新たな懸念
「この石にはもともと魔力核と魔力核を維持するだけの最小限の魔力しか入っていなかった。つまり、主に忠告を伝えることだけが目的だったのだ。しかし、浄化された魂が石に引き寄せられて、辛うじて元の姿を実体化して話することができたのであろう。しかも、まだ残りわずかな魔力が魂を石と繋いでおる。」
勇太は晴明の手のひらの上の橄欖石をじっと見た。
「…つまり、ペリドットの魂はまだここにある?」
勇太が聞いた。晴明はニヤリと笑った。
「じゃあ…魔力があればまたペリドットと話ができるってこと?!」
勇太は気持ちが高ぶるのを感じた。
「そういうことだ。」
晴明は勇太ペンダントのチェーンを引っ張って、五芒星の逆五角形の部分に橄欖石を押し当てた。
橄欖石は五角形になって、ペンダントにすっぽりとはまった。
「このペンダントを介して俺の魔力をペリドットに補給するのか。しかも、このペンダントは俺たち以外には見えない。ありがとう、晴明。」
「ただ、主は魔力を消費し続けなければならない。完全に魔力が切れてしまえば今度こそ魂は成仏する。式神と似たようなものだ。」
勇太はペリドットとまた会える、話ができる、そう思うとさっきまでの辛さが吹っ飛んでうれしさがこみ上げてきた。
気が緩んだせいか、お腹がなったので、
「晴明、飯食ってくる。」
そう言って部屋を出た。
「…あやつの言う通り。戦いは大きな転換期を迎えているようだな。」
晴明が呟いた。
「やっぱりここにいた。」
アメジストが『扉の空間』に来た。
目の前にはクォーツが背中を向けて立っていた。
「何の用だ?」
クォーツが背中を向けたまま聞いた。
「ペリドットのこと、気にしてるんでしょ?」
アメジストは少し心配そうな顔をして聞いた。
「あぁするしかなかった。それだけだ。」
クォーツが言った。アメジストは黙っていた。
「ペリドットの宝石核は半分に割れていたな。」
クォーツがアメジストに振り返って聞いた。
「故意に割られたような感じだったけど、まさか半分は敵に奪われたとか?」
アメジストが言った。
「それも考えられるが、もしお前がペリドットなら宝石核を誰に預ける?」
クォーツに聞かれてアメジストはしばらく考えていた。
「ペリドットと仲の良いオパールかターコイズ…師匠だったエメラルドとタイガーアイ…タイガーアイはいないし、エメラルドも違う。ってことは…」
「さっきのオパールの様子じゃ多分違うだろうな。ターコイズでは少し頼りないし、人間界にいることの方が多いからリスクもある。」
「じゃあ誰よ?」
アメジストが自分が言ったことを否定されて少しイラッとして聞いた。
「弟子…とか。」
「まさか、勇太?!ターコイズよりアイツの方が頼りないわよ!」
アメジストが呆れた顔で言った。
「ペリドットは初弟子ということもあってか勇太への思い入れが強かった。それに勇太の力を買っている発言もよくしていたらしいからな。幸いなことに、勇太には晴明様がついている。」
「なるほどね~。でも何でオパールじゃないの?私はオパールの方が安全だと思うけど。」
「これはあくまでも俺の考えだが…」
クォーツが周りを気にしながら言った。
「オパールを含めた俺達jewelsを信用していないということは、まだ裏切り者がいる可能性があるのかもしれない…」
「えー!?」
「声がでかい。あくまでも予想だ。確証はない。とにかく、俺たちだけでも警戒はしておいた方が良い。」
「確かに、まだ不審な点はあるわね。」
「あぁ。慎重にいくぞ。」
そう言うとクォーツとアメジストは『扉の空間』から姿を消した。




