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魔石使いのS.Q.L.~Javaで学ぶ魔法入門外伝~  作者: つむらてんほ
開幕の章
5/37

第五話

前回の話

森の中に住むポートとマール老人。

だが、マールには寿命が残されていなかった。

マールはポートに手紙を託し、その生涯を閉じた。

 ポートの黒い左目は充血していた。

 あれから一晩泣き続けたのだ。

 ポートにとって、マールは自分の世界の全てだった。

 あらゆることはマールから習い、マールから得た。

 マールの死はポートにとっては世界の死だった。


「あ、猪…………」


 どれだけ悲しくても、どれだけ辛くても、腹は減る。

 食わなければ死んでしまう。

 ポートはそのまま死んでしまっても良かったのだが、それはマールの望むところではないだろう。

 目の前には昨日仕留めた猪があった。

 ポートが奪ったその命に対する淑罪は果たさなければならない。

 だから、猪を食らう。

 それを解体し、調理し、ひたすら食らう。

 もはや物言わぬマールを見ては嘔吐し、そして猪を食らう。


 今のポートの中にあるのは使命感。

 だから、マールの最後の願いを叶えるため、ポートは家の片付けを始めた。

 といっても、しょせんは二人暮らし、他に人と遭うこともない森の生活だ、それほど物があったわけではない。

 特にポートの持ち物は極僅かだった。


 それでも片付けに時間がかかったのは、たとえば下着一枚、本一冊にしても、そこに込められたマールとの思い出があったからだ。

 片付けをして、猪を食らい、また片付けをし、寝る、それだけを繰り返していくうちに、ポートの心はマールの死を受け入れた。


 数日後、ポートは旅支度を整えると左手を家の前にかざした。

 家の中には彼の育ての親、マールの亡骸がベッドの上に置かれたままであったが、既に別れは済ませてあった。

 今から行う術式は対象が大きすぎてポートにはまだ無詠唱どころか、触媒なしでは詠唱もできない。

 だから、ポートはばっさりと切り落とした自らの髪を触媒にして唱えた。


接続(CONNECT)


 その一言を唱えたことで、ポートの頭の中に流れ込む、大量の情報。

 ポートの魔眼はその全ての構成(メタデータ)を見通していた。


 マールとポートが住んでいた家は、家のようで家ではなかった。

 それは根本(シェーム)

 それは多数の(タブル)――――魔石の集合体。

 すなわち、魔導具(アーティファクト)


 そして。


(DROP)全て(SCHEMA)破棄(HOUSE)給え(CASCADE)


 ポートが唱えると、家は一瞬にして崩れ、そこには瓦礫の山が、墓標のように残るのであった。


この物語は構造修飾言語、Structure() Qualified() Language()を駆使する魔石使いポートの物語である。


構造修飾言語とは何なのか、やっと出てきました。

これでプロローグは終わり。

なお、今回の小説は呪文がSQLになっているだけなので、SQLがまったくわからなくても問題ありません。


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