6. 宙吊りの檻
あの廊下の静寂の中で、壁の松明が爆ぜる音の中で、そして自らの暗鬱な思考の中で、私は震える汚れた両手を見つめていた。自分が何をしてしまったのか、はっきりと分かっていた。
それまで、想像すらできなかった何かを。
私の視線は、あの息絶えた体へと移る。その瞳の光は、かつて経験したことも、遠く想像することすらなかった殺意の狂乱によって、消えてしまっていた。
私に、何が起きたのだ?
こんなつもりは、断じてなかった。
あの笑み、あの狂乱、あの乖離した感覚。
私は、自分よりも大きな何かの餌食となっていた。
分から……ない……
突然、意識を取り戻し、私は勢いよく振り返る。だが、そこには誰もいない。
目を細め、たった今起きたことについて、さらに思いを巡らせる。
混乱した出来事の連なりを、整理してみる。
誰かが私を知っていて、私の死を望み、姿を見せぬままそれを成し遂げようと、あらゆる手を尽くした。
「それに……」両手を見つめながら、私は言った。「この殺意……この、完全に正気を失った男……おかしい。」
彼もまた、自分を見失っているように見えた。私たちは、同じ出来事の犠牲者だったのだろうか? 私は彼の中に、とりわけあの決定的な瞬間に、逃れようとする試みを垣間見た。
それは、私には聞こえぬ助けの求めだった。引き裂かれるような叫びであったにもかかわらず。
「そして最後に……お前。」
私は、左側で揺らめくろうそくの方を向いた。
「お前は何だ? 何のためにある? なぜ私を救った?」
私は本当に、ろうそくにこんなことを問うているのか?
答えられるはずもないのに。
だが、私の内側で、何かがすでに崩れ始めている。
これ以上、時間を無駄にはしない。ここに長く留まりすぎれば、注目を集める危険がある。私はもう、十分すぎるほど危険を冒した。
私は再び「B」の階段へと歩き出す。
私の心は、理解できなさと恐怖の間で揺れ動く。廊下は果てしなく伸び、壁は次第に滲み始める。
平凡な少年。いつも身ぎれいで、こざっぱりとしていた。注目を集めぬためなら、あらゆる面において非の打ちどころがなかった。私は、それを引き起こしかねないものすべてを、常に忌み嫌ってきた。誕生日、口頭試問、学芸会。
さらけ出したくはなかった。みなと同じように、海の中へ沈みたかった。
それに……あのすべての視線は、お前を裁きの目にさらし、巧妙に作り上げた仮面の裏に、あれほど苦心して入念に隠そうとした欠点を、あらわにしてしまう。
注目とは、この世に己の痕跡を残さず生きようとする者すべての、アキレス腱なのだ。
それゆえに、暴力といった概念は、私にとって常に無縁のものだった。それは往々にして、私とは異なる生の目的を持つ者たちの、礎となるものだ。
右手に、突然の鋭い痛み。
拳を握りしめる。
痛みは、引く。
私のように、形なき群衆の中に身を落ち着けたい者は、他人を踏みにじることになど関心がない……
野心……なんと忌まわしい言葉だろう。野心家とは、その定義からして、競い合い、ひしめき合い、己の目的を遂げるためなら他人を踏みにじることを愛する者たちだ。私とは正反対の。
もしすべての者が凡庸さの掟に従って生きるなら、戦争も争いも生じる余地はなく、世界は至高の幸福へと達するだろう。
だが、ここで私は決まって揺らぐ。
私の愚かな理想主義は、現実において何ら裏付けを見いだせない。
競争は、我々の社会の、そしてより広くは我々の生物としての、支柱のひとつなのだ。
では、競うことを望まぬ者たちを、世界はどうするというのか? 競うことのできぬ者たちを?
何かに足をぶつけ、前のめりに倒れる。
顔が、石の角に打ちつけられる。
苦痛のうめきが、私を現実へと引き戻す。「A」の階段に、たどり着いていたのだ。
なんという愚か者だ、見えてすらいなかった。二度とこのような不注意に陥らぬよう、努めねばならない。
先ほど起きたことのあとでは、警戒を緩めてはならない。
私は再びナイフの柄を強く握りしめ、視線を上げる。
それは堂々として、あまりに長く、終わりが見えない。引っかき傷、血の染み、剝がれ落ちた煉瓦に覆われている。幾多の戦いと、私の知らぬ物語の舞台。
私は神経質に、警戒しながら、あちこちへ目をやる。
昇り始めるが、筋肉がこわばるのを感じる。
ただ、自分の足音だけ。
私は、疑心暗鬼に陥っている。
病的な憶測が、私に何度も振り返ることを強いる。
時は流れるが、それを感じ取ることができない。
ようやく、たどり着いた。
目の前を見ることすらせず、私は再び地図を開く。
呆然と、それを見つめる。自分の目が信じられない。
先ほどまで一階が描かれていた場所に、今は二階がある。図が、すっかり変わってしまっていた。
唾を飲み込む。初めのうち、唾はなかなか喉を通らない。
だがその後、私は天啓を得て、驚嘆のため息をつく。
私は手の中に、実に唯一無二のものを持っている。
よほど強大な誰かが、このような仕掛けを考案したに違いない……
いや……仕掛けだと? これは魔法だ。
私は本当に、そう言ったのか?
魔法使いなど存在しないし、ましてや魔法など存在しない。
だが、傍らで揺らめきながら私の歩む道をほのかに照らすそれを見つめるうち、私は徐々に理解する——現実と想像の境界が、危ういほどに薄れてしまったことを。
この場所に来て、まだほんの僅かな時しか経っていないというのに、私はまるでお前のように揺らいでいるのを感じる。
だがお前とは違い、私のそれは渦巻くような、まるで調和を欠いた揺れなのだ。
* * *
この二階は、かなり入り組んだ造りをしている。あちこちに散らばった、私には気の利いた呼び名を与えられなかった数々の興味深い場所に加えて、興味深いことに、この階の大部分が暗く塗りつぶされていた。地図は、どういうわけか、「勝利の泉」の下に何が隠れているのかを、私に見せようとしなかった。
どうやら、この階はある方向へと続いているようだ。だから、どこへ向かえばいいかは分かる。
それだけではない……
黎明の砦……あのメッセージが、向かうようにと告げていた場所とは、きっとそこに違いない。
何なのか、確かめてみよう。
だが私は……本当に、それを見たいのだろうか?
彼の言葉は、明確な警告だった。
ここの者たちは狂っている、救いようがないほどに。
道理を説くつもりなど彼らにはなく、ただお前を欺こうとするだけだ。
そして、もし誰かがお前に同盟を持ちかけてきたなら、それを拒め、そして後悔するな。そやつはただ、お前の信頼につけ込み、最も都合のよい瞬間にお前を裏切ろうとしているだけなのだから。
それでも、私には情報が必要だ。それを与えてくれるのは、他者をおいて他にない。
これまで運には恵まれなかったが、諦めるわけにはいかない。
ティム、あなたの忠告を、私はしかと胸に刻もう。
だが、危険を冒してこそ……私はこの場所について、より深く知ることができるのだ。
私は「A」と「B」の階段の合流地点にいる。だから、長い道のりになりそうだ。
だが、私の天才的な計画は、私と私の望みとの間に立ちはだかる奇妙な記号によって、否応なく曇らされる。
眉をひそめ、ようやく私は目の前を見据える。
「ぐっ……!」
驚愕のあまり、私は激しく息を吐いた。
巨大で、果てしのない、深い谷。
漆黒の闇。底も、果ても見えない。
だが、この地図が私を欺くはずはない。あの暗闇の向こうに、廊下の反対側が隠れているのだと、私は確信している。
だが、どうやってそこへ至ればいい?
飛び越えることは、できない……
それから、私は傍らで宙に浮かぶろうそくを見た。侵入してくるような考えが、ひとつ素早く頭の中に閃き、同じほどの速さで、口をついて出た。
「飛ぶことすら、できはしないのだ……」と、私は彼女に向かって言った。
引き返すつもりは、断じてない。そもそもそこは行き止まりなのだ。何があろうと、私は前へ進まねばならない。
私は廊下を進む。
身を乗り出してみたい……周囲がもっとよく見えないか確かめたい……底か……何でもいい。
数歩で、私は谷の縁にたどり着く。
だが、突き出た縁まであと一歩というところで……
「ゴゴゴ……」
「ガコンッ」
私の足が、通路の敷石のひとつに沈み込む。
たった今起きたことが、偶然の産物なのか、それともこの場所を統べる何か——あるいは誰か——によって入念に仕組まれたものなのか、私には言い表すことができない。
敷石は数十センチほど沈み込み、他の石とこすれ合い、埃を立てる。
敷石がその行程の果てに達したとき、私は鈍い金属音を耳にする。だが、あの谷の広大な闇の中に広がるこだまのせいで、その出どころは判じがたい。
私はただ、身動きひとつできずにいる。
私は何かを起動させてしまった。それが何であるにせよ。
私は沈黙のうちに待つ。たとえば、私の苦しみに終止符を打つ矢か、私を埋める崩落か、あるいは足元で崩れ落ちる床か——何が来るのかは、分からぬまま。
あの不穏な沈黙の中で、幾秒もが過ぎていったが、何も起こらない。
この仕掛けによって私が起動させたものが何であれ、きっと、引っかかって動かなくなったのだろう。
私は助かった。たった今、何から助かったにせよ。
緊張で湿った額を、腕で拭う。
私は沈み込んだ敷石から右足を上げ、縁へと最後の一歩を踏み出そうとする。
敷石が再びせり上がり、元の位置へと戻る。
そして、再び。
「ガコン……ガキン……ガコン……」
頭上から、凄まじい気流が吹きつけてくるのを感じる。
何かが、私の上に落ちてこようとしていた。
何も、見えなかった。
私はとっさに、両手で顔をかばう。
「ヴォン……ヒュウウウ……」
「ガシャアン」
風が消える。
顔から手を離す。
私は、目を見開く。
手から、ナイフが滑り落ちる。
私は、完全に硬直する。
ふたつの檻——その中にはふたりの人間——が、虚空へと落下し、ちょうど私の目の前に位置を定めていた。
それらは虚空に浮かび、金属のきしみと軋みを発していた。
* * *
一瞬。
たった一度の、ちっぽけな一瞬が、幾世紀にも及ぶかのように感じられた。
今起きていることを呑み込むのは、私には本当に困難だった。
先ほど下の階で受けた衝撃を、受け止める間すらなかったというのに、すでに、さらにひどい何かが起ころうとしていた。
その予感は、狂ったように叫び始めた、あのふたりの哀れな者たちの言葉によって、現実のものとなった。
「助けてくれ!」
「頼む、助けてくれ!」
「そこに突っ立っていないで!」
何を……私に求めるのだ?
この場所は、私に何を求めているのだ?
何が、起きている?
これではだめだ……これではだめだ……
このふたりを、どうやって救えばいい?
いやだ……いやだ……いやだ……
逃げ出したい。
もう、たくさんだ。これは、度を越している。
その瞬間、私の中で、何かが崩れ落ちた。
ほんの少し前に起きたのと、まさに同じように。
だしぬけに身を翻し、私は一階へと駆け出す。
出発点へ戻ることになろうとも、何が起きているのかを理解する気など、私には毛頭なかった。
したくなかった。
ただ、逃げ出したかった。
だが、走り出す間もなく、私は同じほどの速さで、その逃走を止めなければならなかった。
「待て……これは一体、どういうクソみたいな冗談だ?!」目の前の壁を見つめながら、私は狼狽して叫んだ。
私は猛然と地図を開く。あまりの焦りに、それを粉々に引き裂いてしまいそうなほどだった。
震える両手に支えられた地図の上に、汗の粒が幾つか滴り落ちる。それらはジグザグに滑り、私の焦りなど物ともせぬあの上質なビロードに、吸い込まれることもない。
私は、自分が狂っているのだと思っていた。
だが、そうではなかった。
すべてが、変わってしまった。
もはや、何ひとつ以前のままではない。
* * *
たった今昇りきったばかりの階段があった場所に、せり上がっていた……あるいは、出現していた……いや、私自身にも何と言えばいいのか分からぬが……一枚の壁が。
そして、何が起きているのかに思い悩んでいる時間はない。
私は……
私は、完全に罠にかかっている。
そして、あの叫び声が……私を、苛み続ける。
選択の余地は、ない。
私はゆっくりと、向き直る。
彼らは、まだそこにいる。
叫んでいる。
私を、呼んでいる。
耳鳴りを覚えながら、私はゆっくりと谷の縁に近づいていく。
視線を、前方に据える。
「教えてくれ……何が、起きているのか……」
彼らは、たちまち黙り込んだ。
あれほどの騒ぎが……あの混乱が……あのふたつの鉄の塊を吊り下げる鎖の、きしむ音へと、その場を譲った。
「頼む……どうすればお前たちを……救えるのか、教えてくれ……」私は震える、覚束ない、そして諦めの滲んだ声で言った。
彼らは、戸惑ったように顔を見合わせた。おそらく、私の状態にうっすらと気づいたのだろう。
そのとき、彼らのうちのひとりが、口を開いた。
「よそ者よ。お前のせいで、俺たちふたりのうち、どちらかが死ぬことになる。」




