伝えたかったこと
「すまなかった…水銀蟲に操られていたとはいえ、お前に攻撃を向けてしまって。」
ペリドットは勇太に頭を下げた。
「気にしないでよ。ペリドットの本心じゃなかったのは分かってるし。」
勇太は確かに攻撃された当初はショックだったが、今は全く気にしていなかった。
「色々スパイ活動していて気づいたんだ。勇太、jewelsの誰も信じるな。」
ペリドットが頭を上げて言った。
「俺以外にもいるんだ…金属中毒に通じているヤツが。誰かは分からなかったが、いるのは確かだ。だからお前に宝石核を渡したんだ。1番信用できるから。」
勇太は驚いてすぐに声が出なかったが、ペリドットから『信用できる』と言ってもらってうれしかった。ペリドットが勇太に伝えたかったことは裏切り者の存在だった。
「それともう1つ、あきだ。あきには大きな秘密が2つある。」
それを聞いた晴明は意味ありげにニヤリとした。
勇太はあきの名前が出てドキッとしてしまった。
「1つは魔術界を揺るがす大きな秘密だ。なぜ金属中毒が気づいていないのが不思議だが、師匠のサファイアやルビーも気づいているのか…もしかしたらダイヤがそろそろ気づいているかもな。それと…」
ペリドットは晴明をチラッと見た。
晴明は相変わらずニヤニヤしていた。
「安倍晴明様…さすがあなたは気づいておられるようだ。それともう1つはおそらくあき本人すら気づいていない秘密だ。5年前に扉を開けたときに座標がずれたのはこのせいだ。」
そういえば扉が開いたときに、
『また座標がずれてたってことはないよね?5年前みたいに。』
『それはないね。今回はバッチリ成功よ。』
とエメラルドとアメジストが言っていたのを勇太は思い出した。
「恐らく、あきの存在が今後の戦いを大きく左右する。絶対あきを敵に渡すな。」
ペリドットが真剣な顔で言った。
「その秘密って何?」
勇太が聞いた。
「それは…あっ…勇太、すまない…もう俺の魔力が切れそうだ。ありがとうな。俺の最初で最後の弟子がお前で良かった。」
ペリドットの姿が少しずつ薄くなっていた。
「そんな…俺こそゴメン…助けられなくて…魔力が全然足りなかったせいで…」
勇太の唇は震えていた。
「違うんだ、勇太。お前の光は俺の魂を浄化してくれた。だから、俺の魂は身体が消滅する直前にお前に預けた宝石核にたどり着くことができたんだ。お前の光は俺にちゃんと届いていたんだぞ。お前のお陰だ…俺はとうとう消えてしまうんだ…伊吹勘助も魔術師ペリドットも…」
そう言ってペリドットの姿はろうそくの火が消えたようにふっと消えてしまった。
「ペリドット…」
勇太の目から涙がこぼれ落ちた。
「うっ…うっ…」
勇太は声を押し殺して泣いた。
こんなに悲しくて辛い気持ちで泣くのは祖父が死んで以来だった。
「主よ。悲しむのはまだ早い。」
晴明が床に落ちて光を失った橄欖石を拾って言った。




