表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Vogelscheuche  作者: 月乃宮 夜見
祭りの余韻

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/39

第29話

「あら、これだったのね」


 塗りながら、アンジェラは呟く。


「何?」


 首が変にずれないように固定していたジャックは、その小さな呟きを拾った。周囲を警戒しつつ、薬品を塗るその姿を少し眺めていた。


「貴方からする匂いの正体よ。香水や薬じゃないから、一体何の匂いだったのかが気になってたの」


 こんな目にあったけれど思いがけない収穫があったものね、と、アンジェラは少し嬉しそうだった。


「そんなにする?……臭いは消してたつもりだったけど」


 困った風のジャックに、彼女はなんでもないように答える。


「こうも長く貴方と一緒にいれば、さすがに分かるわよ」



×



「そういえば、さっきは随分と派手にやってくれたじゃないの。マホドーラ史上()()の盛り上がりだったみたいよ」


 癒着剤がきちんと乾いたか触れて確認し、大丈夫そうだと判断したアンジェラは「今回の祭りの大賞は貴方ね」と、くすくす笑いながら立ち上がる。


「……凄く、虫の居所が悪かったんだよ」


気まずそうな様子で、ジャックも立ち上がった。


「おかげで物凄い視聴率を取れたわ。私の中で最高に限りなく近い注目度よ」


でも、もっと注目してほしいのよね、とアンジェラは思案する様に呟く。


「……送ろうか?」


少しふらつく様子を見て、そう訊く彼に


「悪いけど、私にはまだ仕事が残ってるの。急いで仕上げなきゃいけないんだから。……じゃあね、ジャック」


そう答え、アンジェラはジャックの元を去った。



×



「ふふ、最後に面白いものが見られたわね」


 アンジェラは速度を緩め、ゆっくり歩く。なんだか

 視界が霞んできた。体液が身体から流れ過ぎたのかもしれない。「珍しいもの」というものは彼の顔のことではあるが、


「……あんな顔するなんて、初めて見たもの」


 それは、心配している表情のことだった。


 確かに長い間共に居て、ジャックの素顔を見たのは初めてだった。初めて会った頃(皮を被る前)は、彼は正しく『案山子』のような様子で、深く被った大きな帽子と顔に巻かれた布で到底顔は見えそうにない状態だった。


 当時、顔が気になるから、と無理に見ようとした時は彼の仕込銃()で命を取られかけたし、次に会った時には既にあの(皮を被った)姿になっていた。それでも、素顔のことより、その表情の方が気になった。


「……最後、な訳無いでしょう?」


 もっと私に注目してもらいたいんだから、とアンジェラは闇に沈む街に向け歩き出す。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ