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プライベートカウンセラー  作者: Ohtori
第9章「一流ホテルのコンシェルジュ・天野紗希(32歳)」
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第3話「ライフスタイルの変革」

都心のホテルラウンジ。夕方の柔らかな光が差し込み、シャンデリアの煌めきが控えめに輝いている。香坂美月は、向かいに座る天野紗希の表情を観察していた。


前回、紗希は「仕事とプライベートのバランスを取ることの重要性」に気づき、具体的なアクションを決めた。今回は、その実践状況を確認し、さらなる変化を促す時間になる。


「こんにちは、紗希さん。前回のカウンセリングで、今の生活に変化を加えることをテーマにしましたね。実際にやってみて、どのような変化がありましたか?」


美月が穏やかに問いかけると、紗希は少し照れくさそうに微笑んだ。


「はい、少しずつですが、行動に移してみました。」


「素晴らしいですね。どんなことを試しましたか?」


「まず、シフトの調整をしてみました。これまでは、『できるだけお客様に寄り添うべき』という気持ちが強くて、休みを後回しにすることが多かったんですが……勇気を出して、希望のシフトを出してみたんです。」


「それは素晴らしいですね。結果はどうでしたか?」


「意外にも、すんなり受け入れてもらえました。上司からも『もっと早く言ってくれればよかったのに』と言われて、ちょっと拍子抜けしました。」


「そうでしたか。」


美月は頷きながら、メモを取る。


「紗希さんは、これまでお客様や職場のことを優先しすぎて、自分の希望を出すことに対して遠慮していたのかもしれませんね。」


「そうかもしれません。でも、今回希望通りのシフトになったことで、少しだけ気持ちに余裕ができました。」


「それは大きな変化ですね。では、プライベートの時間はどのように使いましたか?」


紗希は、少し嬉しそうな表情を浮かべた。


「実は、以前から気になっていたピアノのレッスンに通い始めました。」


美月の目が輝いた。


「本当ですか? それは素敵ですね。」


「はい。学生時代に習っていたんですが、忙しさを理由にずっと遠ざかっていました。でも、思い切って体験レッスンを受けたら、すごく楽しくて……仕事以外の時間を持つことの大切さを実感しました。」


「それは大きな一歩ですね。ピアノのレッスンを通じて、何か新しい発見はありましたか?」


「ええ。自分のために時間を使うことが、こんなに楽しいものだったんだって気づきました。それに、レッスンに通うことで、新しい人との出会いもありました。」


「どんな方と出会ったんですか?」


「ピアノ教室には、社会人の方が多くて、みんなそれぞれの目的で習いに来ているんです。例えば、仕事のストレス発散のためだったり、趣味の幅を広げるためだったり。そういう話を聞いていると、『仕事以外の世界を持つことって大切なんだな』と改めて思いました。」


「とても良い気づきですね。紗希さんが、今までとは違うコミュニティに身を置くことで、新しい価値観に触れたわけですね。」


「そうですね。今までは、ホテルの中の世界しか知りませんでした。でも、こうして外の世界に目を向けることで、自分自身の考え方も少しずつ変わっていくような気がします。」


「その変化は、とても大切ですね。仕事とプライベートのバランスを取るというのは、『どちらかを犠牲にする』ということではなく、『どちらも大切にする』ことが重要なんです。」


「本当にそうですね。これまでは、仕事を優先しなければならないと思っていました。でも、今は『仕事もプライベートも両方楽しむことができる』と思えるようになりました。」


美月は微笑みながら、ノートを閉じた。


「では、次のステップとして、プライベートの充実をさらに深める方法を考えてみましょう。」


「どういうことですか?」


「紗希さんは、すでにピアノを始めて新しい人間関係を築き始めていますよね。次の段階として、さらに『人とのつながりを深める』ことを意識してみるのはどうでしょう?」


「具体的には?」


「例えば、ピアノ教室で仲良くなった人と食事に行ってみる、あるいは、新しいイベントや交流会に参加してみるのも良いですね。」


紗希は少し考え込んだ。


「そうですね……。今まで、職場の人以外と深く関わることがあまりなかったので、少しハードルが高いかもしれません。」


「最初はそう感じるかもしれませんね。でも、無理に何かをする必要はありません。ただ、『新しい関係を築くことに前向きでいる』という意識を持つだけでも十分です。」


紗希はゆっくりと頷いた。


「分かりました。少しずつですが、試してみます。」


「楽しみにしています。」


美月は微笑みながら、カップを置いた。


「紗希さんが仕事以外の時間を楽しめるようになったこと、とても素晴らしいことだと思います。これからは、その時間をさらに豊かにしていくことを考えていきましょう。」


「はい。ありがとうございます。」


紗希は、以前よりも柔らかい笑顔を見せながら、カウンセリングのテーブルを後にした。


こうして、彼女は「仕事以外の世界を広げる」という新たなチャレンジに向けて、一歩ずつ前進していくことになった。

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