裏切りの理由
「俺はお文にこれ以上危害が及ばないように人間界での俺の存在を消して魔術界に入った…でも、ダイヤも…お文も…誰も本当のことを話してくれなかった…お文がその後すぐ死んだのは事実だったが、俺は魔術界に対して不信感を持った…」
ペリドットはまた人間界に行った。
「言った通りだったでしょ?」
マーキュリーがまたペリドットの前に現れた。
「お前はどうしてお文のことを知っていたんだ?!禁書のことも!」
ペリドットがマーキュリーに迫った。
「可哀想なペリドット。誰も信じられなくなってるのね。」
マーキュリーが優しい口調で言った。
図星だったので、ペリドットは黙ってしまった。
「教えてあげても良いわ。でも、私に協力してくれるかしら。」
マーキュリーの氷の様に冷たい手がペリドットの頬に触れた。
「協力だと?!スパイにでもなれって言うのか!」
ペリドットはマーキュリーの手を振りほどこうとしたが、体が動かなかった。
「あなたは騙されたふりをし続けてくれれば良いわ。」
マーキュリーの手がペリドットの頬から顎へと撫でるように滑り、ペリドットの唇を人差し指でなぞった。
マーキュリーは不気味に笑うとペリドットの口に自分の人差し指を突っ込んだ。
「うっ…ぐっ…」
驚いたペリドットはマーキュリーを突き飛ばした。
ペリドットは喉に何かがスルスルと滑り落ちて行ったのを感じた。
「げほっ、げほっ…お前、俺の口に何か入れたな…」
ペリドットは咳き込みながら言った。
「私のかわいい子よ。期待してるわ。」
マーキュリーは笑いながらペリドットに手を振って姿を消した。
「俺は水銀蟲を体内に入れられてしまった。水銀蟲を通してマーキュリーから指令が来たりもした。『禁書から機密情報を探せ』と。俺は毎晩禁書の棚に行き、色々調べて水銀蟲からマーキュリーに伝えていた。調べていくにつれてどんどん魔術界への不信感が強くなった…それが水銀蟲の糧となって、水銀蟲がじわじわと力をつけていっていた。そして、水銀蟲は俺の体の中の何かを探していることにも気づいた…俺は水銀蟲が俺の宝石核を支配して完全に俺を傀儡化しようとしてるのに気づいたんだ。俺は水銀蟲が宝石核を見つける前に水銀蟲に気づかれないように宝石核の半分をお前に渡した。その後すぐに水銀蟲に宝石核を見つけられてしまったが。そんなとき、属性判定でお前に『五芒星』が出た。勘の良いマーキュリーは『五芒星』が魔術界の最終兵器ではと思ったらしく、『星とは何か、そして分かり次第お前の弟子を殺せ』と命令してきたんだ…お前を殺すなんて…それだけは絶対ダメだった…『五芒星』の意味を調べながらずっと抵抗していた。」
勇太は黙ってペリドットの話を聞いていた。