【第1.1章:早春の風、小さな天使たちとの邂逅】
一月の澄み切った空気の中、幼稚園の正門には「入園式」と書かれた看板が誇らしげに立っていた。寒さを押し返すような陽光が降り注ぐ中、みゆは姉の子供の晴れ舞台を見守るため、その場所に立っていた。上級大将としての重厚な軍服も、帝釈天のリーダーとしての峻烈な威圧感も今は完全に封印している。今の彼女は、少しだけ大人びた、けれど柔らかな空気を纏った一人の女子学生としてそこにいた。
「わあ、お姉ちゃん、誰? 魔法使いさん?」
一人の子供が、みゆの不思議な存在感に気づいて駆け寄ってきた。彼女が優しく微笑むと、その瞳の奥にある無限の慈愛が、無垢な子供たちの本能に直接語りかけた。気づけば、真新しい制服に身を包んだ子供たちが、次から次へと彼女の周りに集まってくる。
「お姉ちゃん、手が温かい!」「その眼鏡、かっこいい!」
子供たちは口々に叫び、みゆの服の裾を引っ張ったり、手を握ったりと、大はしゃぎだ。銀河の命運を左右する上級大将が、小さな子供たちの勢いに少しだけ目を丸くし、たじろいでいる。しかし、その表情はどこまでも穏やかだった。彼女は屈み込み、子供たちの目線に合わせて一人ひとりの頭を優しく撫でていった。
「みんな、今日から新しい冒険が始まるのね。おめでとう」
その声は、春の訪れを告げる風のように心地よく響いた。姉の子供も、誇らしげにみゆに抱きつき、周囲の友達に「私のお姉ちゃんなんだよ!」と自慢げに話している。みゆは、この純粋な生命の輝きこそが、自分が守るべき宇宙の宝物なのだと改めて実感していた。
かつて、高次元の玉座で数兆の民を導いた彼女。しかし、今こうして小さな手に包まれ、子供たちの無邪気な笑い声に包まれる時間は、それ以上の充足感を彼女に与えていた。
「人は1とりではいきられない。助けられたら助け返そう。」
誰かが転べば、誰かが手を差し出す。泣いている子が居れば、誰かが寄り添う。この小さな幼稚園という社会の中に、彼女が提唱する「助け合い」の原風景があった。成美菩薩様が見守る中、みゆは子供たちとの温かな交流を通じて、この星の未来を照らす光を、その心にしっかりと灯していたのである。




