4話 超能力の威力テスト(前編)
前回のあらすじ:英理さんと話し合い(脅された)
俺は今、寮に向かっている。英理さんとの話し合い?も終わったことだし、ようやくゆっくりできそうだ。とはいっても、仕事があるけどね。
寮は外からみるに、3階建ての建物の様だ。
そして、憧れのカードキー。だが、出番はもう少し後のようだ。最初のドアには特に鍵が無い様で、ボタンを押したら、普通に開いた。そしたら、もう1つのドアがあってこっちにはカードキーが必要な様だ。カードのマークがあるところにあてると、ピーという電子音が聞こえ、ドアが開く。やっぱりカッコイイな。
中は、寮というよりも普通の一軒家の様だった。親しみやすいように作ったのだろうか?
そして、まだゆっくりすることは出来ないようだ。なぜなら、先程の「超能力者」たちがリビングにいるからだ。そして、俺を待っていたらしい。
すると、その中の白髪に黄色の目というとても印象的な女性が俺に話しかけてきた。
「えーっと、宇崎慎也?だよね?」
「そうだ。俺は宇崎慎也だ。よろしくな。」
「私は風谷桜良。風谷でも、桜良でも、どちらで呼んでもいいよ。よろしくね、慎也クン。あ。はい、どうぞ。」
そういって、風谷が渡してきたのは分厚い茶封筒だった。何が入っているのかわからないが、普通に書類だろう。中を覗くと、なぜかクリップボードが入っていた。重いのはクリップボードのせいもありそうだな。取り出すと、紙がクリップボードに挟まれていることに気付いた。
ーーーーーーーーーーーー
宇崎君へ
初めての仕事になるわね。このクリップボードに挟まれているもう1つの紙のチェックリストをやってね。これは超能力のテストみたいなものかしら。政府で一度実験済みだけどやっておいてね。※注 外に用意してあるから、外でやってね。
それが終わったら、諸々の分担を決めてね。(料理とか掃除担当とか)それはチェックリストの下にあるわ。
で、2つともあとで黒田に渡しておいてね♡
英理
ーーーーーーーーーーーー
これが初仕事というわけか。最初から結構ハードな気がするんだが……
仕事だしな。ちょうど全員集まってくれてるし、始めるか。
「えっと、これから超能力の威力テストみたいなのをやります。外に行くので付いてきて下さい。」
そういうと、みんなは立ち上がってドアとは反対方向に歩き出した。俺が戸惑っていると、風谷が
「あっちの裏口がグラウンド直行なのよ。」
と、教えてくれた。
用意、というのはこういうことか。グラウンドを見て俺は納得した。グラウンドには8個の的が立ててあった。これを使うのだろう。
紙に書いてある通りに説明をする。
「これから、あの的を一人ずつ超能力だけを使って破壊してもらう。ルールとしては、超能力だけを使うこと、この白いラインを超えずにやること。それだけだ。」
説明したので、一人ずつ始めることにした。少し見たところ的は鉄製で、白いラインから的まで15メートルほどありそうだ。これをどうやって、破壊するのだろう。俺なら弓矢でも使えばできるか?
まあ、始めよう。
最初は一条光という奴からみたいだな。あそこの金髪、青っぽい緑色の目を持った男のようだ。資料によると、光を操ることが出来るようだ。
「3、2、1、0!」
数えている間に光は白いラインから2歩ほど下がっていた。開始の合図と共に光は右足を踏み出し、左手も前に出した。次の瞬間、的の中心は破壊されていた。どうやら、能力を利用し、ビームを出して破壊したようだ。
鉄製の的はこんなにあっさり破壊されていいものなのか。でも、超能力だし。いつの間にか俺は超能力だから何が起こってもありえることなんだ。と思うようになってしまった。
「お疲れ様。」
とりあえず、そう言ったら、
「苦労すると思うけど、ガンバってね。」
と言われた。
今までの常識はもう通じないな。
次の奴は犬飼翼というらしい。結構小柄で、茶髪に坊ちゃん刈りだ。目は普通に俺と同じだな。だいぶ年下に見えるが、何歳なんだろう。能力は動物系らしい。
「3、2、1、0!」
開始の合図をしてもしばらくはなんの動きもなかった。そのあと、突然、地面が揺れた。だが、地震というよりも後ろに何かある気がする。振り返ると、なぜか象の群れがいて、的を踏み潰していった。そのあと、消えた。
「これはお前の能力か?」
と、翼に聞くと
「多分そうだと思います。」
と、返されたので次の人のをやることにした。一体どこから象が来たのだろう……
次は海原清代という女だな。髪は黒かと思ったら紺だった。そして目も深い青色だった。そして、揺れる胸。だが、長めの前髪がその表情を隠しているのが少し残念だ。彼女の能力は水らしい。一体どうやってやるのだろう。
「3、2、1、0!」
開始の合図をすると、彼女の前に大量の水が現れた。最初は浴槽一杯ほどだったが、どんどん増えていく。最終的にはプールぐらいの量になった。彼女が広げていた両手を閉じると水は的の方に流れていく、そして、的が流されていった。だが、水は止まらない。塀の方へと流れていってしまう。まずい、このままでは……
「水、止められるか?」
と訊くと、
「が、頑張ってみます。」
と彼女は可愛らしい声で返事をした。
海原は左右に両手を広げると、だんだん近づけていく。すると、水が上空に集まっていった。そして、大きな水の球体ができた。
「すごいな。」
思わず呟くと、海原の顔は真っ赤になり、先ほどの水の球体が破裂した。そして、雨のように降り注いだ。
的の様子を見に行くと根本からポッキリ折れていた。まあ、これも破壊したうちにいるかな?
堅苦しい挨拶をしていないのは、英理さんがそういうの嫌うからです。あの敷地内で英理さんに逆らえる人はいません。
後編も楽しみにしていてください。




