表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/63

第1話 追放された日

読んでくださりありがとうございます!

主人公が理不尽に追放されるところから始まります。

スカッと系・チート系が好きな方に楽しんでいただける作品を目指しています。

よろしければ感想・評価をいただけると励みになります!

「アキト、お前はクビだ」


 勇者・レイド(れいど)の言葉は、夕暮れの野営地に静かに落ちた。


 霧島(きりしま)アキトは焚き火の傍で夕食の準備をしていた手を止め、ゆっくりと顔を上げた。


「……え?」


「聞こえなかったか? パーティーを出ていけと言っている」


 レイドは腕を組み、アキトを見下ろしていた。その両脇には、魔法使いのエリナ、斥候のカイ、治癒師のミア――共に旅をしてきた仲間たちが並んでいる。


 誰一人、アキトの目を見ようとしなかった。


「どうして……俺、何かしたか?」


「何かした、じゃないだろ。何もしなかったんだよ、ずっと」


 エリナが鼻を鳴らした。


「スキルなしのくせに居座って、ご飯だけ食べてさ。荷物持ちなんて冒険者でも何でもない。お荷物って言うんだよ、それ」


「でも俺は……みんなのサポートを――」


「もういい」


 レイドが手を振った。


「明日、王都に戻る。お前は今夜ここを出ていけ。餞別はやらん。パーティーの金は俺たちで稼いだものだからな」


 アキトは荷物袋を投げつけられた。中身は自分の着替えと、銅貨が数枚。旅の間に受け取った報酬の、ほんの端切れだった。


 笑い声が聞こえた。カイだった。


「スキル鑑定で『無能』って出た時から分かってたよ。なんで勇者様が拾ってやったのか、俺には理解できなかったけどな」


 ミアは何も言わなかった。ただ、視線を地面に落としていた。


 アキトは立ち上がり、荷物袋を肩に掛けた。


 何かを言おうとして、やめた。


 言葉は何も変えない。そのことを、この一年の旅で十分に学んでいた。


「……分かった。世話になった」


 それだけ言って、アキトは闇の中へ歩き出した。


 ◇


 辺境の森の中で、アキトは丸太に腰を下ろしていた。


 月明かりだけが頼りの暗がりで、膝を抱えて空を見上げる。


――無能。


 その言葉は、十六歳のスキル鑑定の日から、ずっとアキトに貼りついていた。


 勇者レイドに拾われた時は、これで変われると思った。一年間、誰よりも早く起きて食事を作り、荷物を運び、野営地を整えた。戦闘には出られなくても、後方で役に立てると信じていた。


 だが結果は、これだ。


「……ははっ」


 乾いた笑いが漏れた。


 アキトは懐から古びた魔道具を取り出した。簡易ステータスプレートと呼ばれる、自分のステータスを確認できる安物だ。旅の間、ずっと持ち歩いていたが、ろくに見ることもなかった。


――どうせ何も変わらない。そう思っていたから。


「でも、もう関係ないか」


 ぽつりと呟いて、アキトはプレートに魔力を流した。


 淡い光が浮かび上がり、文字が並んでいく。


【名前】霧島(きりしま)アキト

【年齢】十七歳

【職業】無職

【レベル】1

【スキル】――


「やっぱり何もない、か……」


 視線を落とそうとして――アキトは止まった。


 スキルの欄。そこに刻まれているのは、鑑定士が「読めない」と言った、あの記号。


[#大きな文字]∞[#大きな文字終わり]


「……なんで今まで気にしなかったんだ、俺」


 アキトは目を細めた。


 あの日、王都の鑑定士はこう言った。


『エラーですね。魔道具の不具合でしょう。スキルはゼロ、つまり《《無能》》です』


 それを疑わなかった。周りも疑わなかった。だからアキトも、そういうものだと思い込んでいた。


 だが今、こうして一人でプレートを見つめると、その記号は確かに存在している。


[#大きな文字]∞[#大きな文字終わり]


 無限大を意味する、その記号が。


「これって……もしかして」


 アキトは試しに念じてみた。何かスキルを使おうと、意識を内側に向けた。


 その瞬間。


 頭の中に、濁流のような情報が流れ込んできた。


 膨大な、膨大な――スキルの一覧が。


 剣術・魔法・治癒・錬金術・鑑定・隠密・言語理解・空間把握・炎魔法・氷魔法・雷魔法・風魔法・土魔法・光魔法・闇魔法・召喚・結界・時間操作――


「なに、これ……」


 リストは止まらなかった。百を超え、千を超え、それでも続いていた。


 アキトはプレートを握りしめたまま、暗い森の中で呆然と座っていた。


 やがて、ゆっくりと立ち上がる。


「追放されて、正解だったかもな」


 誰もいない夜に、アキトは静かに笑った。


 これが始まりだった。


 世界最強の冒険者が、辺境の森から歩き出す瞬間が。

第1話、読んでいただきありがとうございました!


追放シーンはなるべくスッキリ描きたかったので、

あえてアキトには多くを語らせないようにしました。


次話からは彼の「無限スキル」が本格的に動き始めます。

かつての仲間たちがどんな顔をするか……お楽しみに!


感想・評価・ブックマークいただけると

執筆の大きな励みになります。よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ