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プライベートカウンセラー  作者: Ohtori
第4章「大手企業の管理職・藤堂慎一(39歳)」
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第2話「変わるマネジメントの視点」

都心のホテルラウンジ。香坂美月は、目の前に座る藤堂慎一の表情を観察していた。スーツ姿は変わらないが、どこか以前よりも落ち着いた雰囲気が漂っている。


「こんにちは、藤堂さん。」


「こんにちは、美月さん。」


藤堂はコーヒーカップを手に取り、少し息をついた。


「前回、部下とのコミュニケーションを見直し、コーチング型のマネジメントを試してみるという話をしましたね。その後、実践してみて、どんな変化がありましたか?」


美月の問いかけに、藤堂は苦笑しながら答えた。


「最初は、正直うまくいかないと思っていました。でも、少しずつ部下の反応が変わってきたんです。」


「具体的に、どのような変化がありましたか?」


「これまでは、私が指摘すると部下が萎縮してしまい、あまり意見を言わなくなっていました。でも、今回意識的に『どうすれば次はうまくいくと思う?』と問いかけるようにしたら、彼らの考えを聞く機会が増えたんです。」


藤堂は、ゆっくりとコーヒーを飲みながら続けた。


「最初は、部下たちも戸惑っていました。でも、私が頭ごなしに指摘するのではなく、一緒に考える姿勢を見せることで、徐々に意見を出すようになってきました。」


美月は静かに頷いた。


「それは素晴らしいですね。藤堂さんのマネジメントのスタイルが、少しずつ変化している証拠です。」


「ええ。ただ……まだ完全に自分のものにできているわけではありません。どうしても、忙しくなると『もっとこうしろ』と指示を出したくなってしまうんです。」


藤堂は少し自嘲気味に笑った。


「それは自然なことですよ。長年のやり方を変えるのには時間がかかります。でも、大切なのは、意識して実践し続けることです。」


「そうですね。まだまだ試行錯誤ですが、少しでも変われたことは大きな進歩かもしれません。」


美月は微笑みながら、次のステップについて話を進めた。


「では、次に『部下の主体性をさらに引き出すための工夫』について考えてみましょう。」


「主体性、ですか?」


「はい。藤堂さんが今やっている『考えさせる問いかけ』はとても効果的ですが、もう一歩進めるためには、部下が自ら動ける仕組みを作ることが大切です。」


「なるほど……。具体的には、どうすればいいのでしょう?」


「例えば、部下に意思決定の権限を少しずつ渡していくのはどうでしょう?」


藤堂は少し考え込みながら、「意思決定の権限を渡す?」と聞き返した。


「ええ。これまで藤堂さんがすべて決めていたことを、部下に判断させる機会を増やすんです。」


「でも、それで間違った判断をしたらどうするんですか?」


「もちろん、完全に任せるのではなく、方向性を一緒に確認しながら進めることが重要です。でも、部下に『自分の意見が尊重されている』と感じてもらうことが、モチベーションの向上につながります。」


藤堂はしばらく考えた後、頷いた。


「なるほど……。確かに、私がすべて決めてしまうと、部下は受け身になってしまうかもしれません。」


「そうなんです。では、まずは小さな意思決定から部下に任せてみるのはどうでしょう?」


「例えば、どんなことですか?」


「たとえば、会議の進行方法や、チーム内の役割分担の調整を部下に任せてみるのはどうでしょう?」


「なるほど……。それなら、試してみる価値はありそうですね。」


藤堂はノートにメモを取りながら、ゆっくりと頷いた。


「実際にやってみて、どのような結果になるのか、自分でも試してみます。」


美月は微笑みながら、「それは素晴らしい決断ですね」と言った。


「藤堂さんがこうして試行錯誤をしながらも、部下のことを真剣に考えているのが伝わってきます。」


「ありがとうございます。まだまだ課題はありますが、一歩ずつ変えていきたいと思います。」


美月は静かにカップを置き、藤堂を見つめた。


「変化には時間がかかります。でも、藤堂さんがこうして行動を変えようとしていること自体が、すでに大きな一歩です。」


藤堂は深く息を吸い、そしてゆっくりと吐き出した。


「これからも、もっと良いチームを作れるように努力します。」


彼の表情には、以前にはなかった決意の色が浮かんでいた。

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