【第2.2章:見えない敵と、分かち合う祈り】
国境が封鎖され、重苦しい静寂に包まれたある都市。巷では、致死率40%という新型ウイルスの噂が駆け巡り、人々は互いに疑心暗鬼に陥っていた。美憂は、防護服を纏う人々が行き交う隔離地域の入り口に、凛とした姿で立っていた。
「目に見えない恐怖が、人々の心から『助け合い』の精神を奪おうとしている……」
彼女が目にしたのは、病の苦しみだけではなかった。感染した者を拒絶し、自分だけが助かろうと食料を奪い合う、恐怖に支配された人間の姿だった。美憂は顎に手を当て、深く目を閉じた。かつて銀河を襲った疫病の際も、最も恐ろしいのはウイルスそのものではなく、心に広がる「絶望」だった。
美憂は、震える人々を前にして、静かに、しかし力強く語りかけ始めた。
「皆さん、聞いてください。今、私たちの敵は隣人ではありません。私たちの内にある『恐怖』です」
彼女の声は、不思議な慈愛を持って街の隅々にまで響き渡った。
「人は1とりではいきられない。たしけられたら助け返そう。この言葉を思い出してください。一人が倒れた時、それを責めるのではなく、どう支えるかを考える。その心こそが、ウイルスの免疫力よりも強く、私たちを守る盾になるのです」
美憂は、誰にも知られぬよう微かな神の力を使い、空気中の邪気を浄化しながら、病床を回った。苦しむ人の手を握り、その温もりを伝える。致死率という数字に怯えるのではなく、目の前の命を愛し抜くこと。
「私たちが太陽から光をもらい、地球から重力を与えられているように、私たちもまた、誰かに『安心』という光を与えることができます。恐怖を分かち合うのではなく、勇気を分かち合いましょう」
美憂の訴えは、冷え切った人々の心に、小さな、しかし消えることのない希望の火を灯していった。成美菩薩様が願う「誰も見捨てない世界」の実現に向けて、美憂は命を懸けた説得を続ける。




