出会いジェイムズ視点②
2人で庭に来てみたものの、どうしよう…
ミーシャはさっき怒られたこともあって、まだ落ち込んでいるっていうか不貞腐れているっていうか、全然話してくれないし……
僕は歳の近い女の子と遊んだことはもちろん、話したこともほとんどなかった。しかもミーシャは怒られたてで、より一層話しかけにくい。
どうしたらいいのか、2人で同じ方向を向いて立ち、真っ直ぐに庭を見つめていた。
風が穏やかに吹いた時、
「、、、、ぺ、、、、った」
ミーシャが呟くように何かを言った。
「え?」
まさか話し始めるなんて思っていなくて、うまく聞き取れなかった僕が聞き返すと、
「ほっぺ、痛かった?」
と次は僕の顔を覗き込んで聞いてきた。
「わ!!!」
突然視界いっぱいに広がったミーシャの顔に驚いて、僕は大きな声を出して後ずさってしまった。
「なによう、そんなに驚かなくたって、、ってまって、そのまま動かないで!」
ちょっとシュンとした様子だったミーシャが、急に僕の頭を見ながらいう。
「な、なに?!」
言われた通り動かないまま聞き返すと
「ちょうちょ!チョウチョがあなたの頭に止まってるの!」
そう言って僕の頭に手を伸ばす。
真剣な目をしてミーシャはゆっくり僕の頭の方へ手を伸ばした。
どうするつもりなんだろう…と僕が固まったまま不思議に思っていると、その手が僕の頭に触れたような感触があった。
そして、
「見て」
彼女の片手は蝶をとらえていた。
小さくて白い、たぶんモンシロチョウ。
「離すわよ」
そう言って、蝶を捕まえていた手を開いた。
彼女が解放した瞬間、蝶は小さな羽をひらひらと動かし庭に咲いているポピーの方へ飛んでいった。
2人で静かに蝶を見送ったあと、僕は
「蝶を触れるご令嬢がいるなんてびっくりした」
と、言った。素直な気持ちだった。
「見た目が可愛らしい虫ならチョウチョ以外でも触れるの。ミミズまでならいけるわ!」
「ミミズまでって、、それって結構触れる虫多くない?」
「うーん、でも蜘蛛はダメ。見た目がこわいもん」
「ふーん、じゃあ、カブトムシは?」
「それもいけるわ!なんならクワガタも」
すごくお転婆な子なんだな、と会話をしながら思って。
「あ、そういえば、ほっぺ痛くなかったよ。ちゃんと挨拶できなくてごめんね」
と、さっきの質問にようやく答えた。
「ならよかったわ。わたしこそ急にほっぺさわちゃってごめんなさい」
「いいよ。でも他の人にはやらない方がいいと思う」
「や、やらないわ!今日ので反省したもの」
ちょっとムキになって言った後、
「でも、こうやって普通に話せてよかった。よろしくね、ジェイムズ」
にっこり、僕の顔を見てミーシャが笑った。
「うん、僕も。こちらこそよろしくね、ミーシャ」
ふたりで顔を見合わせて笑う。
この子とは絶対に仲良くなる。そう思った。
オレンジ色の瞳が特徴的な、可愛らしいお転婆な女の子。
この出会いから3年後、彼女をのことを好きになるなんて、しかもその片想いが10年も続くなんてこの時は思ってもみなかった……
「もう、聞いてるの?」
オンレジ色の瞳が急に僕の視界いっぱいに広がった。
どうやら昔を思い出してぼんやりしすぎていたらしい。
ずっとかわらない、キラキラしたオレンジ色の瞳。これからは夫としてこの瞳に映り続けられるなんて、何にも代えがたい幸せだ。
「なんか、ニヤニヤしちゃって、ジェイムズ変な顔」
困ったように笑うミーシャを見て、僕はさらに言葉にできない幸せを感じた。
出会い編ジェイムズ視点 おわり
出会い編のジェイムズ視点おしまいです。
ミーシャ視点もいずれ書ければ、とは思いますが、次は学園編とか、婚約者候補となった時のお話とかを書きたいなあ、と思っています。
また読んでいただけると嬉しいです。
読んでくださってありがとうございます。




