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黒の銃騎士   作者:
始まる物語
9/37

七話 『最凶の武器』

 エリルと並んで街を歩くこと数分。第一の目的地に着いた。

 大きい武器屋だ。店内の棚には所狭しと武器が並べられている。


「すげぇなー」

 

 もう何度目かのすげぇ発言をする。地球というか日本に住んでる頃はこんな驚きに出会うことなんてそうそうなかったからな。


「おお。これは。リピローグのお嬢様。どうしましたか?」

 二人でその辺の武器を見ていると奥からおっさんが出てきてエリルに声をかけた。エリルの家の名を

知っているところからエリルがこの店を懇意にしているのが伺える。


「銃を見せてもらいたいの」


「銃ですか?お嬢様は確か小剣じゃ……」


「私のものではないの」


 エリルの言葉に店長らしき壮年の男ははじめて俺の存在に気づく。

 その目は俺を見定めるようだった。


「そうだ!」


 そういってエリルは俺のほうを向く。


「ユウナギ様。私の銃はお持ちですか?」

 銃。俺がぶっ壊したやつか。それならポケットに入れたままだ。

 俺はポケットからぼろぼろの銃を取り出してエリルに手渡した。

 エリルはその小銃を店長へと見せる。


「頑丈なものを探しているの。」

 エリルが差し出した銃の状態を見て店長はしばらく絶句した。

「んな……」

 ようやくうめくかのように声を絞り出す。


「馬鹿な。こいつぁ、そこいらの鉄とは純度が桁違いの素材で出来た銃ですぜ。 それをこうも……」


「言っておくけど一発放っただけよ。」


「一発で!?……お嬢様が嘘を言う必要もないですし、そいつぁ事実

なんでしょうね。この強度の鉄でここまでくるとなると……」


 そういって店長は店の奥へと姿を消した。

 しばらくして店長は戻ってきた。


「お嬢様。一つだけ、見つけるには見つけました。しかし……」


「なに?お金の問題?それならいくら値をつけても買うから問題ないわ」

 今思ったんだけど、エリルって俺や家族の人間以外と話すときってちょっと

『お嬢様』だなぁ、って思うわ。俺は『ユウナギさまぁ~』と言っているエリルのほうが好きだ。どっちが本当の彼女なんだろう……たぶんどっちも本当の彼女なんだろうな。


「いや、そうじゃないんです。見つけた銃っていうのは……『天』『地』です」

 店長の言葉にエリルは驚愕の表情をする。俺たちのあいだに緊張の空気が満ちる。いや、俺を除いて。この場において状況がわかってないのは俺だけか。俺を置いていくなよ、俺の銃の話をしてるんだろ……。


「『天』『地』が、こんなところにあったなんて……でもあれは」

 なんだ、雰囲気的にやばい武器なのか……?とりあえず俺にも説明してくれ。

 ってかこんなところ、ってちょっと失礼じゃないか、エリル……。


「ええ。ありゃぁ『魔銃』。絶対強度のコーティング魔法をかけてあるので、

絶対に壊れることはありやせん。ですが、アレに魔力を込めて撃とうものなら」


「魔力が暴走して使用者の命を奪う……」


「はい。ですので……」


「問題ない。そいつをくれ」

 即座に言い放った。今の二人の会話でその武器のことについてはだいたいわかった。


「はぁ!?!?おいおい。あんた今の説明聞いてなかったのか!?」


「ユウナギ様!『天』『地』はおやめになったほうがよろしいです。あれは使いこなす云々の銃ではないのです。使うこと事態が不可能な銃。故に『魔銃』と言われているのです。装飾品としてではなく、『武器』として製作されたにもかかわらず一度も『武器』として用いられることなく眠り続けています。ユウナギ様の身に何か起こってからでは……」


「エリル。俺を信じてくれ。」


 俺はそういって、初めて俺とエリルが会ったとき、エリルが俺の肩にそっと手をふれてきたようにエリルの肩に手を置いた。


「……わかりました。『天』『地』を、持ってきてください」

 エリルの表情からして完全に納得してはいないのが伝わってくる。それだけ危険な武器なのだろう。

話を聞く限り、たった今知った俺でも『やばそうな武器だなぁ』とは思った。

思ったけれど、なぜだろう。俺には使いこなせるような確信があった。


「お嬢様……。わかりました。」

 そう言って店長であるおっさんは小走りで奥へ行った。よく動き回るおっさんだ。

 数分後店長を息を切らしながら戻ってきた。


「こいつが『天』『地』だ」

 店長は俺に二丁の大型の銃を手渡す。その表面には傷一つない。使い込まれていないことが目に見えてわかる。いや、絶対なんちゃら魔法がかかってるからか?

 俺は銃を受け取り手になじませるようにくるくるを回す。なかなか重い。エリルから貰った小銃とはケタ外れの重量感だ。大きさは全長50cm以上はありそうだ。

 エリルはめちゃくちゃ心配していたが俺の考えが正しいのなら、俺はおそらくこの銃を使いこなせる。


「試し撃ちがしたい」


「ああぁ、それならこっちにこい」

 店長に伴われて店の置くへと行くと地下へと続く道があった。

 エリルも俺の後ろからついてきている。


「試し切りなんかをするためにスペースを用意してある」

 前を歩いていたおっさんが試し撃ちする場所の説明をした。なるほど、さすがは街一番の武器屋といった

ところか。すぐ武器を使ってみたい客のためにスペースを店内に用意するたぁ、関心するわ。


 地下に降りると小さな競技場くらいのスペースがあった。

 壁を手で触る。鉄か。


「悪いが俺は上へ戻らせてもらう。銃が暴れだしたら手に負えねぇんでな」


「ああ、かまわん。俺からも聞きたい。この部屋。壊しても問題ないか?」


「弁償は私がするわ」

 エリルが俺の言葉に続けるように言った。


「あ……ああ。それでかまいません。それじゃ」

 そういって店長は急いで上へと戻っていった。よっぽどこの銃が怖いらしい。


「エリル。俺から離れていろ」


「わかりました」

 エリルが俺から十分に距離を取ったことを確認する。俺としては使いこなせると思ってはいるのだが

万が一という言葉がある。正直エリルにも上にいてほしかったのだが、言ったところでここにいる!って

言うのはわかっているので黙っていた。

俺は二丁の拳銃を前方へと構える。

二丁の銃口に空気を圧縮させていく。

そして、ぶっ放した。

『ドン』『ドン』と爆音を鳴らして圧縮された空気弾が一直線上に飛んでいく。

銃口から空気弾を発射させる際に生じる衝撃が手に伝わる。

 ニヤっと、俺は笑った。やっぱりそうだ。

 二丁の銃口から放たれた空気の弾は直線軌道で飛んでいき奥の壁に辺り、そして弾けた。

『ゴオオオオオ』と衝撃波が発生する。鉄の壁がボロボロとはがされていく。

 俺は前方に巨大な空気の壁を作る。作り出した壁により衝撃波を防いだ。

 下ろした腕の先に握られている二丁の銃を見つめる。

 銃口には傷一つついていない。『絶対強度』のコーティング魔法、か。

大層な名前をしているだけあって効果は確かだ。

 にしても、力を弱めて撃った割りには衝撃が激しいな。

 改めて力を完全にコントロールできていないことを実感する。

 競技場の真上に店があったら陥没していた可能性もある。

 俺はきびすを返しエリルのほうを向く。握った拳の親指を突き立てて。


「すごい!!!やっぱり、、ユウナギ様はすごい!!」


「言っただろ。大丈夫って。」

俺はエリルの元まで歩みより肩にぽんと手をおいた。


「戻ろう。あのおっさんが不安で震えているだろうから。」


「フフ、そうですね!」

俺はさきほど来た道をあがっていった。

店内に戻ると店長は店内を歩き回っていた。

俺たちの存在に気づくとハっと目を大きく見開いた。


「っな……馬鹿な……馬鹿でかい轟音が聞こえたんだぞ。間違いなく

『天』『地』を使ったはず……なのに……なぜ……!?」

 なぜ生きてる、って言いたいんだろうな。


「俺は確かにこの銃を『使った』が、使い方が違うんだ。それにしてもこの銃、実にいい銃だ」

くるくると銃を回しながら俺は言った。まだ触って数分だというのに、俺の手に

ものすごく馴染むのだ。まるで俺のためだけに作られたかのような、そんな

印象さえ受けるほどにフィットしている。

 

 エリルは店長と話をしているユウナギを、ユウナギの手に収まっている魔銃を見つめた。最初に店長が私たちに持ってきた時より格段に光を放っている。どこか活き活きしているような。生命体ではない『武器』にそんなことがあるはずはないのだが、彼女の目にはまるでようやく自分の『正当』な使い手が現れた喜びを銃が全身で表現しているように見えた。


「この銃、いくらかしら?そちらの望む言い値で買い取るわ」

 一度思考を停止し、店長に尋ねる。


「は……はは……ははは。驚いた。本当に驚いたよ!

お受様、代金はいりません。

その代わりあんた、俺に名前を聞かせてくれねぇか。いずれその『天』『地』と

共に轟くであろうあんたの名前を」


「白神 夕凪だ。いいんだな。この銃、ほんとにタダでもらって」


「かまわねぇ。どのみち使いこなせる奴なんてほかに居ないんだ。

その銃も使い手が見つかって喜んでいるだろうしな」


「わかった。じゃぁもらう。ありがとな」


「こいつももっていきな」

そういっておっさんが俺のほうに二つのものを投げた。

それは銃を携帯するためのホルスターだった。腰から提げるやつだ。


「こいつもタダか?」


「はは。今日は大サービス日なんでな」

良かったですね、隣でエリルが微笑む。

 『天』『地』をそれぞれホルスターに納め、俺とエリルは店を後にした。




その後、呪われた伝説の大型の二丁拳銃『天』『地』を使いこなし

圧倒的な強さをもって敵に恐れられる銃騎士が誕生することになる。

 

しかしそれは、まだもう少し先の話。







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