第36話
「あと1、2日ほどはここで安静にしてくださいね」
看護婦が去った時、白く光る羽根が落ちていた。
×
看護婦が居なくなり、病室は1人部屋だったのでトイフェル1人だけになる。
「…………」
先程までの記憶を思い返し、
「……(いくら腹が立っていたからと言って、大量虐殺はやり過ぎだったな)」
トイフェルは1人で反省会を始めた。
「…(そもそも、楽しみを優先して余裕ぶって直ぐに殺さなかったのが悪い)」
「(或いは、感情に振り回されすぎた事だ)」
「(ジャック・スケアクロウを色々参考にしながら、なるべく楽に、尚且つ失敗しないようにしよう)」
「(他に、反省しないといけない点は……)」
トイフェルは、1人でいる事を良いことに、色々と考え始める。
×
「……(そういえば)」
クソッタレな神が『希望に沿った魔法をあげる』とか言っていたが、一体なんの話だったのだろうか。
「(『死ににくい、身体』)」
それは恐らく、この刃物が通り難い、硬い皮膚の身体の事だ。
「……」
尖った鱗塗れの身体のおかげで、まともに着られる服が減ってしまったのだが。服の生地が直ぐに傷む上に、上背があるせいでそもそも選べる服が少ないと言うのに。おまけに、背中の翼のお陰で更に中々に良い服が見当たらなくなってしまった。
「(……まあ、それは良いか)」
最悪、下さえきちんと着ていれば問題は無い。一応。
「…(魔法)」
そう考えて、ふと思い至る事があった。
『あなたの身体、魔法が効きにくくて物凄く大変だったんですからね?』
さっきの看護婦はそう言ってなかったか。
そういえば、昔から見た目の所為で色々と喧嘩を吹っ掛けられた際などに、気味悪がられて吹っ掛けた方に逃げられた事もあった。
「……(魔法が、効かな)」
『Herz abzulehnen』それが、トイフェル自身の魔法のようだった。
しかし、先程の看護婦の魔法は通ったではないか。そうでなければ、折れて取れかけた翼もこんな綺麗には戻っていない。
「(あの看護婦の魔法の効果が大きかっただけ、ということも、)」
幾つか条件や何かあるのかも知れない。退院したら試してみよう。
そして。
「……」
過去の事を思い出して
「(あの時の、)」
死ぬ少し前に感じた、違和感を同時に思い出した。
あの時、放って置いていってしまった感情の意味を
「……アンジェラ、」
その名前を呼び、今更思い知る。




