第二十二話
本来、ギルドマスター宛の手紙――――しかも魔封付き――――など、数か月に一通あるかというレアな事態であり、大騒ぎになってもおかしくない。
現にハンナから手紙を見せられた受付リーダーは驚愕の表情を浮かべていた。
ただ、ハンナは新人であり、研修で優先度高の事項として習ったものの、どれだけ珍しいことなのか知らなかったため、むしろ周りの過剰な反応に逆に驚いたのだが、幸いなことにポートを「当たり」と思うほどに擦れてはいなかったため、そのままギルド業務へと入り、ポートを呼び戻すような真似はしなかった。
若葉亭は百人以上を接客できる巨大な酒場だが、ドルスの巨体はその中でも目立つため、ポートはすぐに見つけることができた。
喧騒の中を縫うようにして近づいたポートはドルスに促されてテーブルへ席をついた。
「お疲れー」
三人はまずエールで乾杯するとそれを飲む。
ドルスはごくごく、ミーシャは一口だけ、ポートはちびちびと、飲み方は三種三様である。
若葉亭は特に何も言わない限り、席に着いた途端に最初の一杯目のエールが置かれる。
太っ腹なことに、この一杯目のエールは無料である。
二杯目からはテーブルの上にエールの代金、小金貨を一枚置けば、それと交換でエールが運ばれる。
では何度も酒場に入り直せば無料で幾らでも飲めるのかというと、そこはよくしたもので、最初の一杯は身に着けたギルドカードに記録されるため、不正はできないし、ギルドカードを持たない者は入り口で摘み出される。
ギルドカードを作ってから待ち合わせたのはそういう理由もあった。
「さて、これからの予定だが、まずは宿を取らないといかんな」
「うちらが普段使ってる宿屋と同じでよければ紹介するけど」
「ドルスさんとミーシャさんは一緒に泊まっているんですか」
「まさか、そんな恐ろしいことできるかっ」
「どういう意味よ!」
「そのまんまの意味だ!」
二人が言い争うのをおろおろと見ているポート。
と、通りがかった冒険者が二人に声をかけた。
「また夫婦漫才やってんのか」
「誰が夫婦」「だ!「よ!」」
見事にハモる二人であった。
「とにかく、狭いけど一人部屋で安心できる宿屋の中では最安値なのよ、三日月亭は」
「メシマズだから外で飯食ったほうがいいが」
「そうなのよね、あそこ、メシマズじゃなければ最高なのに」
「じゃあ、そこに泊まることにします」
「部屋は空いてると思うけど、空いてなかったらお姉さんと一緒に寝る?」
ミーシャはそういうとわざと胸元をポートに見せてからかったのだが
「あ、そうさせてもらえるなら、宿代は半分出します」
と、頭を下げられてしまい、あーこの子には常識通用しないんだったと激しく後悔するのだった。
幸いなことに三日月亭に空き部屋はあった。
しかも、ミーシャの隣である。
ポートは一週間分の宿賃を前払いし、そこに居を構えることとなった。




