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プライベートカウンセラー  作者: Ohtori
第13章「歯科医兼経営コンサルタント・村瀬奏(57歳)」
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第5話「経営者としての決意」

都心のホテルラウンジ。夕方が近づき、窓の外にはオレンジ色の陽光が広がっていた。カウンセリングの終わりを迎え、村瀬奏はテーブルに置いたノートをゆっくりと閉じた。


「香坂さん、この数回のカウンセリングで、自分の考え方が大きく変わったよ。」


向かいに座る香坂美月は、紅茶を一口飲みながら微笑んだ。


「どのような変化がありましたか?」


「経営と医療のバランスをどう取るか、ずっと迷っていたが、今は明確な方針を持てるようになった。患者にとって最善の選択肢を提供しながら、医院の経営を安定させること。それが私の目指す道だ。」


「素晴らしいですね。」


「無料カウンセリングを強化し、治療の選択肢を増やし、価格の透明性を高める。それらの施策が少しずつ効果を生み始めているのを実感している。」


「どのような変化がありましたか?」


「まず、口コミが良い方向に変わりつつある。 『説明が丁寧で、押し売りの感じがない』『安心して相談できた』という声が増えたよ。」


「それは大きな成果ですね。」


村瀬は頷きながら続けた。


「さらに、スタッフの意識も変わった。 以前は経営面を私だけが考えていたが、今はスタッフ全員が『どうすれば患者が安心できるか』を考えるようになった。」


「医院のブランド価値が向上している証拠ですね。」


「そうだな。患者とスタッフ、両方の信頼を得ることが、結果的に医院の発展につながる ということを実感した。」


美月は満足そうに頷いた。


「それこそが、持続可能な経営の形ですね。」


村瀬は紅茶を一口飲み、ふと美月を見つめた。


「そういえば、初めてお会いした時から注意深く観察していましたが……美月さんの白い歯と綺麗な歯並び、矯正されたんですか?」


美月は驚いたように目を瞬かせた後、微笑んだ。


「いえ、天然もので毎日の口腔ケアぐらいしかやってませんよ。」


村瀬は少し驚いた表情を見せた。


「それはすごい。歯科医の目から見ても、理想的な状態だ。」


美月は少し得意げに笑った。


「私、一度も虫歯になったことが無いんです!」


「本当に?」


「本当です。ブラウンの電動歯ブラシの一番高いやつを使って、しっかりケアしているので、歯科医院いらずで済んでます。」


村瀬はくすりと笑い、ゆっくりと頷いた。


「個人のケアで事足りるのが一番ですよ。」


「そう言ってもらえると、歯科医の先生に申し訳ない気もしますが……。」


「いやいや、患者にとっての理想は、『病院に行かなくても済む健康な状態を維持すること』 だからね。」


美月は笑いながら頷いた。


「なるほど。経営の視点では来院が増えることが大事ですが、医療人としては健康な状態を保ってもらうことが理想というわけですね。」


「その通り。私は、経営者として収益を追求する一方で、医療人としての倫理観も大切にしたい。そのバランスを取ることこそが、これからの歯科医院経営の鍵になると思っている。」


「素晴らしい決意ですね。」


村瀬はテーブルの上の封筒を美月に差し出した。


「これがカウンセリングの料金だ。間違いなく価値のある投資だったよ。」


美月は封筒を受け取り、中身を確認した後、微笑んだ。


「ありがとうございます。村瀬先生のように、しっかりとした考えを持つ経営者が増えれば、医療業界全体の信頼も向上するはずです。」


村瀬は深く頷いた。


「これからも、より良い医院を目指していくよ。」


美月はカップを手に取り、最後の一口を飲み干した。


「応援しています。」


こうして、村瀬のカウンセリングは終わりを迎えた。彼は経営者としての覚悟を新たにし、より良い医院経営を目指すための道を歩み始めた。

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