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黒の銃騎士   作者: 葵
学園編
20/37

十八話 『大将戦1』

会場には生徒や観戦に来た保護者やその関係者など

アルバノス中から観客が集まり王族である『アルバノス国王女』も

参列している。



                                        

その会場は騒然としていた。

『学園史上最強』と言われたチームが二敗。


 昨年チームこそ一敗したものの学園最強の生徒といわれる『彼女』まで回ることはなかった。

 彼女が一年生のときに見せた圧倒的な力。それは一年生にして彼女を『生徒会長』に就任させるに十分な力を持っていた。


 学園卒業後は精鋭たちのみで結成される『魔法騎士団』入り間違いなしとさえ

 言われすでに学生の域を超えているといわれる彼女の勝負が行われる。


 そんな彼女の戦いを見ることができるという状況に観客達は驚き興奮していた。

 彼らの関心はもう一つ。最強の生徒といわれる者の対戦相手が

 ランク測定不能者であるということ。魔力を一切宿していない生徒。

 彼の噂は爆発的に広まり生徒はもちろん、観客達にもいつしか広まっていた。

ある者は言った。


『最強VS最弱』の戦いになる、と。


 ある者は言った。


『勝負に一分もかからない。30秒もちゃぁいいほうだな』と。


 観客達のざわめきが一瞬で静まった。


 闘技場の中央に『彼女』が出てきたから。

 審判が彼女の紹介をする。


『二年前、圧倒的な力を持って模擬戦を制し一年生にして生徒会長を

務めてきた誰もが認める『学園最強』ユーナ・ラン・クリスタル!!!!』


 うぉおおおおと観客達が吠える。


『昨年は彼女まで回ることなくチームは優勝しました。この二年間でどれほど

の力をつけたのか、いまから楽しみでなりません!!!最後である模擬戦で

有終の美をかざってほしいものです!!!!!』


 明らかにユーナに肩入れしている審判だが観客達も心のうちは同じだった。

『彼女が負けるはずがない』。誰もがそう思っている。



 しばらくしてユーナがでてきた反対側の入り口から出てきた生徒、つまり

対戦相手である男の格好にユーナは驚いた。ユーナだけでなく観客席や審判さえも

驚いている。


 彼は黒を基調としてところどころに白のラインが入っているコートを来て

出てきた。模擬戦における服装が原則制服となっているが指定ではない。

ただどの生徒も制服を来て出場するのは学園の制服が動きやすさに配慮して

作られていることと『自動防御魔法』が組み込まれているからだ。なぜ彼は

制服を着ずに戦いに臨もうと思ったのか、私にはわらからなかった。



『えーっと、最強の生徒に対する相手は、なんとランク測定不能という結果を出した

シラカミ・ユウナギ。なぜ制服ではなくコートを着て登場したのかはわかりません。

何かのアピールでしょうか?』

 

 審判は笑いをこらえるように言った。

 ただでさえ『最弱』と言われ注目を浴びているのに服装でまで目立って君はいったい何がしたいのか?と言っているようだった。

 

 俺が制服を着ずにこのコートで戦いに臨んだ理由は一つ。俺は入学することはできたが

それは形だけで本当の意味で俺がこの学園の『生徒』になっていないから。俺自身

この学園の生徒だという自覚がないのだから学園のやつらは俺を学園の生徒だなんて思っていないはずだ。だからこのコートで、俺を認めてくれた少女がくれたコートで戦いに臨もうと思った。そしてこの戦いが終わったら俺はー




対戦チーム用の生徒席に居たエリルは治癒を終えたばかりの体で

 彼の姿を見つめる。審判や観客からの罵りを一切気にせず、

ただ前を見て突き進む後姿を。


 この勝負が終わったとき、彼に対する皆の評価は180度

変わることになるだろう。エリルにはそうなる確信があった。



「いよいよね」


隣に腰掛けているナナがエリル同様ユウナギを見つめながら言った。

「……」


リサは黙って見つめている。


「頼むぞ……ユウナギ……!!」

先ほど勝負を制したギルバルトは祈るように言う。


「正直、あの生徒会長に敵う生徒はここにはいない」


 ナナの言葉に無言という形で皆は同意を示す。

 それほどに彼女は強いのだ。


「今までの話です」


 エリルの言葉に皆は微笑む。


「そうだったわね」


四人は、闘技場中心を見つめた。静に。




 ユーナはこちらに歩いてくる少年から発される闘気に気おされないように

していた。少年の闘気はどこまでも鋭く研ぎ澄まされた刀のようだった。

 今まで感じたこともないほど強大な闘気。


 観客は気づかないだろう。なぜなら彼の闘気は『私』だけに向けられている。

 ただ闇雲に闘気を振りまくのは己の力を御しきれていない未熟者。

 目の前の少年は己の闘気を完全に制御していた。

 この学園の生徒でどのくらいのものがこの少年の闘気を前にして立っていられる

だろう。並の精神力では足が震え腰が抜けてしまうだろう。


「見事な闘気です。学園最弱というのは嘘ですね?」


 ユーナは目の前の少年に向けていった。

 彼女の勘が告げている。『この少年は危険だ』と。


「それを今から確かめるんだろ」


 静に少年が言った。彼の目には自信が満ちている。


『勝つのは俺だ』とその目は私に告げている。


「魔法が使えないというのは?」


「本当だ。」


「そうですか」


 模擬戦前日、そして今こうして対面しているにもかかわらずやはり

魔力は感じない。彼自身の口からも魔法が使えないということを確認した。


 では、魔法も使わずにこの少年はどうやって戦うつもりなのだろうか。

 わからない。実質この少年に関する情報はゼロなのだ。

 ならばどうする。長期戦は危険だ。

 彼の土俵で戦ってはならない。だが逆に言えば自分のペースに持ち込むことが

できれば負けない。そして私の「魔法」ならば主導権を握ることができる。

 あとはその主導権を握り続けられるかどうかだ。


『それではこれより魔法模擬戦決勝最終試合大将戦を行います。はじめ!!!』


 審判のコールにすばやく反応しユーナは少年から距離を取る。

 距離をとりながら最高速度で詠唱をする。


 少年はただ悠然とその場に立っている。動く気配はない。

 時間にして3秒。彼女は詠唱を終えた。

「あなたが何者なのか。私にはわかりません。だから、全力で決めさせてもらいます」


『炎魔法・炎球』

『水魔法・水球』

『風魔法・風球』

『土魔法・土球』


 直後彼女の眼前に四つの魔法陣が出現し一斉に光を放つ。

 そして、魔法陣から四つの球が爆音を鳴らしながら俺をめがけて

 飛んでくる。圧巻の光景だ。どれも中級魔法程度だ。

 しかし込められた魔力によりその威力は上級魔法クラスのものとなっている。

 これほどの速度で魔法を発動させることができたのは

クリスタル魔法とやらのおかげだろう。

 俺は冷静に分析しながら自分の正面に空気の壁を作る。

 いつもの壁よりも更に空気を圧縮させて作る。







 超高速連撃魔法。少年は魔法が使えないといった。

 ならば魔法障壁も作り出せないはず。

『勝った』。ユーナは確信する。

 あらかじめクリスタルに魔法を設定しておく

ことによる高速の連続魔法発動。

 一対一、それも互いに向き合った状態で開始されるこの模擬戦において

私のクリスタルは絶対のアドバンテージを有する。

 卑怯にも感じてしまうほどに。

 一年生のときもこの方法で勝負を制したのだ。


 地面が抉れる音が会場に響く。

 衝突音と同時に闘技場に煙が立ち込めていた。

 煙が晴れれば少年が地面に倒れているのだろう、とユーナは予想する。

 やりすぎてしまったかもしれない、と反省すらした。




 観客達は口々に

『もう終わっちゃったよ』


『あぁーあ。なんだよ優勝するって口だけじゃねぇか』


『所詮こんなもんだろ。だいたい魔力もなくてどうやって戦うってんだよ』

と言っている。



「おいおい……」


ギルバルトが呆然とつぶやく。



「四魔法の同時発動……二年前は2つが最大だった……ここまで強いなんて」


ナナもまた地面に目を落としつぶやいた。


「……」

リサは空を見上げている。


 皆の表情は暗い。終わった、と思っているのだろう。

 自分もきっと彼の力を知らなかったら皆と同じように呆然としていただろう。


 だがエリルは真っ直ぐ、煙の立ちこめる闘技場を見ていた。

 彼女には確信があった。彼はこんなところで負ける人ではない。

 あの人は約束した。『優勝する』と。

 だから、今私にできるのは彼を信じることだ。



 バザザザザと音を鳴らして、煙が一気に晴れる。

 観客たちはため息をつきながらその闘技場の中心部を目を凝らすように見る。

 そして次の瞬間観客席が弾けるように騒然とした。


「ばかな……そんな……ありえ……ない」


 ユーナの口からぽつぽつと言葉が漏れた。

 その声は得体のしれないものと遭遇してしまったときのように震えていた。

 なぜならユーナの前には、先ほどの場所から一歩も動かず、

腕を組み悠然とたたずむ少年の姿があった。

 傷一つない姿で。その姿はまさしく王の隣に悠然と立ち常に王を支える

『騎士』そのものだった。


「悪いが、大将ってのは伊達じゃなくてな」


 俺はユーナを、最強の生徒と呼ばれる彼女を真っ直ぐ見つめて言った。


 やべ、今の俺のセリフ、かっこよすぎだろ。自分でいうのもなんだが最高に

決まったよな?

 しかしまぁ、向こうも驚いてるみたいだが俺のほうも驚いている。

 予想していた以上にユーナの魔法の威力は強く空気の壁は

 破壊されなかったものの、地面に壁がおされた跡ができている。

 さすがは『学園始まって以来最強の生徒』と言われているだけの

ことはある。手を抜けばこっちがやられるな。とはいってもこっちも

まだこの力を完全に制御しきれていないし全力でいった場合いくら自動防御魔法

とやらがあるにしても再起不能の怪我を与えてしまうかもしれない。

 『天』『地』はできるだけ使いたくはない。まずはあの女の力を試すことから

はじめるか。




「さて、勝負はこれからだ」


俺は驚きの目をしたユーナをまっすぐ見つめていった。




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