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シャーロットの仮説  作者: ariya
代理の打ち合わせ

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11/27

10.


 はじめはオルガと婚約解消した後に、エリオットの私財を散財させてから捨てることを考えた。


 だが、それではまた新しい犠牲者が出るかもしれない。


 エリオットは顔だけは良かった。

 情けない様子も絵になり、女性の保護欲をくすぐる。

 アイラの姉もこの男の情けない部分に絆されて、給料の一部をエリオットに渡していた。


 ならば、やはり殺してしまおう。

 苦しむ方法で。


 裏組織に金を払い毒殺の方法を教えてもらった。


「そんなに殺したいならこの倍の金で暗殺を引き受けてもいいぞ」


 裏組織の男からの提案を受けたがアイラは首を横に振った。


 あいつには苦しんで死んでもらいたい。


 苦しむ毒で、女に殺される苦しみを。

 エリオットがどうにでもできると思い込んでいる女に殺されるのはさぞかし滑稽だろう。


 想像しただけで笑いたくなる。


 エリオットを観察したところ、彼は都合が悪くなると席を立ち、言い訳を考える癖があるようだ。


 オルガとの婚約解消の話で、途中トイレへ逃げると踏んだ。

 アイラはちょうど良い頃合いをみて実行した。


 勿論、都合いい状況になると限らないとわかっている。その時は諦めよう。また別の機会があるのだから。


「そんな都合よく話は進まないか。私の旧姓を覚えている人がいるなんて」


 アイラはシャーロットを見た。


 そういえばとルイスは思い出した。

 先程シャーロットはアイラ・コメットと読んでいた。犯人追い込み舞台でついつい聞き流してしまったが。


 シャーロットは口を開いた。


「君の姉の最期をたちあった」


「ああ、あの時の若い女医さんだったの」


 今頃になって思い出したとアイラはシャーロットをまじまじと見つめた。

 シャーロットはさらに昔のことを呟いた。


「あの時の泣き声が君のエリオット・ルースに泣きつく声と重なった」


 それを聞いてアイラは笑った。


「しくじったわ。それであなたに怪しまれたのかしら……でも、無理ね。あの男の為に泣ける気はしない。だから姉さんが死んだ時を思い出して泣いてしまったわ」


 シェトラン警部が前へ出る。彼の手には手錠があり、アイラは逃げることなく両手を差し出した。


「あ、そうだ」


 警官に引き渡される前にアイラはジョンの前に立った。


「他に頼める弁護士がいなさそうだし」


 まさか裁判の弁護を依頼したいのか。

 複雑な状況にジョンは困惑した。


「母が残した保険金、まだ残っているの。エリオットに苦しめられた女性の治療費にして欲しいの」


 思いがけない言葉であった。

 ジョンがちらりとオルガを見てオルガはアイラの前へ出た。


「治療費用は私が出します。あなたはこれからのことを考えなさい」

「これからて、平民の私が貴族を殺したのよ。死刑でしょ!」


 ルース子爵はアイラを許さないだろう。

 放蕩息子とはいえ大事な跡取り息子を殺したのだから、報復の死刑になるように動くだろう。


「私が弁護士を用意するわ。エリオットでも殺した罪は背負わなければならないけど、あなたはまだ若いのだから希望を捨ててはダメ」


 オルガはアイラの頭を撫でた。


「ごめんなさい。あなたの苦しみに気づかなくて」


 オルガとしては責任を感じた。

 自分と婚約するためにエリオットはアイラの姉を殺した。

 アイラからすればオルガも憎かっただろう。


 アイラの瞳が揺れた。


「おめでたい頭ね。お嬢様」


 声がかすれたように感じた。


 アイラはオルガも陥れようとしていたというのに、オルガはアイラに心を向けた。

 もう少し、出会い方が違えばアイラは道を踏み外さなかったかもしれない。


 ◆◆◆


 事件は終わりようやく解放された。

 そそくさと帰ろうとするシャーロットをシェトラン警部は首根っこを掴んだ。


「何帰ろうとしている。死体検案書を書きに警察署に行くぞ」

「えー。検死室にいる先生がいるだろう」

「ここまで事件を引っ掻き回したのだから責任もって書くべきだろう」


 まるで猫のように捕獲されるシャーロットはしゃーしゃーと抗議した。それを宥めるシェトラン警部。


「まぁまぁ、死体検案書の依頼料は払われるのだから来なさい」

「たったの5タルだぞ。もこもこドーナツ2個しか買えないじゃないかっ!」

「そうか。ならばホットケーキを焼いてやろう」


 どうしていいかわからないルイスにシェトラン警部は伝えた。


「君は、馬車の手配は」

「いえ。歩いて戻ります」


 ルイスは首を横に振った。


「長いこと拘束して悪かった。協力感謝する」

「いえ、お勤めご苦労様です」


 ぴょことシェトラン警部の横から顔を出すシャーロットは声を上げた。


「ルイスさん、上着ありがとう。綺麗にして……叔父さんの原稿と一緒に届けるよ」

「叔父さん?」


 シャーロットの言葉にシェトラン警部は首を傾げた。


「俺、いや私はシャーロットさんの叔父の担当編集で、代理のシャーロットさんと打ち合わせをしてました」

「ふーん、叔父さんね」


 シェトラン警部はちらちらとシャーロットを見た。シャーロットは慌てて急かす。


「ほら、早く行くぞ。私は早く検案書を書いて帰りたいのだよ!」


 そういいながら警察馬車に乗り込んだ。


「それでは失礼」


 シェトラン警部も馬車に乗り、出発した。窓からシャーロットが顔を出してルイスに手を振った。

 ルイスはひらひらと手を振り帰した。

 馬車が見えなくなるまでルイスは手を振り続けた。


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