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夏の思い出1

 まだ太陽が空高くから照りつける。そんな時間から、ここに来たのに。

 もう日は沈み、屋台の灯りが辺りを照らす。

 神社の境内は人で溢れかえっている。


 少し目を離しただけで、君は人の波に呑まれそうになる。

 だからとっさに、君の手を握っていた。


 かき氷を食べた。

 君はその小さな口で少しずつ食べる。半分くらい食べた時には、残りはほとんど溶けてしまっていた。


 たこ焼きを買った。

 俺は君に、食べていいよ、と差し出した。だけど君はタコが苦手だと言った。

 少し残念だった……だけど、変かな。

 君のそんなところを知れて、少し嬉しかった。


 金魚すくいをした。

 君と俺、どちらが多くとれるか勝負をした。

 結果は君の圧勝。

 ちょっと自分が情けなかったけど、君が笑っているからそれでよかった。


 スーパーボールすくい。

 ヨーヨー釣り。

 射的。

 そんな屋台は全部回った。

 何回も勝負をして……ことごとく俺の負けだった。


 初めは少しつまらなさそうだった君も、遊んでいるうちに、楽しそうに笑ってくれた。


 しばらく遊んだ後。

 君はお腹がすいたと言い、二人で色んな物を分けて食べた。


 リンゴ飴を持った君と、河原の方へ歩いていた時。


 花火が上がった。


 空に打ちあがる色とりどりの光の花。

 赤、緑、黄、青……。

 移り変わる何色もの光が、代わる代わる君の横顔を照らす。


 無邪気に花火を見上げる君。

 ふと、俺は呟いていた。


「このまま時間が止まればいいのに……」


「え、何か言いました?」

「綺麗だなって」

 夏休みの終わりも近い八月の末。

 俺は部員二人の文芸部の後輩である野中沙耶(のなかさや)と、夏祭りとしては珍しいこの時期に行われた祭りに来ていた。

「まあ、綺麗ですけど」

「でも沙耶の方が綺麗だ--」「そういう冗談は止めてください」

 突っ込み早いなー。

 沙耶は呆れたようにため息を一つ吐くと、また花火を見上げる。

 冗談ってわけでもないんだけれどな。

 今の俺にとっては沙耶よりも輝くモノは何もない。その輝きを独り占めしたいと思うこともあるけど……。

「無理だろうなあ……」

「また何か言いました?」

「うん、沙耶が――」「あ、やっぱ言わなくていいです」

「えー、酷いな」

「先輩がどういうことを言おうとしたかわかりすぎるほどわかりますから」

 ……沙耶はちょっと怒ったような顔も可愛いなー。

 ふと気がつくと、花火はもう終わっていた。

「もう、先輩がアホなこと言ってるから最後のところ見れなかったじゃないですか」

「じゃあ手持ちの花火やる?」

「規模ちっさ!」

 沙耶の突っ込みは好調のようで何よりです。

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