第十三話
”ビュー”と”タブル”の違いは、それが表示だけなのか、書き換え可能なのか、という違いである。
たとえばステータスの魔法。
これは個人の保有する”ビュー”内の情報を表示する魔法なのだが、”ビュー”である以上、その内容を書き換えることはできない、ことになっている。
できるにはせいぜい”ビュー”を一時的に置き換える――――ステータス強化/弱体の魔法やステータス偽装の魔道具効果がそれにあたる――――程度である。
ところが、これは知っているものがどれほど少ないかすらわからないような秘中の秘なのだが、実際には”ビュー”にはその元となる”タブル”が存在する。
多大な魔力と緻密な接続、そして触媒となる魔石が要求されるとはいえ、魔石そのものでないものも、直接”タブル”を書き換えることは不可能ではないのだ。
ポートの師であるマールにはそれができた。
バグベアーが爆散したのは無詠唱で魔物の”タブル”を書き換えたためだ。
ポートはそこまで緻密な接続や魔力は持っていないため、ゴブリン程度の低俗な魔物でない限りはこのようなことはできないが、剣の”タブル”を書き換えて名前を付ける程度のことはできるのだった。
「それじゃまとめるね。魔石は第三級、使うのは魔石を破裂させる呪文だけ。亜空間庫は見せない。とりあえず、今のところ注意するのはこの二つね。あとはあたしたちもイスカ―に居るので、困ったら必ず相談してね。悪いようにはしないから」
「いろいろ、ありがとうございます」
「ところでイスカ―には頼れるところがあるのか」
「ええ、じっちゃんから手紙を預かっていて」
「ふーん、誰に渡すの?」
「セフィリアさんという人に渡すようにと」
「「セフィリア!?」」
二人の声がハモった。
「セフィリアさんをご存じなのですか」
「一応、下の名前も聞いておくが、まさかセフィリア・カーマインじゃないだろうな」
「ちょっと待ってください」
ポートはタブルから直接手紙を出そうとするが、言われたことを思い出したのか、バッグの中に手を突っ込み、無詠唱でシェームから手紙を取り出した。
「えーと、セフィリア・カーマインさんですね」
「なんてこと」「だ「なの」」
「――――あの、かなりまずい人なんでしょうか。たとえば口に憚れるような大悪人とか」
二人から憐れむような目で見られたポートが恐る恐る尋ねる。
「いや、まずい人だけど大悪人ではない」
「いい人じゃないけど、大悪人じゃないわ」
「口に憚れるのは確か」「だ「ね」」
「どういうことですか!」
困惑するポートに二人は一拍置くと言った。
「そいつはイスカ―の冒険者ギルドマスター」「だ「よ」」
「なんでギルドマスターが憚れるんですか!」
「だってなぁ」
「だってねぇ」
「先入観を与えないように敢えて言わないけど会ってみればわかるって」
知らず知らず額から汗が垂れるポートであった。




