予兆
中間試験の20位までの順位が校舎の廊下に貼り出された。4科目総合600点満点だ。
“1位 野上あき(有機化学) 600点
2位 大林貴司(有機化学) 596点
2位 松下海斗(有機化学) 596点
…
18位 中島勇太(有機化学) 492点”
勇太は初めて20位以内に入っていた。
「おいおい、有機化学でトップ3占めてるぞ。」
「あの3人は1回生のときから不動なのよね。」
「トップ3にアメリカから来た教授に。有機化学は色んな意味でスゴいわ!」
そんな声が聞こえていた。勇太は初めての順位に飛び跳ねたいくらいの喜びを感じていたが、就活で忙しかったはずの海斗が4科目でわずか1問しかミスしていないことに驚いた。
『海斗、いつ勉強してたんだ…?やっぱスゴいな。』
魔術修行も再開した。
「どうしたの?体調悪いの?」
久々に見たペリドットが疲れきった顔をしていた。
「…何でもない。そうだ。図書館からこんな本持ってきたんだが…」
ペリドットが勇太に1冊の本を渡した。
“術式の基礎から応用 オニキス著”
「ありがとう。」
勇太は早速読んでみた。術式のかけ方、発動のポイントなど丁寧で分かりやすく書かれていた。
『…すごい!もっと早く読みたかったな。』
勇太は夢中になって読んでいた。
ふと、何気なくペリドットの方を見た。
ペリドットは疲れているだけでなく落ち込んでいるような元気がなさそうな様子だった。
『今日はどうしたんだろう…』
ペリドットの様子が気になっていたが、勇太は術式を試してみた。
「おぉ!スゴいな!」
勇太が色とりどりのボールを出して浮かせたり飛ばしたりしているのを見てペリドットが拍手した。
「中級魔術師までもう一息だな。お前は飲み込みが早いな。」
ペリドットが笑顔で言った。いつものペリドットの表情に戻ったように見えて勇太は少し安心した。
『そうだ!海斗が以前見せてくれたやつ…』
手のひらを広げ、グラスを出すイメージをした。
「やった!」
海斗が出したような細かい細工がされたグラスとまではいかなかったが、ごく普通のワイングラスを出すことが出来た。
「術式を書かずにイメージだけで発動できるようになってきたな。」
ペリドットが勇太を褒めた。
「まだまだだよ。これが精一杯だ。」
勇太は座り込んで言った。
「おめでとう。あなたも中級魔術師ね。明日から魔法陣を発動させる修行を始めてね。」
突然、ルビーが現れて勇太とペリドットに言った。
「今回のメンバーは本当に上達が早いわ。樹理奈と貴司もあと少しだもの。」
ルビーが言った。樹理奈と貴司よりも早く昇進できたことが勇太はうれしかった。
『少し、海斗に近づけた…勉強も魔術も。後は…就活か…そろそろ色々調べてみよう。』




