夏の思い出2
……。
「アホですか、先輩」
「率直に貶すねー」
それも魅力の一つだけどさ。
「そんな大量の花火、二人で全部できるわけないじゃないですか」
近くのスーパーで『夏の思い出!特大デラックスセット』という花火のセットを買った俺は公園に向かって歩きながら沙耶に貶されていた。
最近貶されるのが楽しくなってきた気がする。……イケナイ趣味に目覚め始めたか?
「多い方が楽しいと思ってさ」
「そういう、ノリで行動するのやめてください」
「努力はするよ」
努力はね。やめられるとは思わない。
「何人か呼びますからね」
「りょーかい」
沙耶がケータイで連絡を取っている間、俺はぼうっと空を見上げていた。
少し町から離れている所為か、星がよく見えた。
「そんな大量の花火を何も考えずに買ったとか、アホと言われても仕方ないでしょ、この馬鹿」
沙耶に呼ばれてきた奴その一こと安井知佳が何か俺を貶している気がするが、無視。
「よお。僕も来たぜ!」
「帰れ」
「開口一番それかよ!」
なんだか鬱陶しいと思ったらこいつも来ていたのか。
一応腐れ縁のようによく行動を共にする馬鹿、坂上恭平がバケツ片手に何か叫んでいた。
「こら、あたしを無視する気?」
「…………」
「聞こえないみたいだから耳に拳でも突っ込むか」
「待て待て待て待て!」
怖いなあ……こいつは本気でやりかねん。
「よう、知佳。いたのか」
「そんなに見えてないならその両目はいらないわね?」
「うおっ!」
危ないなー。
マジで目突いてこようとしやがった。
「てか、何でお前がいるんだよ」
恭平は知佳に連れてこられたからだろうけど。
「沙耶ちゃんに呼ばれたからよ」
「いつの間に連絡先交換してたんだよ……」
俺に用事でたまに部室にくるだけの知佳と沙耶にはほとんど接点なんかないはずなのに。
「大分前からメールしたり一緒に出かけたりしてもらってますよ」
「え、マジで? 全然知らなかった」
いや本当全く気づかなかった。
「別にあんたに言う必要ないでしょ」
「先輩に言う義務ないですし」
酷い言葉が二倍だー、ははは。
「まぁ、先輩がいない時にきた知佳さんと話して意気投合って感じです」
そんなところだろうな。
しかし……
「知佳さんって……随分親しいな」
「だから意気投合って言ったでしょ。あんたなんかより仲良いんだから」
へえ。
まあ沙耶は知佳が好きそうな可愛い子だけどな。
「だがしかし沙耶は渡さん!」
「元々先輩の物じゃないとか色々突っ込むところはありますけどスルーして花火しましょう」
「そうね。しましょうか」
はい、いつも通りですねー。