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プライベートカウンセラー  作者: Ohtori
第14章「舞台女優・神崎玲奈(31歳)」
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第1話「女優としての岐路」

都心のホテルラウンジ。上品なインテリアに囲まれ、午後の柔らかな光が差し込んでいた。香坂美月はカウンセリングの時間に備え、紅茶を一口飲みながらクライアントを待っていた。


そこへ、神崎玲奈が現れた。すらりとした体型に、洗練されたカジュアルな服装。舞台女優らしく、姿勢が美しく、所作にも無駄がない。だが、その瞳にはどこか影が宿っていた。


「はじめまして、香坂さん。本日はよろしくお願いします。」


玲奈は丁寧に頭を下げ、席に着いた。


「こちらこそ、お会いできて光栄です。」


美月は微笑みながら、彼女の表情を注意深く観察した。カウンセリングに来るクライアントの多くは、自分の悩みを明確に認識していないことが多い。玲奈もその一人かもしれない。


「早速ですが、今日はどのようなご相談でしょうか?」


玲奈は少し息を吐き、ゆっくりと話し始めた。


「私はこれまで舞台女優として、10年以上キャリアを積んできました。若手の頃は順調でしたが、最近は年齢とともに役柄の幅が狭まってきた ことを実感しています。」


「なるほど。」


「以前は若いヒロイン役を多く演じていました。でも、30歳を超えたあたりから、オーディションで競争が激しくなり、思うように役が取れなくなってきたんです。」


美月は静かに頷いた。


「演技の道を追求し続けたい気持ちはありますか?」


「あります。でも……このまま続けていっても、将来的にどこまでやっていけるのか分からないんです。演技を続けるべきなのか、それとも新しいキャリアを模索するべきなのか 迷っています。」


美月はノートにメモを取りながら、次の質問を投げかけた。


「玲奈さんにとって、『演じること』はどのような意味を持っていますか?」


玲奈は少し考え込み、視線をテーブルの上に落とした。


「……舞台の上にいる時が、一番自分らしいと感じます。観客が私の演技に感動してくれる瞬間が何よりも嬉しいんです。」


「では、その『演じること』が、今の状況では難しくなってきていると?」


「そうですね。仕事はゼロではないけれど、今までのように安定してオファーが来るわけではなくなった。」


「なるほど。玲奈さんが考える『新しいキャリア』とは、具体的にどのようなものがありますか?」


玲奈は少し困ったような表情を浮かべた。


「それが……明確には決まっていなくて。ただ、最近は後進の指導 に興味を持ち始めています。若い俳優たちがオーディションを受ける際の演技指導を頼まれることが増えてきたんです。」


「なるほど。では、演じることに加えて、指導することにもやりがいを感じている?」


「そうですね。でも、指導にシフトするということは、女優としてのキャリアを諦めることになるのではないか、と考えてしまって……。」


美月はメモを取りながら、玲奈の言葉を慎重に受け止めた。


「つまり、演技の道を追求するべきか、新たな道に進むべきか、その間で揺れているということですね。」


「はい。」


「では、一緒に考えてみましょう。」


美月はペンを置き、玲奈の目を見つめた。


「玲奈さんがこれからのキャリアを考えるうえで、大切にしたい価値観は何でしょうか?」


玲奈は少し考え込み、ゆっくりと答えた。


「人に感動を与えること。舞台であれ、指導であれ、それが私のやりがいにつながると思います。」


「では、演じることと指導すること、どちらがよりその価値観を満たせると思いますか?」


玲奈はすぐには答えられなかった。しばらく沈黙が続いた後、静かに口を開いた。


「……今はまだ、どちらかを完全に選ぶことはできません。」


美月は微笑みながら頷いた。


「それなら、どちらかを選ぶのではなく、両方を並行して進める というのはどうでしょう?」


「両方?」


「はい。今の段階で演技を完全に諦めるのではなく、新しいキャリアとして指導を取り入れてみる。演じることと指導することの比重を、状況に応じて調整する という考え方です。」


玲奈は少し驚いた表情を見せた。


「そんな選択肢があるなんて、考えもしませんでした。」


「キャリアの変化は、一気に方向転換するものではなく、少しずつシフトしていく ものです。指導の仕事を増やしながらも、舞台女優としての活動も続けることで、新たな可能性が見えてくるかもしれません。」


玲奈はゆっくりと頷いた。


「確かに……演技を続けながら指導の仕事も取り入れれば、今後の可能性が広がるかもしれませんね。」


「そうですね。そして、その過程で**『どちらの道がより自分に合っているのか』を見極める** ことができます。」


玲奈の表情が少し明るくなった。


「なんだか、視界が開けた気がします。」


「それはよかったです。では、次回までに、指導の仕事を具体的にどのように展開できるか考えてみましょう。」


「分かりました。少しずつ、可能性を探ってみます。」


美月は微笑みながら、ノートを閉じた。


「玲奈さんなら、きっと素敵な未来を切り開けると思います。」


「ありがとうございます、美月さん。」


こうして、玲奈は「演じること」と「指導すること」の両方を模索する新たなステージへと踏み出すことになった。

過去作品も宜しければ、ご愛読くださいませ。

・創造の砦:AIを超える思考とは

・虚飾の万華鏡

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