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プライベートカウンセラー  作者: Ohtori
第8章「プロスポーツ選手(元サッカー日本代表)・村上隼人(35歳)」
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第5話「新たな挑戦のスタート」

都心のホテルラウンジ。大きな窓の外には、東京の夜景が広がっていた。香坂美月は、目の前に座る村上隼人の表情を見つめながら、これまでのカウンセリングを振り返っていた。


「さて、村上さん。今日でこのカウンセリングも一区切りですね。」


「そうですね。始めたときは、自分がどこに向かうべきか全く見えていませんでしたが、今は自分が進むべき道がはっきりとしています。」


村上はそう言うと、静かにコーヒーカップを置いた。


「この数週間で、講演の準備も進みましたし、メンタルトレーニングの資格取得についても明確なプランが立てられました。元プロアスリートとして、これからは次の世代に向けて経験を伝えていくことに、しっかりと意義を感じています。」


「それは素晴らしいですね。実際に動き始めて、何か新しい発見はありましたか?」


美月が尋ねると、村上は少し考え込みながら答えた。


「自分が思っていた以上に、多くのアスリートが引退後のキャリアに悩んでいるということです。いろいろな人と話していく中で、『村上さんの話をもっと聞きたい』と言われることが増えました。そう言ってもらえると、自分の経験も誰かの役に立つんだと実感できますね。」


「とても貴重な経験をされてきましたからね。これからの活動が、きっと多くの人の支えになると思います。」


村上は深く頷いた。


「ありがとうございます。」


美月は、そっとテーブルの上に封筒を置いた。


「では、最後にカウンセリングの領収書です。今回のセッションの総額をご確認ください。」


村上は封筒を開き、中の明細を確認した。


カウンセリング料金明細

・第1回(90分):15,000円

・第2回(90分):15,000円

・第3回(90分):15,000円

・第4回(90分):15,000円

・第5回(90分):15,000円

合計:75,000円


村上は領収書を眺めながら、少し笑った。


「正直、最初は『プロのカウンセリングなんて本当に効果があるのか?』と思っていましたが、今はこの金額以上の価値を感じていますよ。」


「そう言っていただけると嬉しいです。」


「実際、このカウンセリングを受けなかったら、今もまだ悩み続けていたかもしれませんしね。」


村上は封筒をしまいながら、満足そうに頷いた。


「さて、美月さん。これでカウンセリングは終了ですね。」


美月は、ここで少し間を置いてから、カバンの中から 白い色紙 を取り出した。


「実はですね……村上さん、ずっと言いたかったことがあるんです。」


村上は不思議そうに美月を見つめた。


「……なんでしょう?」


美月は、ほんの少し恥ずかしそうに微笑んだ。


「実は、私、村上選手のファンだったんです。」


村上の目が一瞬大きく見開かれる。


「えっ?」


「もちろん、お仕事としてカウンセリングをさせていただきましたが……正直、最初にお申し込みが来たときは、ちょっとテンションが上がりました。」


そう言うと、美月は色紙をテーブルの上に差し出した。


「せっかくの機会なので、記念にサインをいただきたくて。ちゃんと色紙、持ってきました。」


村上は驚きながらも、すぐに吹き出して笑った。


「まさかの展開ですね……でも、光栄です。」


ペンを受け取ると、村上は色紙にサインを書き始めた。


「でも、美月さん、まさか メルカリ で売ったりしませんよね?」


「ちょっと、ひどいですね!そんなことしませんよ!」


美月は笑いながら軽く抗議する。


「まあ、冗談です。でも、これまでプロとしてやってきた証を、こうして求めてもらえるのは、やっぱり嬉しいものですね。」


村上はサインを書き終え、色紙を美月に渡した。


「ありがとうございます。大切にしますね。」


美月がそう言うと、村上は冗談めかして言った。


「いや、本当に売らないでくださいよ? ちゃんと飾ってくださいね。」


「もちろんです!」


二人は笑い合いながら、最後のカウンセリングを終えた。


「じゃあ、村上さん、今度サッカー観戦しながら美味しいお酒でも飲みましょう。」


「それ、いいですね。美月さん、ぜひご一緒しましょう。」


こうして、村上隼人の新たなキャリアは本格的に動き出した。そして、美月もまた、一人のクライアントの未来を支えられたことに、小さな達成感を感じていた。

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