処分
「中島君、ペリドットの中の闇を浄化してる…でも…」
貴司は目をつぶってペリドットの精神の中に入っていった勇太の動向を見ていた。
「浄化してもそこにまた闇が入り込んでいる…キリがないよ…」
「やっぱりね。」
ルビーが言った。
貴司は目を開けて一呼吸おくとブルッと体を震わせた。
「氷の中にいるみたいだったよ。」
「ご苦労様。教えてくてれありがとう。」
樹理奈が貴司の背中を擦った。
貴司の顔が少し赤くなった。
「師匠から許可がおりた。」
そう言ってクォーツとアメジストも『扉の空間』に現れた。
「本当にするの?」
エメラルドが少し困惑した顔で聞いた。
「もうこれしか手段がないからな。」
クォーツが変わり果てたペリドットを見て言った。
ペリドットは舌をだらりと垂らしてフラフラと歩き出そうとしていた。
「ここから5歩下がれ。」
クォーツが言った。
「アイツを処分する。」
『中島君!クォーツが今すぐ出て来いって言ってる!』
ペリドットの精神の中にいる勇太の頭の中で貴司のの声が響いた。貴司の声は焦っているようだったが、
「まだだ…まだ全然浄化できていない…」
勇太はずっと魔力を放出し続けていた。
「潮時だな。」
晴明がそう呟くと、勇太はペリドットの精神から出ていた。
「はぁ…はぁ…」
ほとんど魔力を消費してしまったので勇太は息切れしていた。
「勇太!大丈夫か?!」
海斗が勇太に駆け寄った。
「戻って来たか。行くぞ。」
クォーツがアメジストを従えてペリドットに向かって歩き出した。
「ぐぉー!」
ペリドットの背中の腕が4本勢いよくクォーツたち目掛けて伸びた。
アメジストが手を広げるとペリドットの伸びてきた腕が炎に燃やされてしまった。
「お前を失うのは残念だ。」
クォーツがいつの間にかペリドットの目の前に立っていた。
そして、ペリドットの胸に手を当てた。
「すま…ない…」
ペリドットの声はか細く、かすれていた。
ペリドットに当てたクォーツの手から白い光を放ち始めた。
「くそっ、間に合わなかったか…」
そう言ってオパールも『扉の空間』に現れた。
「ラピスの言ったこと当たってるじゃねーか…」
オパールは悲しそうな顔でペリドットを見つめていた。
光はどんどん強くなった。
「ペリドット…」
勇太が呟くとペリドットが勇太の方を見た。
ペリドットは力なく微笑みかけた。
「よかった…」
勇太は闇が浄化され、ペリドットが正気に戻ったと思ったが、ペリドットの姿は光に飲み込まれて消えてしまった。
ペリドットが立っていた場所に銀色の小石ほどの塊があるだけだった。
塊はムクムクと膨れると、クォーツから逃げるように飛び跳ねた。
「あれは、水銀蟲?!」
海斗が言った。
クォーツが逃げる水銀蟲を鬼のような形相で睨んだ。
水銀蟲は火柱を上げて燃やされ、ミニトマト程の大きさの黄緑色のドーム型の石が落ちて転がっていた。
「表面がかなり腐食してる…こうなったしまうまで犯されていたってことね、」
アメジストが石を拾い上げて言った。