ、あなたたちは先に人間界に戻って。」
ロードクロサイトが言った。
「じゃあね、雅子。」
樹理奈は名残惜しそうに雅子に手を振った。
「今日は来てくれてありがとう。あなたたちに伝えたいことがあるの。この前の戦いで金属中毒はあなたたちのことを完全にマークしているはず。気をつけてね。」
雅子が真剣な顔で言った。
勇太たちは薬学部の研究室のある校舎の屋上に一瞬で移動してきた。
あきが屋上から降りようと歩き出した。
「あの、野上さん。僕ら、マークされているんだよね?どう気をつけたらいいの?」
貴司があきに聞いた。
「大学にいる間は大丈夫よ。それに、ジルコンが見張りをつけてくれてるみたいだから。」
そう言ってあきは屋上を降りていった。
「…俺たちも研究室に行こうか。」
勇太は呆然と立っている海斗と樹理奈に声をかけた。
「また、頭がごちゃごちゃになってきそうだよ。」
貴司が言った。
「なんか、魔術界って想像してたところと違ってたな。」
海斗が言った。
「図書館があるってペリドットが言ってたよ。」
勇太が言った。
「どのみち、俺たちはもう逃げられないんだな。もう突き進むしかないか。」
海斗が言った。その言葉を聞いて勇太は今の現状が少し怖く感じた。
『あなたも観念してほしいわ。逃げれないの分かっているでしょ?』
勇太はルビーがあきに言った言葉を思い出した。
『俺も…敵と戦うのだろうか…?』