第5話「経営者としての決断」
都心のホテルラウンジ。午後の柔らかな光が差し込み、シャンデリアの輝きが落ち着いた雰囲気を作り出している。カウンセリングも終盤に差し掛かり、高梨美緒はノートを閉じ、深く息をついた。
「美月さん、今回のカウンセリング、本当にありがとうございました。」
向かいに座る香坂美月は、穏やかに微笑みながら紅茶を一口飲んだ。
「こちらこそ、お話を伺えてとても楽しかったです。ブランドをどう成長させるか、しっかりとした方向性が見えてきましたね。」
美緒は静かに頷いた。
「はい。最初は、ブランドを守ることばかり考えていました。でも、成長させるためには、戦略的に柔軟な発想も必要だと気づきました。」
「そうですね。ブランドのアイデンティティを守ることと、ビジネスの成長は対立するものではなく、両立できるものです。」
「ええ。そのために、コラボレーションを通じて市場の反応を見ながら、サブブランドの展開を検討するという方針に決めました。」
「それは素晴らしい選択だと思います。」
美緒は満足そうに微笑みながら、美月に封筒を差し出した。
「では、こちらがカウンセリングの料金ですね。」
美月は封筒を受け取り、開いて明細を確認する。
カウンセリング料金明細
・第1回(120分):20,000円
・第2回(120分):20,000円
・第3回(120分):20,000円
・第4回(120分):20,000円
・第5回(120分):20,000円
合計:100,000円
美緒は封筒を閉じる美月を見ながら、少し笑った。
「こうして見ると、かなりの投資ですね。」
「そうですね。でも、価値に見合う投資になったと思いますか?」
美緒はしばらく考えた後、力強く頷いた。
「間違いなく、価値がありました。自分一人では、ブランドの未来についてここまで明確に整理できなかったと思います。」
「それを聞けて嬉しいです。」
美緒はふと視線を上げ、美月をじっと見つめた。
「そういえば、美月さんって、普段はどんなファッションが好きなんですか?」
美月は一瞬考え込み、少し困ったような笑みを浮かべた。
「正直に言うと……私はプライベートのファッションセンスが壊滅的なんです。」
美緒は驚いたように目を見開いた。
「えっ!? そんなことないですよね?」
美月は肩をすくめながら、苦笑いした。
「仕事のときは、それなりにきちんとした服を選んでいますけど、プライベートは本当に適当なんです。服を選ぶのが面倒で、無難なものばかり買ってしまうんですよね。」
美緒は思わず笑ってしまった。
「それは意外です。じゃあ……今度は私が美月さんのファッションアドバイザーをやらせてください!」
美月は目を輝かせ、身を乗り出した。
「是非、お願いします! 私、本当に困ってるんです。」
美緒は満足そうに頷きながら、スマートフォンを取り出した。
「じゃあ、次回はショッピング同行ですね! まずは、今のクローゼットの中身をチェックしないと。」
「クローゼットの中身……なんだか、すごく恥ずかしい気がします。」
「大丈夫、私がしっかりコーディネートします!」
美月は笑いながら、美緒と視線を交わした。
「こういうのも、良いですね。クライアントとしてではなく、友人としての付き合いが始まりそうです。」
美緒も微笑みながら頷いた。
「ええ。今度は私が美月さんをサポートする番ですから。」
こうして、二人の関係はカウンセリングを超え、新たな形へと進展していった。




