表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

37/103

第37話 ロイドの警告

今回もお読みいただきありがとうございます!

第37話、ロイドがシルヴァンに到着し、賢者会議の動きと衝撃の真実を明かします。

どうぞお楽しみください!

 四日後の夕方、ロイドがシルヴァンに到着した。


 旅装束に埃をつけたまま、ギルドの入り口で俺たちを見つけると、ほっとした顔をした。


「間に合ったか。急いで来た」


「お疲れ様です。宿を取ってあります。まず休んでから」


「いや、先に話す。時間がない」


 ロイドの顔が、いつになく緊張していた。


 俺たちはギルドの個室を借り、五人で向き合った。


   ◇


「賢者会議が動き出した理由を話す」


 ロイドが静かに切り出した。


「霧の湖の封印解除——これは、ギルドの記録に残った。続いて霧氷の谷の黒霧消失——これも各地のギルドに報告が上がった。二つの異変が同一人物によるものと特定されたのが、三日前だ」


「特定の方法は?」


「シルヴァンのギルドが、Bランク冒険者・アキトという名前で報告書を提出した。それが王都の情報網に引っかかった」


 俺はギルドへの報告書を思い出した。

 当然の流れだ、と思った。


「賢者会議は今、何をしようとしていますか?」


 ロイドが一呼吸おいた。


「継承者を王都に連れ帰り、直接管理下に置こうとしている」


「管理、というのは?」


「原初の魔法師の力は、解放しきった時に最大となる。賢者会議はその力を——国家の兵器として使おうとしている」


ミレイが息を飲んだ。


ブルスが低く言った。


「つまり、道具にしようということか」


「正確にはそうだ。だが——賢者会議の中にも、派閥がある」


ロイドが続けた。


「穏健派は『継承者と交渉し、協力関係を結ぶ』という立場。強硬派は『強制的に確保し、制御する』という立場だ。今はまだ穏健派が優勢だが、時間が経てば変わるかもしれない」


「どちらが動いてきますか?」


「おそらく最初は穏健派が使者を送ってくる。強硬派が動くのはその後だ」


 俺は静かに考えた。


「使者が来るとして、どのくらい時間がありますか?」


「シルヴァンの位置が割れている以上、一週間から十日で到達するかと思う」


カーツが腕を組んだ。


「なら、その前に動けばいい。第三の封印に向かえば、追ってきても振り切れる」


「カーツの言う通りです。ここには長居できません」


ロイドが頷いた。


「同意する。ただ——もう一つ、伝えなければならないことがある」


 ロイドの声が、さらに重くなった。


「アキト、勇者パーティーについて知っていることを聞かせてくれるか。レイ・アルドレスのことを」


 俺は少し驚いた。


「……以前、一緒にいたことがあります。追放されるまで」


「やはりそうか」


ロイドが目を伏せた。


「実は——賢者会議は、勇者パーティーにも継承者の捕捉を命じている。レイはすでに、継承者探しの任務を受けているはずだ」


 静寂。


「……レイが、俺を探している?」


「正確には、賢者会議の命令で、継承者を探している。それがかつての仲間であることを、知っているかどうかは分からない」


ミレイが静かに俺を見た。


ブルスも、何も言わなかった。


カーツが、ゆっくりと口を開いた。


「……つまり、俺たちは今、賢者会議と——勇者パーティー、両方に追われている可能性があると」


「可能性、ではなく、ほぼ確実にそうなる」


ロイドが静かに言った。


 俺は窓の外を見た。


 シルヴァンの夜が、静かに広がっている。


 ——レイが、俺を探している。


 複雑だった。

 恐れているのか、怒っているのか、それとも——


 分からない。


「アキト」


ブルスが声をかけた。


「どうする?」


 俺は静かに答えた。


「変わりません。第三の封印に向かいます」


「賢者会議も、勇者パーティーも関係なく?」


「ええ。追われているなら——それより速く動けばいい」


カーツがにっと笑った。


「俺の速さが、いよいよ必要になってきたな」


ミレイが苦笑した。


「状況が状況でも、笑えるのが凄いわよ、カーツ」


「冒険者はそれくらいでないと長生きできない」


ロイドが四人を見回し、静かに言った。


「……強い仲間を持ったな、アキト」


「はい」


 俺は素直に頷いた。


「だから——どこにでも行けます」


 五人で、短く笑った。


 翌朝、シルヴァンを発つ。


 西へ——第三の封印へ。


 追手よりも、速く。


   ◇


 その夜、ロイドを宿に送り出した後、俺は一人で宿の屋上に上がった。


 星空が、広かった。


 ——レイが、俺を探している。


 賢者会議の命令だとしても、レイが動いているということは、いつかまた顔を合わせることになる。


 その時、俺はどうするのか。


 怒りはない。

 恨みも、もうない。


 ただ——追放した相手と正面から向き合う、その覚悟が自分にあるのか、俺はまだ確信が持てなかった。


「ここにいたか」


 足音がして、カーツが屋上に上がってきた。


「一人で考え込む時間か?」


「少し」


カーツが隣に立ち、星空を仰いだ。


「レイ・アルドレスのことか」


「……ええ」


「お前を追放した奴だな」


「はい。勇者パーティーのリーダーです」


カーツが少し間を置いた。


「会いたくないか?」


「……分かりません。怖いというより——どんな顔をして向き合えばいいか、まだ答えが出ない」


「そりゃそうだ。簡単に答えが出たら、お前の感情がおかしい」


カーツが静かに言った。


「でも一つだけ言う。その時は、一人じゃないぞ」


「……分かっています」


「分かってるだけじゃなく、実感しろ。俺たちがそこにいる」


 カーツの言葉が、胸に落ちた。


「……ありがとう」


「礼はいい。さあ、寝ろ。明日は早い」


カーツが先に屋上を下りていく。


 俺はもう少しだけ星を見た。


 レイと、いつか向き合う日が来る。


 その時——俺は今とは比べものにならないくらい強くなっているはずだ。


 だから——恐れなくていい。


 全部の封印を解いて、力を取り戻してから。


 その時に初めて、正面から向き合えばいい。


 俺は深く息を吸い、屋上を下りた。


   ◇


 翌朝、五人でシルヴァンを出発した。


 ロイドも同行することになった。


「一人で調べ回るより、あなたたちと動いた方が情報が早い。足手まといにはならない」


「ロイドさんの情報と知識は頼りになります。ぜひ」


ブルスが「五人になったな」と言った。


「賑やかになりましたね」


ミレイが笑う。


「旅は人数が多い方が楽しいわ」


カーツが「俺はいつでも歓迎だ」と言った。


 ロイドが少し戸惑った顔をしながら、それでも口元を緩めた。


「……長いこと一人で動いていたが、こういうのも悪くないかもしれんな」


 五人で、西の街道を歩き始めた。


 シルヴァンの街が遠ざかっていく。


 前方には、まだ見ぬ砂漠の地が待っている。


 賢者会議が追ってくるまでに、第三の封印を解く。


 それが、今の俺たちの目標だ。


 朝日が五人の背中を照らし、西への道が遠く続いていた。


   ◇


 歩きながら、ロイドが地図を広げた。


「砂漠都市ラーデンまでは、シルヴァンから西街道を真っすぐ進んで約十五日の行程だ。途中に二つの街がある」


「ラーデン自体は大きな街ですか?」


ミレイが聞いた。


「砂漠交易の要所だ。砂漠を渡る商人が必ず立ち寄る。人口はエルザの三倍はある」


「大きいわね」


「冒険者ギルドも規模が大きい。ただし、砂漠特有の魔物に対応した装備が必要になる。この街道沿いで準備を整えた方がいい」


「砂漠特有の魔物、というと?」


ロイドが地図を指した。


砂竜(すなりゅう)熱砂蟲(ねっさちゅう)灼熱ゴーレム(しゃくねつごーれむ)……いずれも高熱環境に特化した魔物だ。通常の氷魔法や水魔法は蒸発するか効果が半減する」


「属性対策が必要ですね」


「ミレイさんの主属性は氷と水ですね」と俺が確認すると、ミレイが頷いた。


「そうよ。砂漠だと不利になるのね……」


「土属性と風属性の補助術も練習しておくといいかもしれません。砂漠では砂嵐を利用する戦術が使えます」


「なるほど……」


カーツが「俺は剣士だから属性は関係ないが、熱中症対策が必要だな」と言った。


「解熱薬と水分補給剤を多めに作っておきます。ラーデンに着く前に、素材を調達しながら進みましょう」


ロイドが感心した様子で言った。


「準備が細かいな。さすが錬金術師だ」


「動いてから慌てるより、動く前に整える方が効率的です」


ブルスが「お前は本当にそういう人間だよな」と笑った。


「褒め言葉として受け取ります」


 五人で笑いながら、西の街道を進んだ。


 追手より速く。

 封印より確実に。


 旅は、また新たな段階に入った。

第37話、お読みいただきありがとうございました!

賢者会議の目的とアキトの過去に衝撃の繋がりが……!

次回第38話もお楽しみに!ブックマーク・評価いただけると励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ