第十話
「あのな、約束通りイスカ―への道は教える。俺もイスカ―に戻るところだしな」
「ありがとうございます」
「だがその前に」
ドルスがポートの頭をわしゃわしゃと撫でながら言った。
「常識を学ぼうな?」
いきなり抱き着いて窒息させるのは常識なのだろうか、と思いつつもポートは頷いた。
「さて、どこから教えるべきか」
ドルスはゴブリンキングやゴブリンの解体が終わった後、ドルスは森と街道の境にある平原でたき火を起こすとポートと向き合った。
ミーシャはたき火の上に置かれた水を入れた鍋を見張っていた。
「まず、使用する魔石は第三級までにしとけ」
「第三級じゃできることが少なすぎます」
「だからだ。第四級魔石使う魔石使いなんか、俺も長い間冒険者やってるが見たことない。悪目立ちしすぎる」
「目立つのは悪いことなのですか」
「そこから説明しなきゃいけないのかー!」
ドルスは頭を抱えて、ミーシャを見る。
助けを求められたミーシャは、軽くため息をつき、バッグから皮袋を三つ取り出してドルスに投げ渡すと、ポートに言った。
「ポートちゃんは自分に常識がないことは理解してるよね?」
「ええ、不本意ですが、ずっとじっちゃんと二人暮らしでしたから、世の中のことはよくわかりません」
「そんな世間知らずのポートちゃんが、普通は使えないような力をばんばん使ったら、どうなると思う?」
「どうって、どうなるんでしょう」
「――――恐らく反応は二つ。一つは畏怖して遠ざける。もう一つは上手く利用しようとするの。腫物を触るかのように誰も近づかないのと、騙されてこき使われるのと、どっちを選ぶ?」
「えーと、ミーシャさんはどちらですか」
「痛いとこ突かれた!」
自分で自分のおでこをペシッと叩きながら舌を出すミーシャ。
「ぶっちゃけちゃうと、畏怖しつつ利用する、かな。利用するって言っても、いいように利用するってつもりじゃないよ。そのつもりならこんなことしないから」
「命の恩人に恩返しの意味もあるな」
ドルスが助け舟を出した。
「もちろん打算が無いってことじゃないの。ポートちゃんは強い。とんでもなく強いのよ。だからポートちゃんに親切にしておけば、巡り巡って返ってくるかも知れないって気持ちはゼロじゃないの。でもそれよりも、こんなかわいい生き物を酷い目に遭わせるわけにはいかないのよ!」
そう力強くいうと、ミーシャはポートを抱き締めようとしたが、先ほどで懲りたのかポートは慌ててそれを避ける。
「ちっ――――とにかくポートちゃんはしばらくはその力を見せない方がいいわ。下手に力を持つと、その力を求めて魑魅魍魎が集まってくる、それがポートちゃんがこれから行く町なの。だから、ある程度慣れるまでは力は隠しておいたほうがいいわ」
「なるほど、わかりました」




