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プライベートカウンセラー  作者: Ohtori
第7章「ベンチャー企業のCFO・片瀬翔子(38歳)」
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第5話「理想のCFO像に向かって」

都心のホテルラウンジ。夜の帳が降り、窓の外には煌めくネオンが広がっていた。香坂美月は、目の前の片瀬翔子の表情を観察していた。以前の迷いや焦燥感は消え、代わりに自信と充実感が滲んでいる。


「翔子さん、お疲れさまでした。CEOとの話し合い、どうでしたか?」


美月の問いに、翔子は小さく微笑み、ゆっくりとコーヒーカップを置いた。


「上手くいきました。」


その言葉を聞いた瞬間、美月は心の中で安堵した。


「CEOに、単なる財務的なリスクの指摘ではなく、持続可能な成長戦略としての新しい道筋を提案しました。彼は最初、やはり強気の姿勢でしたが、具体的なデータと事例を交えて説明すると、最終的には納得してくれました。」


「それは素晴らしいですね。CEOはどんな反応を?」


「『もっと早くこういう提案をしてほしかった』と言われました。正直、ちょっと悔しかったですけどね。」


美月は微笑みながら頷いた。


「でも、それは翔子さんのCFOとしての価値が認められた証拠です。成長を前提とした財務戦略が、CEOにとって受け入れやすい形になったんですね。」


翔子は満足げに頷いた。


「そうですね。これまでの私は、CEOと対立することばかり考えていました。でも、本来のCFOの仕事は、会社の成長を支えること。その視点を持てたことで、私自身の役割も明確になりました。」


美月はそっと封筒を取り出し、テーブルの上に置いた。


「では、今回のカウンセリングの領収書です。総額をご確認ください。」


翔子は封筒を開き、明細を見つめた。


カウンセリング料金明細

・第1回(3時間):30,000円

・第2回(3時間):30,000円

・第3回(4時間):40,000円

・第4回(4時間):40,000円

・第5回(3時間):30,000円

合計:170,000円


翔子は小さく息を吐き、苦笑した。


「……この金額で、ここまでの学びと気づきを得られたなら、安すぎるくらいですね。」


「それは何よりです。」


翔子は封筒をしまいながら、ふと笑みを浮かべた。


「でも、今回の収穫は、何よりも 修士郎さんと知り合えたこと かもしれません。」


美月は思わず眉を上げ、興味深そうに翔子を見つめた。


「……あら、それはどういう意味ですか?」


翔子は少し照れくさそうに、しかしどこか楽しげに続けた。


「単純に、あの人の考え方にすごく興味を持ちました。経営とファイナンスをあそこまで論理的に結びつけて考えられる人って、なかなかいないと思います。それに……個人的にもちょっと興味が湧いてしまって。」


美月は、いたずらっぽい笑みを浮かべた。


「それは良いことですね。ちなみに、彼は フリー ですよ。」


翔子の目が、一瞬だけ大きく見開かれた。


「えっ、本当に?」


「ええ。しかも、職業人としても、男性としても尊敬できる人物であることは、私が保証します。」


翔子は何か考えるように視線を落とした後、くすっと笑った。


「なるほど……。」


美月は、ふと身を乗り出し、翔子の耳元で小さく囁いた。


「美味しいお酒が飲みたいと誘えば、簡単に釣り上げれますよ。」


翔子は、驚いたように美月を見つめ、それから吹き出した。


「ちょっと、美月さん、それは言い方が……!」


「事実ですよ? 彼、意外とそういう誘いには弱いんです。」


翔子は呆れながらも、どこか楽しそうに首を振った。


「……じゃあ、その作戦、考えてみようかしら。」


美月は微笑みながら、カップを置いた。


「新しいCFOとしての一歩を踏み出したばかりですが、人生も新しい展開が待っているかもしれませんね。」


翔子は、穏やかな笑みを浮かべながら頷いた。


「そうかもしれませんね。」


こうして、翔子はCFOとしての道を確立し、新たな可能性にも目を向ける余裕を取り戻した。美月は、彼女の晴れやかな表情を見て、心の中でそっとエールを送った。

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